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用語解説#HILS#ハードウェアインザループシミュレーション#ECU試験

HILSとは?ハードウェアインザループシミュレーションの仕組みや種類、できること、選び方までをわかりやすく解説!

HILS(ハードウェアインザループシミュレーション)とは、制御装置の実物をシミュレーターにつないで動作を試験する仕組みです。仕組みと種類、メリット・デメリット、主な機能、活用場面、費用相場、SILS・MILSとの違いを整理しました。

製造業のシステム選定担当者ITトレンド編集部
HILSとは?ハードウェアインザループシミュレーションの仕組みや種類、できること、選び方までをわかりやすく解説!

HILS(ハードウェアインザループシミュレーション)とは、制御装置の実物を、制御対象を模擬したシミュレーターにつないで動作を試験する仕組みです。自動車のECUやモーター制御装置などで使われています。この記事では、仕組みと種類、メリット・デメリット、主な機能、活用場面、費用相場、SILS・MILSとの違い、向いている企業までを整理しました。

  • 役割:実機の代わりにリアルタイムのシミュレーターを接続し、制御装置の動作を試験する
  • 特徴:実機では危険な条件や、故障した状態も再現できる
  • 種類:信号レベルのECU向け、パワーエレクトロニクス・モーター向け、電力系統向けなどに分かれる
  • 費用の目安:2026年時点で、本記事で扱う20製品のうち、公式ページに金額が確認できた製品はなく、見積もりが前提

選定では、試験したい制御装置の種類と、必要な入出力・通信を先に整理します。そのうえで、使っているモデル開発ツールとの連携と、テスト自動化の範囲を確認しましょう。


この記事でわかること

01

HILSとは

HILSは、制御ソフトを載せた実機の制御装置を、仮想の制御対象と組み合わせて試す手法です。ここでは、定義と仕組み、システムの構成要素、製品の種類を順に押さえます。

HILSの定義と、実機の代わりに模擬する理由

HILS(HILとも呼ばれる)は、実機の制御装置を仮想環境につないで試験する手法です。MathWorksの公式ページは、実際の信号で制御装置を仮想環境につなぐ手法と説明しています。

エンジンやモーター、車両などの動きは、計算モデルで再現します。実機が完成する前でも試験でき、危険な条件や故障の状態も安全に作れる点が特徴です。

HILSを構成する要素

HILSの中心は、制御対象のモデルをリアルタイムで計算するシミュレーターです。そこに、制御装置とつなぐ入出力(I/O)や通信のインターフェースが加わります。試験の設定や結果の確認を行うソフトウェアも欠かせません。

例えばdSPACE SCALEXIOは、I/Oやバスを備えられるモジュール型の基盤です。NI VeriStandは、I/O設定やデータ記録、アラームを一つのソフトで扱います。

対象で分かれるHILSの種類

HILSの製品は、試験する対象で大きく分かれます。dSPACE SCALEXIOやHELIOSは、自動車のECU向けです。Typhoon HIL HIL606は、パワーエレクトロニクス向けのシミュレーターです。

用途を絞った装置もあります。モータHILSはモーターECU向け、RTDS NovaCor 2.0は電力系統の保護リレー向けです。鷺宮製作所 ステアリングHILS CRH440のように、ステアリングに特化した装置も存在します。

編集部メモ:HILSは、シミュレーター本体、入出力、ソフトウェアの組み合わせで構成が変わります。製品名がソフトのみの場合は、動かすハードウェアが別に必要かを、先に確認しておくとよいでしょう。


02

HILSのメリット

HILSの利点は、実機を待たずに試験できる点と、危険な試験を安全に行える点にあります。製品ごとに強みは異なりますが、開発の現場で感じやすい利点は次の4つです。

  • 実機ができる前から制御ソフトを検証できる
  • 実機では危険な条件を安全に試せる
  • 故障や異常の状態を繰り返し再現できる
  • 試験を自動化して繰り返せる

実機ができる前から制御ソフトを検証できる

制御対象の機械が完成するまで待つと、制御ソフトの検証が後ろにずれ込みます。シミュレーターで制御対象を模擬すれば、設計の早い段階から試験を始められる点が利点です。MathWorksの公式ページも、全部品がそろう前の試験を利点に挙げています。

モータHILSは、実モーターを使わずにモーターECUを検証できる装置です。AVL Inverter TSは、実モーターや実バッテリーなしでインバーターを試験できます。

実機では危険な条件を安全に試せる

高電圧や急な操作など、実機で試すと危険な条件があります。シミュレーター上で再現すれば、人や設備を危険にさらさずに試験できる点が利点です。MathWorksの公式ページも、高価な機器を危険にさらさずに試せる点を挙げています。

モータHILSは、安全設備なしで試験を前倒しできるとされています。ステアリングHILS CRH440は、車両なしでステアリングを評価できる装置です。

故障や異常の状態を繰り返し再現できる

断線や短絡といった故障は、実機では再現しにくく、再現できても設備を傷めかねません。HILSなら、制御装置の端子で故障を模擬し、異常時の振る舞いを何度でも確認できます。

Vector VT Systemには、故障挿入やスイッチングのモジュールがあります。モータHILSは、実回路で天絡・地絡・断線を再現できる点が特徴です。

試験を自動化して繰り返せる

ソフトを修正するたびに、同じ試験をやり直す場面があります。試験の手順をプログラムとして残せば、人手を増やさずに繰り返せます。結果の抜け漏れも減らしやすくなるでしょう。

NI VeriStandは、TestStandやPythonなどで試験を自動化できます。Typhoon HIL HIL404は、XIL/ASAM互換のAPIで他社ツールとつなげます。


03

HILSのデメリット

HILSには、導入前に確認したい制約があります。ただし、いずれも要件の整理と段階的な導入で対処できます。

  • 価格が公開されず、見積もりを取らないと比較できない
  • 制御対象のモデルを用意する手間がかかる
  • 用途に合わない製品だと過不足が生じる

価格が公開されず、見積もりを取らないと比較できない

本記事で扱う20製品のうち、2026年時点で公式ページに金額が確認できた製品はありません。構成ごとに見積もりが必要なため、総額を並べて比較しにくい状況です。

対処としては、試験したい対象と入出力の数を整理し、複数社へ早めに見積もりを依頼する方法があります。dSPACE MicroLabBox IIのような一体型で、小さく始める手もあります。

制御対象のモデルを用意する手間がかかる

HILSでは、エンジンやモーターなどの動きを計算するモデルが必要です。モデルの精度が低いと、試験結果を実機の挙動と結びつけにくくなります。モデルの作成と検証に、一定の工数を見込む必要があるでしょう。

既存のモデル資産を使える製品を選ぶと、負担を抑えやすいでしょう。Typhoon HIL HIL404は、SimulinkやJMAG-RTと連携できる製品です。Concurrent SIMulation Workbenchは、複数形式のモデルを動かせます。

用途に合わない製品だと過不足が生じる

HILSの製品は、自動車のECU、モーター駆動、電力系統など、得意な分野が分かれています。分野が合わないと、必要な入出力や通信が足りなかったり、設備が過剰になったりします。

RTDS NovaCor 2.0は電力系統向けで、自動車のECU試験には向きません。dSPACE SCALEXIO Power HILは、信号レベルだけの試験には大きすぎます。


04

HILSの主な機能

HILSの機能は、制御対象の模擬から試験の実行と管理まで、いくつかに分かれます。ここでは製品に共通する主な機能を押さえます。

  • リアルタイムシミュレーション:制御対象のモデルを、制御装置の動作周期に合わせて計算する
  • 入出力と通信の模擬:センサー信号やアクチュエーターへの出力、車載ネットワークなどを模擬する
  • 故障の模擬:断線・短絡などの異常を、制御装置の端子で再現する
  • モデルの取り込みと連携:MATLAB/Simulinkなどで作ったモデルを実行環境へ載せる
  • 試験の自動化と管理:試験手順を登録し、実行と結果の記録を繰り返す

リアルタイムシミュレーション

制御装置は一定の周期で動くため、シミュレーターも同じ周期の中でモデルを計算し、結果を返します。計算が間に合わなければ、実機と異なる応答になる点に注意が必要です。MathWorksは、プラントモデルをリアルタイムの試験システム上で動かすと説明しています。

処理方式は、製品によって異なる点が特徴です。AD-PROCYONはサーバー向けCPUの並列処理で大規模モデルを動かします。OPAL-RT OP5707XG2は、CPUとFPGAを組み合わせた構成です。

入出力と通信の模擬

制御装置は、センサーの信号を受け取り、アクチュエーターへ信号を出します。HILSはこれらの信号を、アナログ・デジタルの入出力や通信で模擬する仕組みです。MathWorksは、CANなどの通信の設定やタイミングも、HILの重要な要素と説明しています。

HELIOSには、クランク・カム信号や車載Ethernet用のボードがある点が特徴です。Xpack Real-time Systemは、PSI5やSENTのモジュールを備えます。

故障の模擬

故障の模擬は、制御装置の端子で断線や短絡を作り出す機能です。MathWorksの公式ページは、HILのテストベンチが電気的な故障を模擬できると述べています。異常時の保護動作を確認できる点が利点です。

Vector VT Systemは、リレーやスイッチ行列のモジュールで故障挿入に使えます。dSPACE SCALEXIOは、電気的な故障の模擬に対応する既製テストシステムを用意しています。

モデルの取り込みと連携

制御対象のモデルは、MATLAB/Simulinkなどのツールで作る場合が中心です。HILSの製品は、そのモデルを実時間で動く形式にして、シミュレーターへ載せる機能を備えます。FMIなどの標準形式に対応する製品もあります。

Simulink Real-Timeは、モデルをワンクリックで実機上で動かせる製品です。OPAL-RT RT-LABは、Simulinkモデルを実時間で動かし、実機とつなぎます。

試験の自動化と管理

試験の手順や合否の判定を登録しておけば、同じ試験を繰り返し実行できます。ソフトを修正するたびに行う回帰試験で、手間を減らせます。実行結果は記録として残せる点も利点です。

dSPACE MicroLabBox IIは、AutomationDeskで検証を自動化できます。Simulink Real-Timeは、継続的インテグレーションにも使えます。


05

HILSの主な活用場面

HILSは、制御ソフトを検証する担当者が使う設備です。ここでは、利用者の立場ごとに、使われ方を整理します。

車載ECUの機能試験を担当する開発者

ECUの開発者は、多数のセンサー信号と車載ネットワークをまとめて模擬し、機能を確認します。実車の完成前に試験を進められるため、検証を前倒ししやすくなります。入出力の種類と通信の対応が、選ぶ際の要点です。

dSPACE SCALEXIOは、車両ネットワーク全体の試験まで構成を広げられます。Xpack Real-time Systemは、CarMakerと組み合わせて車両HILを組めます。

モーター・インバーターの制御を開発する設計者

モーター駆動の制御は、高速なスイッチングを扱うため、短い時間刻みの計算が要ります。実モーターを使わずに検証できれば、試験室の安全設備や試作品の数を抑えられます。

Typhoon HIL HIL404は、モーター駆動とEV向けに絞った製品です。AVL Inverter TSは、モーターとバッテリーを模擬してインバーターを単体で試験します。

電力系統の保護・制御装置を試験する技術者

保護リレーや系統制御装置は、実際の系統で故障を起こして試すわけにいきません。模擬した系統と閉ループでつなげば、事故の条件を安全に再現できる点が利点です。

RTDS NovaCor 2.0は、IEC 61850やDNP3などの電力系統の通信に対応します。OPAL-RT RT-LABは、電力系統の過渡現象を扱うEMTシミュレーションに使えます。

ステアリングなど機械部品を評価する試験担当者

機械部品の評価では、制御装置だけでなく、荷重を加える装置も組み合わせます。車両モデルの計算どおりに負荷をかければ、車両がなくても部品単体の特性を確認できるのが利点です。

鷺宮製作所 ステアリングHILS CRH440は、ラック荷重を加えてステアリングを評価します。異音の評価にも使えます。

制御の試作と試験を小さく始めたい研究開発の担当者

制御の試作とHILの両方を、一台で始めたい場面もあるでしょう。入出力を内蔵した一体型なら、設備の規模を抑えて立ち上げられます。

dSPACE MicroLabBox IIは、制御の試作と入門レベルのHILの両方に使えます。Vector VT Systemは、デスクトップ型の小さな筐体から始められる製品です。


06

HILSの費用相場

2026年時点では、20製品のうち公式ページで金額や無償の明記を確認できた製品がありません。シミュレーター本体、入出力、ソフトウェアの組み合わせで構成が変わるため、見積もりが前提です。ソフトのみの製品でも、実行用のハードウェアが別途必要な場合もある点に注意が必要です。

費用の内訳や、金額に影響する要因はHILSの費用相場の解説で整理しています。製品の一覧は、HILS(ハードウェアインザループシミュレーション)のカテゴリページから確認できます。


07

HILSとSILS・MILSの違い

どれも制御ソフトを検証する手法ですが、実機をどこまで使うかが異なります。MathWorksの公式ページは、MIL・SIL・PIL・HILを段階として整理しています。次の表で、HILSとの相違点をまとめました。

観点

MILS(モデルインザループ)

SILS(ソフトウェアインザループ)

HILS(ハードウェアインザループ)

制御側

モデル

コンパイル済みの制御ソフト

実機の制御装置

制御対象側

モデル

シミュレーション

リアルタイムで動くモデル

実機の制御装置

不要

不要

必要

主な用途

設計の初期段階の検証

モデルと実装の差の確認

入出力・タイミング・通信を含む検証

PIL(プロセッサインザループ)は、実際のプロセッサで制御アルゴリズムを動かす手法です。接続先は、非リアルタイムの模擬環境です。HILSは、MILSやSILSでは再現しきれない配線やタイミングの条件を試せます。段階を踏んで進めるかどうかは、社内の開発手順で決めます。


08

HILSの導入が向いている企業・向いていない企業

HILSの導入効果は、制御装置の開発体制と試験の規模で変わります。ここでは、向いている企業と向いていない企業を、理由とあわせて整理します。

HILSの導入が向いている企業

制御装置やECUを自社で開発し、実機の完成前から検証したい企業です。危険な条件や故障の状態を繰り返し再現でき、回帰試験も自動化できるためです。モデル開発ツールを既に使っている企業は、モデル資産を生かしやすいでしょう。

メーカーごとの違いは、HILSのメーカー別の解説が参考になります。選定の手順はHILSの選び方で、製品の並べ方はHILSの比較記事で確認してください。

HILSの導入が向いていない企業

制御ソフトの論理だけを確認できればよい企業は、MILSやSILSで足りる可能性があります。実機の入出力や通信まで試す必要がなければ、HILSの設備は過剰になりかねません。

公開された価格で比較してから決めたい企業にも、向きにくい面があります。20製品のうち金額が確認できた製品はなく、見積もりが必要になるためです。要件を整理し、見積もりを依頼する計画を早めに立てておくとよいでしょう。


09

まとめ

HILSは、実機の制御装置をリアルタイムのシミュレーターにつなぎ、動作を試験する仕組みです。実機の完成前に検証でき、危険な条件や故障も再現できる点が特徴で、主な機能は次の5つにまとまります。

  • リアルタイムシミュレーション
  • 入出力と通信の模擬
  • 故障の模擬
  • モデルの取り込みと連携
  • 試験の自動化と管理

選定では、制御装置の種類、入出力と通信、モデル開発ツールとの連携を確認します。今回扱った製品は金額が確認できなかったため、早い段階で見積もりを依頼しておきましょう。論理の確認だけならMILSやSILSで足りないかも、見直してください。

HILS(ハードウェアインザループシミュレーション)比較表

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よくある質問

QHILSとは何ですか?
A

HILS(ハードウェアインザループシミュレーション)は、実機の制御装置を、制御対象を模擬したリアルタイムのシミュレーターにつないで試験する仕組みです。実機の完成前に検証でき、実機では危険な条件や故障の状態も再現できる点が特徴です。

QHILSとSILS・MILSは何が違いますか?
A

MILSは制御側も制御対象もモデルで、SILSはコンパイル済みの制御ソフトを模擬環境で試験します。HILSは実機の制御装置をリアルタイムの制御対象モデルにつなぐため、入出力や通信、タイミングまで含めて検証できます。

QHILSの導入費用はどのくらいですか?
A

2026年時点で、本記事で扱う20製品のうち、公式ページで金額や無償の明記を確認できた製品はなく、見積もりが前提です。シミュレーター本体、入出力、ソフトウェアの構成で変わります。ソフトのみの製品は、実行用のハードウェアが別に必要な場合があります。

QHILSを選ぶときは何を確認すればよいですか?
A

試験する制御装置の種類に合う製品かを先に確認します。そのうえで、リアルタイム処理の性能、入出力の種類とチャネル数、対応する通信、MATLAB/Simulinkなどモデル開発ツールとの連携、テスト自動化の機能を確認してください。

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