シングルボードコンピュータのメーカー8社の特徴|シェアの実態と長期供給の違い
シングルボードコンピュータの主要メーカー8社がどんな会社なのかを1社ずつ整理した記事。メーカー別シェアを公表している公的機関・業界団体は存在しない。設備に組み込むうえで最も差が出る長期供給の示し方を軸に、年月を明示する3社・年数の幅で示す2社・記載のない3社という構成で各社の立ち位置を見る。アットマークテクノの札証上場までまとめる。

シングルボードコンピュータのメーカーを調べると、教育やホビーで広く使われる製品から、産業用を掲げるボードメーカーまで並びます。設備に組み込む前提で選ぶなら、性能よりも先に確認すべきことがあります。
この記事では、主要8社がどんな会社なのかを1社ずつ見ていきます。よく検索されるシェアの実態、この分野で最も差が出る長期供給の示し方、資本関係の動きまでを会社単位で整理します。
記載内容は、各社の公式サイトと公式データシート、公式のプレスリリース、IR開示を、編集部が2026年9月22日に確認したものです。供給年数は公式の表記そのままで記載しています。
- シングルボードコンピュータのメーカー別シェアを公表している公的機関・業界団体は存在しない(2026年9月22日時点)
- 供給終了の年月を製品単位で明記しているのは、主要8社のうち3社にとどまる
- アットマークテクノは2026年6月30日に札幌証券取引所へ上場しており、非上場ではない
この記事でわかること
シングルボードコンピュータの主要メーカー8社【早見表】
シングルボードコンピュータを手がけているのは、産業用ボードの専業メーカーだけではありません。財団を母体とする会社やGPUメーカーも同じ分類に並びます。まずは全体像を一覧で押さえます。
- 主要8社のうち、供給終了の年月を製品ページで明示しているのは3社
- 主要8社のうち、動作温度が-20℃以下まで対応する産業グレードの選択肢を持つのは3社
- 主要8社のうち、日本に本社を置くのはアットマークテクノの1社
メーカー | 本社 | 母体となる事業 | 製品 | 供給年の明示 |
|---|---|---|---|---|
Raspberry Pi Holdings plc | 英国ケンブリッジ | シングルボードコンピュータ | Raspberry Pi 5 | 2036年1月まで |
NVIDIA Corporation | 米国カリフォルニア州 | GPU・AI基盤 | Jetson Orin Nano | 2032年1月まで |
AAEON Technology Inc. | 台湾 | 産業用ボード | UP Squared Pro 7000 | 2038年 |
株式会社アットマークテクノ | 札幌市北区 | 組込みプラットフォーム | Armadillo | 10年以上の実績 |
iWave Systems Technologies | インド・バンガロール | 組込みボード | iW-RainboW-G56S | 10年以上/7〜15年 |
ASUSTeK Computer Inc. | 台湾 | PC・周辺機器 | Tinker Board 3/3S | 記載なし |
Advantech Co., Ltd. | 台湾 | 産業用コンピュータ | RSB-3720 | 記載なし |
Axiomtek Co., Ltd. | 台湾 | 産業用ボード | PICO338 | 記載なし |
日本での窓口になる会社
アットマークテクノは札幌市に本社を置く日本の会社です。iWave Systemsにはアイウェーブ・ジャパン株式会社があり、2007年9月3日設立、資本金3,000万円で横浜市に本社を構えます。
AxiomtekにもAxiomtekジャパン株式会社があり、国税庁の法人番号で登記名として確認できます。Advantechの日本拠点は東京都台東区浅草にありますが、登記上の正式名称は公式の会社概要から確認できませんでした。
同名の別法人に注意する
アドバンテックという名前の法人は、日本国内に複数あります。半導体向け真空配管を手がける株式会社アドバンテックや、技術者派遣のアドバンテック株式会社は、台湾のAdvantechとは無関係です。
検索すると無関係な会社が上位に出ることがあります。問い合わせ先を決めるときは、住所まで含めて確認してください。
産業グレードの選択肢がある会社
動作温度が-20℃以下まで対応する構成を持つのは、Advantech、AAEON、Axiomtekの3社です。AdvantechのRSB-3720には-40〜85℃の拡張モデルがあります。
Raspberry Pi 5は公式のProduct Briefで0〜70℃とされており、コンシューマグレードにあたります。屋外や高温の工程に置くなら、この差が候補を絞る条件になります。
シングルボードコンピュータのメーカー別シェアと出荷実績
8社が並んだところで、どこが最も使われているのかが気になります。ただしこの分野には、メーカー別のシェアを示す公的な統計がありません。
- 電子情報技術産業協会の統計にパーソナルコンピュータはあるが、産業用ボードの区分は存在しない
- 数値を出しているのは有料の民間調査会社のみで、算出根拠は公開されていない
- 公式の出荷実績を開示しているのはRaspberry Piの1社である
公的な統計に区分がない
一般社団法人電子情報技術産業協会の統計資料には、パーソナルコンピュータの国内出荷実績があります。ただしシングルボードコンピュータや産業用ボードのメーカー別出荷統計は含まれていません。
IDCとOmdiaにも、この分野専門のベンダー別シェアレポートは見当たりませんでした。数値を出しているのは有料の民間調査会社のみで、算出根拠は公開されていません。引用する場合は調査会社名を明示してください。
出荷実績を開示している会社
Raspberry Pi Holdings plcはロンドン証券取引所に上場しているため、決算で出荷実績を開示しています。2026年3月31日発表の通期決算では、ボードとモジュールの出荷が760万台で前年比9%増でした。
マイクロコントローラチップの出荷は840万個で前年比47%増となり、社史上はじめてシリコンがボードを上回った年になっています。売上は3億2,320万米ドル、調整後EBITDAは4,640万米ドルです。
累計台数の数字は使わない
累計出荷台数については、同じ公式IRページ内で7,300万台超と6,700万台超という2つの数字が併記されています。どちらが正しいかを公開情報から確定できません。
記事や資料で累計台数を見かけても、そのまま使うのは避けてください。年度ごとの出荷台数の方が、出典が明確で比較にも使えます。
シングルボードコンピュータは長期供給の示し方で分かれる
順位で選べない以上、設備に組み込む立場で最も効く軸は何かを考える必要があります。この分野では、長期供給をどう示しているかが会社の性格をそのまま表します。
- 供給終了の年月を製品単位で明示しているのは、Raspberry Pi・NVIDIA・AAEONの3社
- 年数の幅で示しているのが、アットマークテクノとiWave Systemsの2社
- ASUS・Advantech・Axiomtekは、製品ページに供給年数の記載がない
年月を明示する会社は少ない
Raspberry Pi 5は公式のProduct Briefに、少なくとも2036年1月まで生産を続けると明記しています。Jetson Orin Nanoも公式のライフサイクルページで2032年1月までとされ、当初の2030年第1四半期から延長された経緯があります。
この2社はいずれも産業用専業ではありません。一方で産業用を掲げる各社のうち、製品ページに具体的な年を書いているのはAAEONのUP Squared Pro 7000だけでした。
年数の幅で示す会社
アットマークテクノは年数のコミットをせず、多くの製品シリーズで10年以上供給し続けている実績があるとしています。これは実績であって保証ではないため、10年保証と読み替えることはできません。
iWave Systemsは製品ページで10年以上のプログラムを掲げる一方、全社ポリシーのページでは7年から15年と幅を持たせています。どちらの表記を前提にするかは、見積もりの段階で確認が要ります。
この先はグループごとに見る
ここからは8社を3つのグループに分けて、1社ずつ見ていきます。まず年月を明示する3社、次に年数の幅で示す2社、最後に記載がない3社という順です。
各社の情報は、いずれも編集部が2026年9月22日に公式サイトと公式データシートで確認したものです。
供給終了の年月を明示しているシングルボードコンピュータ3社
まずは供給終了の年月を公式に書いている3社です。設備の更新計画を立てるうえで、この情報の有無は大きく効きます。
- Raspberry Pi 5は少なくとも2036年1月まで生産を続けると公式に明記している
- Jetson Orin Nanoは67 INT8 TOPSのAI性能を持ち、2032年1月まで供給される
- UP Squared Pro 7000の2038年という表記は、AAEON本体サイトの仕様表には存在しない
Raspberry Pi Holdings plc(Raspberry Pi 5)
Broadcom BCM2712を載せ、Arm Cortex-A76のクアッドコアが2.4GHzで動きます。GPUはVideoCore VIIで、メモリはLPDDR4X-4267です。NPUは搭載しておらず、AI性能のTOPS値も公式には記載がありません。
インターフェースは40ピンGPIO、USB 3.0が2ポート、USB 2.0が2ポートです。PoE+対応のGigabit Ethernet、PCIe 2.0が1レーン、MIPI 4レーンが2系統も備えます。micro HDMIは2つあり、4Kで60Hzに対応します。
動作温度は公式のProduct Briefで0〜70℃です。公式フォーラムには-20℃からという記述もありますが、Product Briefの値を前提にするのが安全です。メモリ構成は1GBから16GBまであり、16GBは305米ドルです。
NVIDIA Corporation(Jetson Orin Nano)
AI性能を数値で示している数少ない製品です。67 INT8 TOPSで、従来の40 TOPSから向上しています。GPUはNVIDIA Ampereで1024個のCUDAコアと32個のTensorコアを持ちます。
CPUはArm Cortex-A78AE v8.2の6コアで、メモリは8GBの128ビットLPDDR5、帯域は102GB/sです。消費電力は7Wから25Wの範囲で設定できます。
供給は2032年1月までとされています。ただし動作温度範囲と耐環境規格については、公式ページで確認できませんでした。産業用途で使うなら、この点はモジュールの仕様書で確認してください。
AAEON Technology Inc.(UP Squared Pro 7000)
CPUはIntel N50、N97、Atom x7425E、Core i3-N305から選べます。メモリは最大16GBのオンボードLPDDR5、ストレージは最大64GBのオンボードeMMCです。AI性能のTOPS値は記載がなく、Intel OpenVINO対応と書かれています。
動作温度は標準で0〜60℃、WiTAS1オプションで-20〜70℃です。インターフェースは40ピンGPIO、2.5GbEが2ポート、M.2が3種類、HDMIとDisplayPortとUSB-Cで4K3画面の同時出力に対応します。MTBFは422,053時間です。
注意したいのが供給年の表記です。UPのサイトの仕様表には2038年とありますが、AAEON本体のサイトの仕様表と公式データシートPDFには同じ行が見当たりません。この年を前提に計画を立てるなら、事前に確認してください。1992年設立で、2011年からASUSグループに入っています。
年数で示すシングルボードコンピュータ2社
続いて、年月ではなく年数の幅で供給を示す2社です。どちらも組込み用途を本業としており、開示の姿勢は近いものがあります。
- アットマークテクノは独自のArmadillo Base OSとクラウド管理のArmadillo Twinを持つ
- iWaveの同一基板にはRZ/G2L版とRZ/V2L版があり、AIアクセラレータの有無が違う
- アットマークテクノは2026年6月30日に札幌証券取引所へ上場している
株式会社アットマークテクノ(Armadillo)
Armadillo-IoT Gateway G4とArmadillo-X2がi.MX 8M Plusを載せ、NPUで2.3TOPSのAI処理ができます。ほかに省電力のArmadillo-IoT Gateway A9EとA6Eがあります。31ミリ角のArmadillo-900、モジュール型のArmadillo-610など、用途に応じた構成が揃います。
この会社の特徴は独自OSです。Armadillo Base OSはLinuxベースで、セキュアな更新機能を持ちます。クラウドからの管理はArmadillo Twinが担当します。ハードとOS、運用の仕組みを1社で揃えられる構成です。
長期供給については年数のコミットをせず、多くの製品シリーズで10年以上供給し続けている実績があるとしています。製品保証は販売代理店の出荷日から1年間です。1997年11月に有限会社として創業し、2001年4月に株式会社となりました。
iWave Systems Technologies(iW-RainboW-G56S)
Renesas RZ/G2Lを載せたボードです。Cortex-A55が2コアで1.2GHz、Cortex-M33が1コアで200MHz、GPUはMali-G31という構成になります。メモリは2GBのDDR4、ストレージは16GBのeMMCで、どちらも拡張できます。
インターフェースが豊富な点が持ち味です。GbEとUSB 2.0に加え、拡張コネクタにCANが2系統、UARTが4系統、SPIが2系統、GPIOが15本用意されています。基板サイズは85×56ミリです。
注意したいのが型番の違いです。同じ基板にRZ/G2L版とRZ/V2L版があり、AIアクセラレータのDRP-AIを載せるのはRZ/V2L版だけです。RZ/G2L版にはAIアクセラレータがありません。AI処理を前提に選ぶなら、型番まで確認してください。
供給年数の記載がないシングルボードコンピュータ3社
最後に、製品ページに供給年数の記載がない3社です。記載がないこと自体は供給しない意味ではありませんが、計画を立てる側としては確認が必要になります。
- ASUSのEOL通知は発売から7年をEOL日とする運用を示している
- AdvantechのRSB-3720には-40〜85℃の拡張温度モデルがある
- AxiomtekのPICO338はCPUの種類によって動作温度の上限が違う
ASUSTeK Computer Inc.(Tinker Board 3/3S)
Tinker Board 3はRockchip RK3566を載せ、Cortex-A55のクアッドコアが最大1.6GHzで動きます。NPUは1 TOPSで、メモリはLPDDR4Xの2GBまたは4GBです。対応OSはLinux Debian、Yocto、Androidです。
Tinker Board 3SはeMMCを搭載し、無線LANとBluetooth 5.0を備えます。ただしeMMCの容量やNPUのTOPS値、動作温度は公式ページから確認できませんでした。
供給についてはEOL通知に手がかりがあります。Tinker Board R2.0とS R2.0は2018年2月発売で、最終発注が2024年9月30日、EOLが2025年3月31日でした。通知には発売から7年という運用が示されています。ただし公式のシリーズ一覧には旧モデルがEOL表示なしで残っており、通知と表示が食い違います。
Advantech Co., Ltd.(RSB-3720)
NXPのi.MX8M Plusを載せ、Cortex-A53が最大1.8GHzで動きます。内蔵NPUで2.3 TOP/sのAI処理ができ、オプションのHailo-8モジュールを足せば最大26 TOPSまで引き上げられます。
動作温度は0〜60℃の標準と-40〜85℃の拡張の2構成です。産業グレードを選べる点がこの製品の強みになります。インターフェースはGbEが2ポート、Mini-PCIe、M.2、MIPI-CSIが2系統、CAN-FDが1系統という構成です。
対応OSはWindows 10 IoT Enterprise on Arm、QNX、Yocto Linux BSPです。長期供給については、EOLの6か月前通知と長期購入への対応を掲げていますが、年数の明示はありません。
Axiomtek Co., Ltd.(PICO338)
Pico-ITX規格で100×72ミリ、板厚は1.6ミリです。CPUはIntel N97、N150、Core i3-N305から選べ、メモリは8GBのオンボードLPDDR5です。16GBのオプションもあります。
動作温度はCPUによって上限が違います。N97がパッシブ冷却で-20〜65℃、N150が同じくパッシブで-20〜70℃、Core i3-N305はアクティブ冷却で-20〜70℃です。下限はいずれも-20℃で、産業グレードにあたります。
インターフェースはUSB 3.2が2ポート、2.5GbEが2ポート、RS-232/422/485が1系統です。ほかにHDMIとLVDS、プログラマブルな4チャンネルDIO、TPM 2.0を備えます。対応OSと供給年数は公式ページに記載がありません。
シングルボードコンピュータのメーカーで起きている変化
各社の顔ぶれが見えたところで、会社側で起きている変化を押さえます。この分野では上場や資本関係の動きが、供給の安定性にも関わります。
- Raspberry Pi Holdings plcは2024年6月14日にロンドン証券取引所で取引を開始した
- アットマークテクノは2026年6月30日に札幌証券取引所のプロ投資家向け市場へ上場した
- AAEONは2011年からASUSグループに入っている
上場して開示が増えた会社
Raspberry Piは2024年6月11日に公開価格を1株280ペンスと発表し、1億6,600万ポンドを調達しました。2024年6月14日にロンドン証券取引所のメインマーケットで取引を開始しています。
上場によって出荷台数や売上が定期的に公表されるようになりました。長く使う機器を選ぶ立場では、事業の継続性を数字で確認できる点が意味を持ちます。
プロ向け市場の第1号になった会社
アットマークテクノは2026年6月30日に、札幌証券取引所のSapporo PRO Frontier Marketへ上場しました。証券コードは588Aです。
同市場の第1号上場企業で、プロ投資家向け市場の開設は東証と福証に次いで国内3例目になります。非上場と書かれた資料は、この時点より前のものです。
グループに入っている会社
AAEONは1992年設立で、2011年からASUSグループに入っています。出資比率は公式には確認できませんでした。
iWave Systemsはインドのバンガロールに本社があり、1999年設立です。日本法人のアイウェーブ・ジャパンは2007年9月3日設立で、親会社の製品を国内で扱っています。
シングルボードコンピュータのメーカーが想定している企業規模
会社側の変化が見えたところで、次は各社がどの規模の現場を想定しているかです。編集部では製造業適合性スコアとして、製品ごとに5段階で評価しています。
- 中堅・中小製造業との相性が5点なのはRaspberry Pi 5の1製品
- 保全管理適合性はiW-RainboW-G56Sが5点で最も高い
- 対象企業規模が中小を含むのは4製品で、残る4製品は中堅と大手である
小さく始めやすい会社
中堅・中小製造業との相性は、予算や体制に対する導入の敷居を見る軸です。Raspberry Pi 5が5点で最も高く、ASUSのTinker Boardが4点で続きます。
この2製品は対象企業規模も中小と中堅です。試作や小規模な検証から入るなら、入手しやすさと情報の多さが効きます。
保全を前提とした設計の会社
保全管理適合性は、設備の保守や部品交換のしやすさを見る軸です。iWaveのiW-RainboW-G56Sが5点で最も高くなっています。
アットマークテクノのArmadilloとAdvantechのRSB-3720が4点で続きます。この3製品はいずれも長期供給に関する記載を持つか、産業グレードの構成を選べる製品です。
対象企業規模の分かれ方
対象企業規模に中小を含むのはRaspberry Pi 5、Jetson Orin Nano、Tinker Board、Armadilloの4製品です。残るRSB-3720、UP Squared Pro 7000、iW-RainboW-G56S、PICO338は中堅と大手になります。
後者はいずれも産業用ボードの専業メーカーの製品です。量産設計に組み込む前提で作られているため、少量から始める用途とは想定が違います。なおこのスコアは編集部の評価で、2026年9月時点の採点です。
シングルボードコンピュータを調べるときの注意点
最後に、シングルボードコンピュータのメーカーを調べるときに引っかかりやすい点をまとめます。この分野は公式サイト内の記載が揃っていないことが多く、型番の粒度も細かくなっています。
- 同じ公式サイト内で動作温度や供給年の数値が食い違っている例がある
- 同じ型番でも搭載SoCが違い、AIアクセラレータの有無が変わる製品がある
- EOL通知の対象がリビジョン単位で、初代とは限らない
公式サイト内の食い違いに注意する
AAEONのUP Squared Pro 7000は、UPのサイトに2038年という供給年の記載があります。一方でAAEON本体の仕様表と公式データシートには同じ行がありません。iWaveも製品ページの10年以上と、全社ポリシーの7年から15年で表記が違います。
ASUSのTinker Board 3Nでは、同じページ内に0〜60℃と-40〜85℃の2つの動作温度が併記されています。数値を使うときは、どのページのどの版を見ているかを明示してください。
型番の粒度まで確認する
iWaveのiW-RainboW-G56Sには、RZ/G2L版とRZ/V2L版があります。AIアクセラレータのDRP-AIを載せるのはRZ/V2L版だけで、型番の一部で見分けます。
AxiomtekのPICO338も、CPUによって動作温度の上限と冷却方式が変わります。シリーズ名だけで仕様を判断せず、発注する型番で確認してください。
EOL通知の対象を確かめる
ASUSのEOL通知でサポートが終わったのは、Tinker Board R2.0とTinker Board S R2.0というリビジョンです。2017年に出た初代そのものではありません。
加えてASUSの公式シリーズ一覧には、EOL通知が出ている型番がEOL表示なしで残っています。一覧に載っているという理由だけで現行品と判断しないでください。
まとめ|シングルボードコンピュータメーカーの全体像
シングルボードコンピュータは、供給終了の年月を明示する3社、年数の幅で示す2社、記載のない3社という構成の分野です。設備に組み込むなら、この違いが性能の差より先に効きます。
メーカー別のシェアは公的な統計に存在しないため、ランキングで選ぶことはできません。公式の出荷実績を開示しているのも、上場しているRaspberry Piの1社だけです。
試作や小規模な検証から入るなら入手しやすい製品、屋外や高温の工程に置くなら産業グレードの構成を選べる会社が起点です。いずれの場合も、その製品が何年買えて何年サポートされるかを、公式の表記で確認してから決めてください。
なお本記事の各社の情報は、編集部が2026年9月22日に各社の公式サイトと公式データシート、プレスリリース、IR開示で確認したものです。供給年数は公式の表記をそのまま記載しています。
シングルボードコンピュータ(SBC)のおすすめ製品
Armadillo(アルマジロ)
株式会社アットマークテクノ
長期供給に対応した産業用組込みボード
iW-RainboW-G56S(RZ/G2L シングルボードコンピュータ)
アイウェーブ・ジャパン株式会社
10年以上の長期供給を公式に明記した工業用グレードSBC
UP Squared Pro 7000
AAEON Technology株式会社
Windows資産をそのまま動かせる4インチ角のx86 SBC
RSB-3720
アドバンテック株式会社
-40〜85℃の広温度モデルを選べる2.5インチ産業用SBC
Raspberry Pi 5
Raspberry Pi Holdings plc
圧倒的な情報量で扱いやすい定番SBC
PICO338
Axiomtekジャパン株式会社
100×72mmに2.5GbE×2とDIOを詰めたPico-ITX SBC
シングルボードコンピュータ(SBC)比較表
| ロゴ | 製品名 | ベンダー | 価格モデル | 特徴 | |
|---|---|---|---|---|---|
| Armadillo(アルマジロ) | 株式会社アットマークテクノ | 要見積もり | 長期供給に対応した産業用組込みボード | 詳細を見る | |
| iW-RainboW-G56S(RZ/G2L シングルボードコンピュータ) | アイウェーブ・ジャパン株式会社 | 要見積もり | 10年以上の長期供給を公式に明記した工業用グレードSBC | 詳細を見る | |
| UP Squared Pro 7000 | AAEON Technology株式会社 | 要見積もり | Windows資産をそのまま動かせる4インチ角のx86 SBC | 詳細を見る | |
| RSB-3720 | アドバンテック株式会社 | 要見積もり | -40〜85℃の広温度モデルを選べる2.5インチ産業用SBC | 詳細を見る | |
| Raspberry Pi 5 | Raspberry Pi Holdings plc | オンプレミス | 圧倒的な情報量で扱いやすい定番SBC | 詳細を見る | |
| PICO338 | Axiomtekジャパン株式会社 | 要見積もり | 100×72mmに2.5GbE×2とDIOを詰めたPico-ITX SBC | 詳細を見る | |
| NVIDIA Jetson Orin Nano | NVIDIA Corporation | オンプレミス | エッジAI推論に強い小型ボード | 詳細を見る | |
| ASUS Tinker Board 3/3Sシリーズ(初代・Sは2025年3月EOL) | ASUSTeK Computer | オンプレミス | PC大手が手掛ける高性能SBC | 詳細を見る |
よくある質問
Qシングルボードコンピュータの主要メーカーはどこですか?
供給終了の年月を製品ページで明示しているのがRaspberry Pi Holdings plc(2036年1月まで)、NVIDIA Corporation(2032年1月まで)、AAEON Technology Inc.(2038年)の3社です。年数の幅で示すのが株式会社アットマークテクノとiWave Systems Technologiesの2社、製品ページに記載がないのがASUSTeK Computer Inc.、Advantech Co., Ltd.、Axiomtek Co., Ltd.の3社になります。
Qシングルボードコンピュータのシェアはどこで分かりますか?
公的な統計に区分がありません。一般社団法人電子情報技術産業協会の統計にはパーソナルコンピュータの国内出荷実績がありますが、シングルボードコンピュータや産業用ボードのメーカー別出荷統計は含まれていません。IDCとOmdiaにも専門のベンダー別シェアレポートは見当たりません。数値を出しているのは有料の民間調査会社のみで算出根拠は公開されていないため、引用するなら調査会社名の明示が必要です。
Q何年買えるかはどう確認すればよいですか?
公式の表記を直接確認してください。Raspberry Pi 5は公式Product Briefに少なくとも2036年1月まで生産を続けると明記し、Jetson Orin Nanoは公式ライフサイクルページで2032年1月までとしています。アットマークテクノは年数のコミットをせず「10年以上に渡って供給し続けている実績があります」としており、これは実績であって保証ではありません。iWaveは製品ページで10年以上、全社ポリシーで7年から15年と表記が違います。
Q産業用途に使えるシングルボードコンピュータはどれですか?
動作温度で判断するのが実務的です。-20℃以下まで対応する構成を持つのはAdvantech、AAEON、Axiomtekの3社で、AdvantechのRSB-3720には-40〜85℃の拡張モデルがあります。AxiomtekのPICO338は全CPUで下限が-20℃です。一方Raspberry Pi 5は公式Product Briefで0〜70℃とされており、コンシューマグレードにあたります。屋外や高温の工程に置くなら、この差が候補を絞る条件になります。
Qアットマークテクノは上場していますか?
2026年6月30日に上場しています。札幌証券取引所のSapporo PRO Frontier Market(プロ投資家向け市場)で、証券コードは588Aです。同市場の第1号上場企業で、プロ投資家向け市場の開設は東証・福証に次いで国内3例目になります。非上場と書かれた資料は、この時点より前のものです。
