SCADAの選び方|監視点数の見積もりから見積依頼までの5ステップ
SCADA(設備監視制御システム)の選定手順を、HMI・IoTプラットフォームとの切り分け、監視点数と端末台数の概算、既存PLCメーカーによる絞り込み、条件を揃えた見積もり依頼、提供元と保守体制の確認という5ステップで整理。OTセキュリティ要件と失敗しやすいポイントもまとめた記事。

SCADA(設備監視制御システム)の選定でつまずく原因の多くは、製品の優劣ではなく順番にあります。カタログの機能一覧を先に見比べると、どの製品も似たような機能を並べているため差がわからず、結局は価格で決めることになりがちです。ところがSCADAは主要10製品のうち9製品が価格非公開で、比較の土俵にすら乗りません。
先に決めるべきは、自社の監視点数・既存PLCのメーカー・冗長化の要否・現場端末の台数という4つの前提条件です。これが固まると、見積もり依頼の条件が揃い、非公開の製品同士でも比較できるようになります。逆にここを曖昧にしたまま複数社に問い合わせると、各社が異なる前提で見積もりを出すため、金額を並べても意味を持ちません。
ここでは、SCADAが本当に必要かの見極めから、監視点数の見積もり、候補の絞り込み、見積もり条件の揃え方、契約前の確認事項までを順に整理します。
結論:SCADA選定は「①SCADAが必要かの見極め(HMI・IoTプラットフォームとの切り分け)→②監視点数と端末台数の概算→③既存PLCメーカーによる候補の絞り込み→④条件を揃えた同時見積もり→⑤提供元と保守体制の確認」の順に進めると手戻りがありません。特に②は、段階課金型を選ぶ場合に契約後の追加費用を左右するため、現状の1.5倍から2倍で見積もっておくのが実務的です。④では監視点数・クライアント台数・冗長化の有無・ヒストリアン込みかの4条件を明示して、5年間の総保有コストで出してもらうと製品間の比較が揃います。
この記事でわかること
まずSCADAが本当に必要かを見極める
SCADAを検討している案件の一部は、実際にはHMIやIoTプラットフォームで足ります。投資額が変わるため、最初に切り分けておくと無駄がありません。判断基準は「現場の設備に書き戻すか」と「対象が単一設備か工場全体か」の2つです。
製造システムの階層を定めた国際標準ISA-95では、レベル2が物理プロセスの監視・制御にあたり、SCADAとHMIはここに位置します。SCADA製品を提供するAVEVAの解説では、HMIは「人がプロセッサ搭載機器と対話するための手段」でありSCADAの構成要素(サブセット)と位置づけられ、HMIが単一の機械やプロセスセル単位を対象とするのに対し、SCADAは工場全体から複数拠点までを対象とし長期のヒストリアンデータを扱うとされています。
したがって、対象が装置1台で、その装置のオペレーターが操作できればよいのであればHMIで足ります。三菱電機であればGOT、Siemensであれば WinCC Comfort/Advanced とHMIパネル、オムロンであればNAシリーズが該当し、SCADAソフトウェアのライセンス費は不要です。実際、三菱電機は表示器のGOTとSCADAのGENESISを別の製品ラインとして扱っています。
逆に、収集したデータを見るだけで操作は不要という場合は、IoTプラットフォームが候補になります。この領域の製品はPLCやセンサーからデータを収集して蓄積・可視化・分析することを主目的とし、設備への書き戻しは前提としていません。稼働状況の可視化やOEE分析だけが目的なら、こちらのほうが導入は軽くなります。
SCADAが要るのは、複数ラインや工場全体を対象に、監視しながら設定値の変更や起動・停止といった操作まで行いたい場合です。加えて、アラーム履歴と長期トレンドを蓄積して停止要因を分析したい、複数拠点を統括監視したいという要件が加わると、SCADA以外の選択肢は現実的でなくなります。
選定を進める5つのステップ
ステップ1:監視点数(タグ数)と端末台数を概算する
SCADAの費用構造は多くの製品でタグ(監視点)数の段階課金が基礎になるため、点数の概算が最初の作業になります。設備1台あたりの取得項目(稼働状態・温度・圧力・回転数・アラーム接点など)を洗い出し、対象設備数を掛けて積み上げます。
段階の刻み方は製品ごとに異なります。富士電機が国内で扱うAVEVA Plant SCADA(旧Citect SCADA)はサーバー・操作表示クライアント・表示専用クライアントごとに〜75点/〜150点/〜500点/〜1,500点/〜5,000点/〜15,000点/〜50,000点/無制限の8段階、シュナイダーエレクトリックのEcoStruxure Machine SCADA Expertは500・1,500・4,000・32,000・64,000タグの階層、三菱電機GENESISのBasic SCADAは75タグから5,000タグまでの段階です。
ここで重要なのは、現状の点数ちょうどで見積もらないことです。設備の増設やデータ収集項目の追加は導入後に必ず発生し、段階課金型では上限を超えた時点で上位ティアへの移行費用がかかります。タグ追加のオプション単価は本体ライセンスより割高に設定されていることが多く、後から足すほど総額は不利になります。現状の1.5倍から2倍を見込んでティアを選んでおくと、この追加費用を避けられます。
あわせて、現場端末やタブレットの想定台数を「常時監視用」と「現場閲覧用」に分けて数えます。クライアント課金型の製品では台数がそのまま費用に乗る一方、Webクライアントを無制限に配布できる製品では台数が増えてもライセンス費は変わりません。本体価格が安くてもクライアント課金で総額が逆転するため、この台数が出ていないと見積もりを比べられません。製品ごとの課金方式はSCADA比較10選の比較表に整理しています。
ステップ2:既存PLCのメーカーで候補を絞る
点数が見えたら、次は既存PLCとの関係で候補を絞ります。制御盤のPLCメーカーが統一されている場合、そのメーカー系列のSCADAが構築工数の面で有利になります。MELSECを標準採用しているなら三菱電機GENESIS、SIMATIC S7ならSIMATIC WinCC Unified(TIA Portal上でPLCプログラムと監視画面を同一環境で開発・デバッグできる)、ControlLogix/CompactLogixならFactoryTalk View SE(Allen-Bradley PLC/PACとネイティブに接続)が入口です。
特定ベンダーに寄せることには囲い込みの側面もありますが、実務上はタグの取り込み設定とトラブル時の切り分けが速いという実利が大きく、専任のエンジニアを置きにくい現場ほど効きます。
買収や増設を重ねてPLCが複数メーカーに分かれている場合は、特定メーカーに紐づかない中立系が候補です。AVEVA System Platform、iFIX、Ignitionがこれにあたり、接続性の広さで見るならAdvantech WebAccess/SCADAが450以上の機器・PLCドライバに対応しています。
ここで候補が3〜4製品に絞れない場合は、編集部の製造業適合性スコア(工程管理・保全管理・多拠点対応・現場操作性・中小適合を5段階で評価)のうち中小適合を先に見ます。自社の規模より明らかに上を想定した製品は、機能が合っていても運用体制が追いつかず定着しにくいためです。中小適合5の製品(三菱電機GENESIS、Advantech WebAccess/SCADA)は1ラインからの導入を前提に設計されている一方、1の製品(横河電機FAST/TOOLS)は大規模プラント・広域インフラ向けで、単一工場での適用を示した公式資料がありません。次の表で自社規模に近い行から確認できます。
この段階でプロトコルの棚卸しもしておきます。制御盤の機器を1台ずつ「メーカー・型式・通信方式(OPC UA/EtherNet/IP/Modbus/DNP3など)」の3列で表にすると、カタログの対応表を机上の○×ではなく実際に繋がるかという観点で読めます。古い機器が混ざっている場合は、その1台のためにゲートウェイが必要になることもあるため、見積もり依頼時に型式まで伝えておくと後出しの追加費用を防げます。
ステップ3:冗長化とヒストリアンの要否を決める
冗長化の要否は、SCADAが止まったときにラインを止めるかどうかで決まります。監視が落ちても現場のPLC単体で運転を継続でき、復旧まで手動監視でしのげるなら単系で足ります。逆に、監視画面がないと安全に運転できない、あるいは連続プロセスで停止コストが大きいなら冗長構成が前提です。冗長化はサーバーが2倍になるためライセンスもハードも増え、見積もり額が大きく変わります。要否を先に決めずに問い合わせると、各社が異なる前提で出してきて比較できません。
ヒストリアンは、どれだけ過去に遡ってデータを見たいかで要否が決まります。直近の異常検知だけならSCADA標準のトレンド機能で足りることが多く、月次・年次の設備比較や停止要因の統計分析までやるならヒストリアンが必要です。主要製品の多くはヒストリアンを本体とは別のライセンスとして持つため、要ると決めたなら見積もり依頼時に必ず「ヒストリアン込み」と明記します。本体価格だけで比べると総額を見誤ります。
ステップ4:条件を揃えて同時に見積もりを取る
ここまでで前提条件が固まったら、複数社へ同時に見積もりを依頼します。SCADAは価格非公開の製品が大半のため、この工程が実質的な比較作業になります。依頼時には次の4条件を明示します。
ひとつは監視点数(ステップ1で出した1.5〜2倍の値)、ふたつめはクライアント台数(常時監視用と現場閲覧用を分けて示す)、みっつめは冗長化の有無、よっつめはヒストリアン込みか別かです。加えて5年間の総保有コストで出してもらうと、初期費用だけでは見えない年間保守の差が並びます。Ignitionのサポート費用は購入価格の年16%(BasicCare)から24%(PriorityCare)で、サポート未加入でのメジャーバージョンアップには現行価格の65%が必要になります。
この段階で、公開価格のある製品を基準線として置いておくと判断しやすくなります。三菱電機GENESISは三菱電機FA Web Shopで円建ての定価を公開しており、Basic SCADA 75タグ67,100円/500タグ148,500円/5,000タグ463,100円、上位のBasic SCADA Plus 30,000タグ1,529,000円という水準です(2026年7月時点)。他社の見積もりがこの水準からどれだけ離れているかで、妥当性の当たりを付けられます。
ステップ5:提供元と国内の保守体制を確認する
最後に、契約先と保守体制を確認します。この工程を省くと、導入後にトラブル対応の窓口がないという事態が起こります。
確認する質問は3つです。ひとつは契約の相手はメーカー日本法人か、それとも代理店・SIerか。ふたつめは障害時の一次窓口はどこで、日本語で何時間以内に応答するか。みっつめはその製品の担当技術者が国内に何人いるかです。国内メーカー製や日本法人を持つ製品はここが明快ですが、日本法人を置いていない製品ではSIerが実質的な保守元になります。メーカー直接の保守契約を社内規定で求められる企業では、この点が採否を決めます。各製品の国内体制はSCADA比較10選で整理しています。
OTセキュリティと規制要件を先に確認する
調達要件にセキュリティ認証や規制対応が含まれるかを社内で先に確認しておくと、選定のやり直しを避けられます。
産業制御システムのセキュリティ規格ISA/IEC 62443シリーズは、General(62443-1-x)、Policies & Procedures(2-x)、System(3-x)、Component(4-x)の4グループで構成され、ゾーンとコンジットでプラントを区切りセキュリティレベル(SL1〜SL4)を割り当てる方式を採ります。2021年にIECから水平規格として認定され、20以上の業界で採用されています。2025年1月にはANSI/ISA-62443-2-1-2024が発行され、要件構造がセキュリティプログラム要素に再編されるとともに成熟度モデルが導入されました。2025年12月にはISA-TR62443-2-2-2025(IACS Security Protection Scheme)が発行されています。候補製品がこのシリーズの認証を取得しているかは公式サイトに明記されていることが多いため、絞り込みの初期段階で確認できます。
国内では経済産業省が2022年11月に「工場システムにおけるサイバー・フィジカル・セキュリティ対策ガイドライン」を策定し、2024年4月に別冊「スマート化を進める上でのポイント」、2025年4月に中小規模の製造事業者の経営層・担当者を主な読者としたAppendix「工場セキュリティの重要性と始め方」を公表しました。2025年10月には「半導体デバイス工場におけるOTセキュリティガイドライン Ver 1.0」が新規に策定されています。またIPAは「制御システムのセキュリティリスク分析ガイド 第2版」を公開しており、暗号技術利用・標的型攻撃対策・内部不正対策・ファイアウォール設定・外部記憶媒体対策の各チェックリストが付録として提供されています。
医薬品・食品でFDA 21 CFR Part11やGMPへの対応が要件に入る場合は、監査証跡と電子署名を標準機能として持つか、追加モジュールかが絞り込みの軸になります。標準搭載であればバリデーション文書がベンダーから提供されることが多く、監査対応の工数が変わります。要件がある場合は候補を先にこの条件で絞ってから機能比較に入ると手戻りがありません。対応状況はSCADA比較10選の各製品欄で確認できます。
製造業適合性スコアの比較表
ステップ2で候補を絞る際の当たりを付けるため、編集部の製造業適合性スコア(5段階評価)を横並びにしたものが次の表です。自社の規模と近い行から見ると、現実的な候補が絞れます。評価が設定されていない項目は「-」としています。
製品 | 提供元 | 工程管理 | 保全管理 | 多拠点対応 | 現場操作性 | 中小適合 | 価格の目安 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|
三菱電機 GENESIS(旧GENESIS64) | 三菱電機株式会社 | 4 | 4 | 4 | 4 | 5 | 75タグ67,100円〜、30,000タグ1,529,000円(FA Web Shop公開価格) |
Advantech WebAccess/SCADA | アドバンテック株式会社 | 3 | 3 | 3 | 4 | 5 | 無償75タグライセンスあり。上位は要問い合わせ |
Ignition | Inductive Automation, LLC | 4 | 4 | 5 | 4 | 4 | 米本社公開でPlatform 1,200ドル+用途別スイート。日本円価格は非公開 |
EcoStruxure Machine SCADA Expert | シュナイダーエレクトリック株式会社 | 4 | 3 | 3 | 4 | 4 | 日本価格は要問い合わせ。500〜64,000タグの階層制 |
AVEVA Plant SCADA(旧Citect SCADA) | AVEVA Group Limited(Schneider Electric傘下) | 4 | 3 | 4 | 4 | 3 | 要問い合わせ。信号点数は75点〜無制限の8段階 |
AVEVA System Platform(旧Wonderware) | AVEVA Group Limited(Schneider Electric傘下) | 5 | 4 | 5 | 4 | 2 | 本体は要問い合わせ。InTouch HMIのみ米国価格を公開 |
SIMATIC WinCC Unified | シーメンス株式会社 | 5 | 3 | 4 | 4 | 2 | 要問い合わせ(代理店の個別見積もり) |
FactoryTalk View SE | ロックウェル オートメーション ジャパン株式会社 | 4 | 4 | 4 | 4 | 2 | 要問い合わせ。ライセンス体系も非公開 |
iFIX(Proficy HMI/SCADA) | Velotic | 4 | 4 | 4 | 4 | 2 | 要問い合わせ。無料トライアルあり |
横河電機 FAST/TOOLS | 横河電機株式会社 | 4 | 4 | 5 | 3 | 1 | 要問い合わせ(公式に価格記載なし) |
候補となる主要10製品
ステップ2以降で候補に挙がる主要製品を、位置づけと価格の公開状況で整理します。各製品の詳細な機能・導入事例はSCADA比較10選で扱っています。
公開価格から検討できる製品
三菱電機 GENESIS(旧GENESIS64)は、10製品のうち唯一ベンダー自身が日本円の定価を公開しています。開発元は三菱電機が2019年5月に100%子会社化したMitsubishi Electric Iconics Digital Solutions(旧ICONICS)で、日本国内は三菱電機株式会社本体が直接販売します。MELSEC・GOTとの親和性が高く、75タグ67,100円からの小規模構成に対応します。旧MC Works64は2021年3月に生産中止で、Version4も2028年3月にサポート終了予定のため、使用中なら移行計画が必要です。
Advantech WebAccess/SCADAは、無償の75タグライセンスと90日間5,000タグのトライアルを提供しており、費用をかけずに実機で接続確認ができます。100%ブラウザベースで専用クライアントのインストールが不要です。上位ライセンスの金額はWISE-Marketplaceのログイン後表示のみで非公開です。
Ignitionは日本円価格こそ非公開ですが、米本社が見積もりツールで価格を公開しており、Platform 1,200ドル(1回払い)に用途別のSolution Suite(Application Building 13,500ドル、Industrial Historian 3,500ドルなど)を組み合わせる構成です。サーバー1台につき1ライセンスでタグ数・クライアント数・デバイス接続数がすべて無制限という点が他社と根本的に異なります。
PLCメーカー系列の製品
SIMATIC WinCC UnifiedはSiemensの現行主力で、2026年1月時点の最新はV21です。TIA PortalでPLCと監視画面を統合開発でき、Webクライアントは接続数無制限です。クラシック系のWinCC V7/V8も併売され、V8.1はIEC 62443認証を取得しています。国内ではマクニカが2025年7月にソリューションパートナーとなりました。
FactoryTalk View SEはRockwell Automationの全社規模SCADAで、Windowsサーバー上に分散アーキテクチャと冗長化構成を組みます。単体機械向けにはMachine Edition(ME)が用意され、履歴はFactoryTalk Historianが担います。国内はメーカー日本法人が直接販売するため、ステップ5の保守体制の確認は通しやすい部類です。
EcoStruxure Machine SCADA Expert(旧Vijeo XL)はシュナイダーエレクトリックの自社ブランドで、AVEVA製品とは別系統です。500タグからの階層ライセンスで、機械・ライン単位の軽量な監視向けという位置づけです。
マルチベンダー中立系の製品
AVEVA System Platform(旧Wonderware)はSCADA・MES・IIoTを単一基盤で統合できる製品で、HMIはAVEVA InTouch、履歴はAVEVA Historianが担います。AVEVAは2023年1月にSchneider Electricによる買収が完了し完全子会社となりました。国内はキヤノンITソリューションズ、NEC、TIS千代田システムズなどのパートナー経由です。
AVEVA Plant SCADA(旧Citect SCADA)は、System Platformのような統合基盤ではなくプラント監視に絞った単体SCADAです。国内では富士電機が扱い、信号点数の区分が日本語サイトで公開されているため見積もり依頼の精度を上げられます。
iFIX(Proficy HMI/SCADA)は現行出荷版がiFIX 2024で、Proficy Historianと組み合わせて使います。提供元は2026年3月2日にGE VernovaからTPGへの売却が完了し、現在は新会社Veloticです。日本では丸紅アイ・ディ・ソリューションズが取り扱います。
横河電機 FAST/TOOLSはサーバーあたり最大1,600万点という業界最大級の容量を持つ広域分散監視SCADAで、プロセス産業や社会インフラの大規模案件が対象です。公表事例は上下水道・風力・熱エネルギーなど広域インフラが中心で、国内の組立・加工型製造ラインの事例は公開情報からは確認できませんでした。
選定で失敗しやすいポイント
本体価格だけで比較してしまう。見積書に並ぶのはサーバーライセンスだけではなく、クライアント・ヒストリアン・冗長化・通信ドライバ・年間保守が積み上がります。本体が最安の製品が、クライアント台数とヒストリアンを足すと最高になることは珍しくありません。ステップ4の4条件を揃え、5年間の総保有コストで並べたときの順位だけを見ます。
米国の公開価格をそのまま円換算してしまう。AVEVA InTouch HMIは米国向けに永久ライセンス価格(Workstation 1,850ドル、Unlimited Standard 12,360ドル、Unlimited Professional 20,600ドル)を公開していますが、日本は代理店経由の個別見積もりになる可能性が高く、実勢とは一致しません。Ignitionの米本社価格も同様です。日本国内の価格は必ず国内窓口に確認します。
生産中止・提供元変更を見落とす。SCADA領域では2024年以降に再編が続いており、古い情報のまま検討すると問い合わせ先を間違えます。三菱電機のMC Works64は2021年3月に生産中止(Version3のサポートは2024年1月終了、Version4は2028年3月終了予定)です。iFIXを含むProficy事業は2026年3月2日にGE VernovaからTPGへの売却が完了しVeloticとなりましたが、2026年7月時点でも製品サイトにGE Vernova表記が残るなど移行期のズレがあります。旧称で検索すると別製品だと思い込むこともあります。AVEVA Plant SCADAは国内取扱いの富士電機サイトでは今も旧称のCitect SCADA表記で、同一製品だと気づかないまま候補から外してしまうことがあります。三菱電機のGENESISもver.11で「GENESIS64」から名称が簡略化されましたが、FA Web Shopでは今も旧称が併用されています。
国内で入手できない製品を候補に入れてしまう。海外サイトで見つけた製品が国内でも同じように買えるとは限りません。オムロンのCX-Supervisorは欧州・北米の公式サイトには製品ページが現存する一方、日本語公式サイトのどこにも掲載が見当たらず、国内での現行の販売・サポート状況を公開情報から確認できませんでした。海外の製品ページを根拠に候補へ入れる前に、日本語サイトに現行ページがあるかを確認し、無ければ国内窓口へ直接問い合わせる手順を挟むと空振りを防げます。
SCADAではない製品をSCADAとして比較してしまう。Pro-faceのPro-Server EXは、同社自身が「データ収集/データ転送ソフトウェア」に分類しており、Pro-faceの正式なSCADAカテゴリはグループ会社のAVEVA製品が担っています。アズビルのHarmonas-DEOは同社自身が「監視制御システム(DCS)」に分類しており、化学プラント等の連続プロセス制御向けでSCADAとは製品性格が異なります。シュナイダーエレクトリックのEcoStruxure Geo SCADA Expertは水道・電力配電など広域インフラの遠隔監視向けで、製造業向けの訴求はありません。カテゴリを取り違えると、要件に合わない製品に工数を割くことになります。
マスタとタグ設計を後回しにする。SCADAは接続して画面を作れば動きますが、タグの命名規則と設備の階層構造を決めずに構築すると、設備が増えたときに画面の再構築が必要になります。導入前にタグ命名規則・設備階層・アラームの重要度区分を決めておくと、拡張時の手戻りを避けられます。
まとめ
SCADAの選定は、機能比較から入るのではなく、監視点数・既存PLCメーカー・冗長化の要否・端末台数という前提条件を固めることから始めると進みます。前提が揃えば、価格非公開の製品同士でも同じ土俵で見積もりを比べられます。
手順としては、まずHMIやIoTプラットフォームで足りないかを見極め、次に監視点数を現状の1.5〜2倍で概算し、既存PLCのメーカーで候補を絞り、4条件を明示して同時に見積もりを取り、最後に提供元と国内保守体制を確認する流れです。公開価格のある三菱電機GENESIS(75タグ67,100円から)を基準線に置くと、他社の見積もりの妥当性を判断しやすくなります。まず費用をかけずに検証したい場合は、無償75タグライセンスのあるAdvantech WebAccess/SCADAで接続確認から始める方法もあります。
各製品の機能・導入事例・スコアの詳細はSCADA比較10選で、収録製品の一覧はSCADAのカテゴリページでご覧いただけます。
SCADA(設備監視制御システム)のおすすめ製品
三菱電機 GENESIS(旧GENESIS64)
三菱電機株式会社
75タグ約6.7万円から、円建て定価が公開された国内最短経路
- 円建ての定価が公開されており見積もり前に予算感を掴める
- 75タグから始められ中小の1ライン導入に向く
- MELSEC・GOT資産との親和性と国内の日本語保守体制
AVEVA System Platform(旧Wonderware)
AVEVA Group Limited(Schneider Electric傘下)
SCADA・MES・IIoTを1基盤に統合する定番プラットフォーム
- SCADA・MES・IIoTを単一基盤で統合できる
- Historianの高速収集とストレージ削減
- グローバル大手の導入実績が豊富
Ignition
Inductive Automation, LLC
サーバー1本でタグ数・クライアント数が無制限
- タグ・クライアント無制限で拡張時のコストが読みやすい
- 米本社が価格を公開しており予算の当たりを付けやすい
- ローコードで導入後の内製化がしやすい
SIMATIC WinCC Unified
シーメンス株式会社
TIA PortalでPLCから画面まで統合開発、Webクライアント無制限
- TIA PortalでPLCと画面を統合開発でき工数を削減できる
- Webクライアントが接続数無制限
- OPC UA・MQTT・GraphQLによるモダンなIT/OT連携
FactoryTalk View SE
ロックウェル オートメーション ジャパン株式会社
Allen-Bradley PLCと垂直統合された全社規模SCADA
- Allen-Bradley PLC/PACとのネイティブな垂直統合
- View・Historian・MESを束ねた一体アーキテクチャ
- 日本法人による直接の販売・保守体制
iFIX(Proficy HMI/SCADA)
Velotic
提供元がVeloticへ移行、大規模実績を持つ老舗SCADA
- Proficyファミリー(Historian・Plant Applications)との連携実績
- Whirlpoolで300以上の機器・2,000超のポイントを扱う大規模稼働実績
- 事業売却発表時点で20,000以上の顧客基盤
SCADA(設備監視制御システム)比較表
| 製品名 | ベンダー | 価格モデル | 特徴 | |
|---|---|---|---|---|
| 三菱電機 GENESIS(旧GENESIS64) | 三菱電機株式会社 | オンプレミス |
| 詳細を見る |
| AVEVA System Platform(旧Wonderware) | AVEVA Group Limited(Schneider Electric傘下) | サブスクリプション |
| 詳細を見る |
| Ignition | Inductive Automation, LLC | オンプレミス |
| 詳細を見る |
| SIMATIC WinCC Unified | シーメンス株式会社 | 要見積もり |
| 詳細を見る |
| FactoryTalk View SE | ロックウェル オートメーション ジャパン株式会社 | 要見積もり |
| 詳細を見る |
| iFIX(Proficy HMI/SCADA) | Velotic | 要見積もり |
| 詳細を見る |
| EcoStruxure Machine SCADA Expert | シュナイダーエレクトリック株式会社 | 要見積もり |
| 詳細を見る |
| Advantech WebAccess/SCADA | アドバンテック株式会社 | オンプレミス |
| 詳細を見る |
| AVEVA Plant SCADA(旧Citect SCADA) | AVEVA Group Limited(Schneider Electric傘下) | 要見積もり |
| 詳細を見る |
| 横河電機 FAST/TOOLS | 横河電機株式会社 | 要見積もり |
| 詳細を見る |
よくある質問
QSCADAの選定は何から始めればよいですか?
まずHMIやIoTプラットフォームで足りないかを見極めることから始めます。対象が装置1台でその装置のオペレーターが操作できればよいならHMIで足り、データを見るだけで操作が不要ならIoTプラットフォームが候補です。複数ラインや工場全体を対象に、監視しながら設定値変更や起動・停止まで行いたい場合にSCADAが必要になります。切り分けが済んだら、監視点数と端末台数の概算、既存PLCメーカーによる候補の絞り込みへ進みます。
Q監視点数(タグ数)はどう見積もればよいですか?
設備1台あたりの取得項目(稼働状態・温度・圧力・回転数・アラーム接点など)を洗い出し、対象設備数を掛けて積み上げます。重要なのは現状の点数ちょうどで見積もらないことです。設備の増設やデータ収集項目の追加は導入後に必ず発生し、上限を超えると上位ティアへの移行費用がかかります。三菱電機GENESISではタグ追加が+1,000タグ100,100円という単価です(2026年7月時点)。現状の1.5倍から2倍を見込んでティアを選んでおくと追加費用を抑えられます。
Q価格非公開の製品はどう比較すればよいですか?
見積もり依頼の条件を揃えることで比較できます。監視点数(現状の1.5〜2倍)、クライアント台数(常時監視用と現場閲覧用を分けて)、冗長化の有無、ヒストリアン込みか別かの4条件を明示し、複数社へ同時に依頼します。加えて5年間の総保有コストで出してもらうと、初期費用では見えない年間保守の差が並びます。公開価格のある三菱電機GENESIS(75タグ67,100円から)を基準線に置くと、他社の見積もりの妥当性を判断しやすくなります。
QSCADA選定でOTセキュリティはどこまで考慮すべきですか?
調達要件にセキュリティ認証が含まれるかを社内で先に確認しておくと、選定のやり直しを避けられます。産業制御システムの規格ISA/IEC 62443シリーズは2025年に複数パートが更新され、製品側ではSiemens WinCC V8.1がIEC 62443認証を取得済みです。国内では経済産業省が2025年4月に中小規模の製造事業者向けAppendix「工場セキュリティの重要性と始め方」を、2025年10月に「半導体デバイス工場におけるOTセキュリティガイドライン Ver 1.0」を公表しています。
