組込みRTOSのメーカー8社の特徴|シェアの実態と機能安全認証の帰属先
組み込みソフトウェア(組込みOS・RTOS)の主要8社がどんな会社なのかを1社ずつ整理した記事。メーカー別シェアを無償公開している公的機関・業界団体は確認できず、製品単位の売上が分かるのはQNXだけです。提供が終わった製品と名前が変わった製品、そして機能安全認証が別製品に限定されている実態を見ていきます。

組込みRTOSを調べると、商用の製品と無償で使えるものが同じ一覧に並びます。ところが製品名を検索すると、すでに提供が終わっているものや、名前が変わっているものが混ざっています。
この記事では、主要8社がどんな会社なのかを1社ずつ見ていきます。よく検索されるシェアの実態と、この分野で最も間違えやすい機能安全認証の帰属先を会社単位で整理します。
記載内容は、各社の公式サイトと公式のプレスリリース、米国証券取引委員会への提出書類を、編集部が2026年9月24日に確認したものです。認証の表記は公式の原文に沿って記載しています。
- 組込みRTOSのメーカー別シェアを無償で公開している公的機関・業界団体は、編集部が確認した範囲では見つからなかった(2026年9月24日時点)
- Nucleus RTOSは2023年11月に提供が終了しており、現行製品ではない
- 機能安全認証を取得しているのは製品ファミリ全体ではなく、専用の別製品である場合がある
この記事でわかること
組込みRTOSの主要メーカー8社【早見表】
組込みRTOSを手がけているのは、専業のソフトウェアメーカーだけではありません。自動車部品の大手や通信機器のメーカー、NPO法人も提供元になっています。まずは全体像を一覧で押さえます。
- 主要8社のうち、日本に本社を置くのはイー・フォース、イーソル、TOPPERSプロジェクトの3者
- 主要8社のうち2つは無償で使え、うち1つはNPO法人が配布している
- 海外の商用3社は、いずれも日本法人名を公式サイトで確認できなかった
提供元 | 本社 | 製品 | 資本関係 | ライセンス |
|---|---|---|---|---|
Wind River Systems, Inc. | 米国 | VxWorks | Aptiv PLC(2022年12月完了) | 商用 |
BlackBerry Limited | カナダ・ウォータールー | QNX OS(旧QNX Neutrino) | 独立(NYSE・TSX上場) | 商用 |
Green Hills Software LLC | 米カリフォルニア州 | INTEGRITY RTOS | 公式サイトに記載なし | 商用 |
Siemens | ドイツ | Nucleus RTOS | 独立 | 2023年11月に提供終了 |
Amazon Web Services | 米国 | FreeRTOS | Amazonのグループ | MITライセンス |
NPO法人TOPPERSプロジェクト | 日本 | TOPPERS/ASPカーネル | NPO法人(2003年9月設立) | TOPPERSライセンス |
イー・フォース株式会社 | 東京都中央区 | μC3 | 公式サイトに記載なし | 商用 |
イーソル株式会社 | 東京都中野区 | eMCOS POSIX | 東証スタンダード上場 | 商用 |
すでに提供が終わっている製品がある
Nucleus RTOSは、2023年11月に提供が終了しています。Siemensの公式サイトに、SoC向けの単体組込みソフトウェアの提供を終了したと明記されています。
対象はNucleusのほか、Nucleus HypervisorとNucleus ReadyStartです。さらにSokol Flex Linux、Sokol Omni Linux、Sourcery CodeBenchも含まれます。既存の保守契約は引き続き履行されるとも書かれています。
会社名の書き方に注意が必要な会社
μC3を提供するのはイー・フォース株式会社です。株式会社が後ろに付く形なので、前株で書くと誤りになります。
同社のニュースリリースのタイトルでは、中黒のないイーフォース株式会社という表記も使われています。会社概要ページの表記に合わせるのが安全です。
提供元の会社情報が公式に出ていない会社
Wind Riverの公式サイトには、設立年も本社所在地も従業員数も記載がありません。親会社との関係も、フッターのロゴとリンクがあるだけで文章による説明がありません。
Green Hills Softwareも、設立年と従業員数が公式サイトで確認できませんでした。資本構成の記載もないため、非上場かどうかも公式には分かりません。
組込みRTOSのメーカー別シェアと市場規模
8社が並んだところで、どこが最も使われているのかが気になります。ただし組込みRTOSには、無償で確認できるメーカー別のシェアがありません。
- 組込みRTOSのメーカー別シェアを無償公開している公的機関・業界団体は確認できなかった
- 製品単位の売上が公開されているのはQNXだけで、これはセグメント単位の開示による
- 無償で使える2つは、そもそも金額ベースの集計に乗らない
QNXだけは売上が分かる
BlackBerryはQNXを独立した報告セグメントにしています。そのため決算で数値が開示されており、2026年2月28日終了の事業年度で売上高2億6,800万米ドル、前年同期比14%増でした。
調整後EBITDAは7,100万米ドルでマージン26%、調整後売上総利益は2億2,260万米ドルで率83%です。搭載実績は2億7,500万台を超える車両と公表されています。
非自動車の比率も公開されている
QNXは車載のイメージが強い製品ですが、BlackBerryは内訳も開示しています。2026年度時点で、QNXの売上の約20%が自動車以外の組込みシステムから生じていると記載されています。
残る7社は製品単位の売上を開示していません。Wind RiverはAptivの一部門、INTEGRITYは非公開企業の製品で、国内2社も製品別の数値を公開していません。
無償のものは金額に乗らない
FreeRTOSとTOPPERS/ASPカーネルは無償で配布されています。導入されている数は分かりませんが、金額ベースの市場規模には計上されません。
そのため市場規模の数値だけを見ると、実際に使われている割合とずれます。組込みRTOSの分野では、金額と利用実態が一致しない点を踏まえて読む必要があります。
組込みRTOSは製品名と提供元がこの数年で変わっている
この分野を調べていて最も引っかかったのが、製品名と提供元の変化です。古い資料をそのまま使うと、存在しない製品名を書いてしまいます。
- QNX Neutrinoは現行の製品名ではなく、公式ドキュメントは8.0からQNX OSという表記に切り替わっている
- Wind Riverは2022年12月23日にAptivの傘下に入り、取得額は当初の43億米ドルから35億米ドルへ減額された
- Nucleus RTOSの製品ページは消滅し、汎用の組込みソフトウェアのページへ2段階で転送される
QNX Neutrinoという名前は使われていない
公式ドキュメントを世代ごとに見ると、7.1はQNX Neutrino 7.1、8.0はQNX OS 8.0と表記されています。7.1の時点でもRTOSという語は付いていません。
BlackBerryの最新の年次報告書には、QNX Neutrinoという語が1度も出てきません。使われているのはQNX real-time operating systemとQNX Hypervisor for Safetyです。ほかにQNX Software Development Platformが挙げられています。
ただし改称の実施日と、それを告知した公式リリースは確認できませんでした。何年に変わったとは書けない状態です。
Wind Riverは2022年12月にAptivの傘下へ
Aptivが買収を発表したのは2022年1月11日で、当初の取得価額は43億米ドルでした。完了は2022年12月23日で、最終的な取得価額は35億米ドルです。
減額の理由も公式に説明されています。規制当局の承認を得るために必要だったWind Riverの事業構造の変更に伴うものとされています。
その後2025年第3四半期に、Aptivは約6億4,800万米ドルののれん減損を計上しました。割引率の上昇と予測キャッシュフローの減少が理由と説明されています。
Aptivの分割でどうなるか
Aptivは2025年1月22日に、電気配線事業を独立上場会社として分離すると発表しました。新会社の名前はVersigentで、分割は2026年4月1日に完了しています。
Wind Riverは、Advanced Safety and User Experienceというセグメント内の報告単位です。分離の対象は電気配線のセグメントのみで、Wind Riverは別のセグメントに属します。
ただしWind Riverが本体に残ると明示した公式発表は確認できませんでした。セグメントの構成から読み取れる範囲にとどめてください。
商用の組込みRTOSを手がける海外メーカー3社
ここからは会社ごとに見ていきます。まずは商用のRTOSを手がける海外の3社です。
- 3社とも公式サイトに価格の記載がない
- 3社とも日本法人名や日本の代理店名を公式サイトで確認できなかった
- Green Hillsだけが認証の取得状況を製品名つきで詳しく公開している
Wind River Systems, Inc.(VxWorks)
VxWorksは、航空や防衛、産業機器で長く使われてきた商用RTOSです。公式には600を超える安全プログラムで採用されていると記載されています。
認証として挙げられているのはDO-178C、IEC 61508、IEC 62304、ISO 26262です。安全認証版としてVxWorks Cert EditionとVxWorks 653が用意されています。
ただし認証レベルの数値は公式に明示されていません。製品ページにDAL AやSIL、ASILの水準は書かれておらず、顧客事例として引用されているDAL Aの認証は顧客側のシステムに対するものです。
カーネル方式やPOSIX準拠、対応アーキテクチャの一覧も製品ページには載っていません。日本の窓口は問い合わせ用のメールアドレスと地域サイトのみで、法人名の記載がありません。
BlackBerry Limited(QNX OS)
QNX OSは、車載を中心に採用されてきた商用RTOSです。現行はQNX Software Development Platform 8.0として提供されています。汎用向けにはGeneral Embedded Development Platformも用意されています。
BlackBerryはQNXを独立した報告セグメントにしており、売上が開示されています。セグメントにはQNXのほかBlackBerry RadarとCertiComが含まれます。
年次報告書には、出荷台数に応じたロイヤリティと開発シートの収入が記載されています。ランタイムのロイヤリティが存在することは、法定開示から読み取れます。
調べる際に注意したいのがドメインです。qnx.comはqnx.softwareへ転送され、qnx.co.jpはHTTPSで接続できず、HTTPでアクセスすると英語サイトへ飛びます。
Green Hills Software LLC(INTEGRITY RTOS)
INTEGRITY RTOSは、マイクロカーネル方式を採用した商用RTOSです。POSIXとAUTOSARへの標準準拠を公式に掲げています。
対応アーキテクチャの列挙が最も詳しい会社です。ARM Cortex-A、x86、AMD、NXP、Renesasが挙げられています。さらにRISC-V、Texas Instruments、Power Architecture、MIPSも対象です。
認証の記載も詳細です。航空はDO-178B/C DAL A、セキュリティはCommon Criteria EAL 6+と記載されています。産業はEN 50128/50657 SIL 4とIEC 61508 SIL 3です。車載はISO 26262 ASIL DとISO/SAE 21434 CAL 4になります。
ただし記載を読む際に注意が必要です。DAL AとEAL 6+は、括弧書きでINTEGRITY-178 RTOSとINTEGRITY-178 tuMP RTOSという別製品に限定されています。
国内発の組込みRTOSメーカー2社
次は日本の2社です。どちらも日本語で直接やり取りでき、機能安全認証を公式に掲げています。
- 2社ともISO 26262 ASIL Dに関する記載があるが、対象と表現が異なる
- イー・フォースは価格表の存在を示しているが、金額は資料のダウンロードが必要
- イーソルは東証スタンダードに上場しており、売上と従業員数が公開されている
イー・フォース株式会社(μC3)
μC3は、μITRON4.0のスタンダードプロファイルをベースに拡張した国産のRTOSです。公式表記は準拠ではなくベースに拡張なので、引用する際は注意してください。
ラインアップは5つに分かれます。小規模マイコン向けのμC3/Compact、μC3/Standard、μC3/Standard+Mが3つ目までです。ほかにμC3+LinuxとμC3/Standard-Safetyがあります。
機能安全認証を取得しているのはμC3/Standard-Safetyだけです。産業機器向けのIEC 61508 SIL-3と自動車向けのISO 26262 ASIL Dを取得しており、対象コアはARM Cortex-Mになります。
会社は2006年12月1日設立、資本金1,800万円、従業員32名です。価格は公式サイトに表の枠がありますが金額の記載がなく、プロダクトガイドのダウンロードが必要です。
イーソル株式会社(eMCOS POSIX)
eMCOS POSIXは、独立分散型の軽量マイクロカーネルを採用したPOSIX準拠のRTOSです。AUTOSAR Adaptive Platformのライブラリに対応し、Classic Platformの資産も再利用できると記載されています。
特徴はスケーラビリティです。シングルコアの組込み用MCUから最大256コアのメニーコアSoC、さらにマルチチップ構成のハードウェアまで対応すると公式に説明されています。
ISO 26262 ASIL-Dについては、同じページの中でページタイトルが認証取得、本文が準拠となっており表現が揃っていません。意味が違うため、引用する際は公式の表記をそのまま使ってください。
会社は1975年5月設立、資本金10億4,181万円、東証スタンダード上場で証券コードは4420です。連結売上高119億804万円、連結従業員523名になります。
無償で使える組込みRTOS 2つ
最後は無償で使える2つです。どちらも無償ですが、ライセンスの条件と運営の体制がまったく違います。
- FreeRTOSはMITライセンス、TOPPERS/ASPカーネルは独自のTOPPERSライセンス
- TOPPERSライセンスは、バイナリ再配布時にプロジェクトへ報告するという選択肢を含む
- どちらも製品自体の機能安全認証は公式に確認できなかった
Amazon Web Services(FreeRTOS)
FreeRTOSは、AWSがコミュニティのために保守していると公式に記載されています。オープンソースになって20年という表現も使われています。
ライセンスはMITです。あらゆる目的に使えると明記されており、戦略的パートナー経由でのオプションの商用ライセンスも用意されています。
長期サポート版として202604.00-LTSが提供されています。ただし公開日とカーネル単体のバージョン番号は公式に確認できませんでした。
機能安全については注意が必要です。公式サイトはパートナーのエコシステム経由で認証があると述べるにとどまり、FreeRTOS自体が認証を取得しているとは書かれていません。
NPO法人TOPPERSプロジェクト(TOPPERS/ASPカーネル)
TOPPERS/ASPカーネルは、μITRON4.0のスタンダードプロファイルに準拠したTOPPERS/JSPカーネルを拡張・改良して開発されたものです。ASPはAdvanced Standard Profileの略になります。
ここで押さえておきたいのが世代です。TOPPERSは第3世代としてTOPPERS/ASP3カーネルを公開しており、公式の成果物一覧でもASP3が上位に掲載されています。
ライセンスは独自のTOPPERSライセンスです。無償で利用を許諾する一方、バイナリで再配布する場合は付属ドキュメントに表示を掲載するか、プロジェクトへ再配布形態を報告するかを選ぶ形になります。
組織は2003年9月設立のNPO法人です。プロジェクト自体は2000年11月のTOPPERS/JSPカーネル初版の配布が起点で、リーダーは名古屋大学教授の高田広章氏が務めています。
組込みRTOSの機能安全認証は製品名を確認する
この分野で最も間違えやすいのが認証の帰属先です。製品ファミリの名前で認証取得と書かれていても、実際には専用の別製品に限られていることがあります。
- INTEGRITYのDO-178C DAL AとCommon Criteria EAL 6+は、INTEGRITY-178という別製品に限定されている
- μC3のISO 26262 ASIL DとIEC 61508 SIL-3を取得しているのはμC3/Standard-Safetyだけ
- VxWorksは認証規格を列挙しているが、取得レベルの数値は公式に示されていない
括弧書きの製品名を見落とさない
Green Hillsの認証一覧は、規格ごとに対象製品が括弧で示されています。DAL AとEAL 6+の後ろには、INTEGRITY-178 RTOSとINTEGRITY-178 tuMP RTOSと書かれています。
一方でEN 50128 SIL 4やIEC 61508 SIL 3、ISO 26262 ASIL Dには括弧書きがありません。本体と別製品のどちらに紐づくかは、公式ページからは判別できませんでした。
専用のSKUが分かれている場合がある
μC3では、認証取得済みのSKUがμC3/Standard-Safetyとして分かれています。μC3/Standardにリアルタイム検知機能を追加したものと公式に説明されています。
なお医療機器向けのIEC 62304 Class Cは取得予定という表記です。取得済みではないため、対応と書くことはできません。
認証取得と準拠は意味が違う
イーソルのeMCOS POSIXでは、同じページの中で認証取得と準拠という2つの表現が使われています。第三者機関による認証を受けたのか、規格に沿って作られているのかで意味が変わります。
社内資料に書く際は、公式の表記をそのまま引用してください。自分で言い換えると、事実と異なる説明になる可能性があります。
組込みRTOSのメーカーが想定している企業規模
同じ組込みRTOSでも、導入の前提は会社ごとに違います。認証が要るかどうかと、日本語でのやり取りが要るかどうかが分かれ目になります。
- 試作や学習から始めるならFreeRTOSとTOPPERS/ASPカーネルが無償で使える
- 機能安全認証が必要ならGreen Hills、イー・フォース、イーソルが認証取得を公式に示している
- 日本語で直接やり取りしたいなら、国内2社かTOPPERSプロジェクトが候補になる
小さく始めやすい選択肢
FreeRTOSはMITライセンスで、あらゆる目的に使えます。TOPPERS/ASPカーネルも無償で、日本語のドキュメントが揃っています。
ただし無償であっても、設定と検証を自社で担う必要があります。サポートを受けるには、有償で支援する会社と契約する形になります。
認証が必要な会社
認証を必要とする開発なら、対象製品を先に確認してください。Green HillsのINTEGRITY-178、イー・フォースのμC3/Standard-Safetyが候補です。イーソルのeMCOS POSIXも認証を掲げています。
ただし認証は取得していれば済むものではありません。μC3/Standard-Safetyには、セイフティガイドに沿った開発が必要という制約が公式に示されています。
日本語でのやり取りが必要な会社
海外の商用3社は、日本法人名も代理店名も公式サイトで確認できませんでした。Green Hillsは日本のサポートが米国の窓口に割り当てられ、日本語対応と注記されるのみです。
その点で国内2社は分かりやすい相手です。イー・フォースは従業員32名と小規模、イーソルは東証スタンダード上場で連結523名と、規模も対照的になります。
組込みRTOSを調べるときの注意点
最後に、調べる過程で引っかかりやすい点を整理します。この分野は製品名と組織名の両方で誤りが混ざりやすくなっています。
- 提供が終わった製品の販促資料が、公式のCDN上に残っている
- 公式の年次報告書の中で、事業区分の数の記述が食い違っている
- 日本語のドメインがHTTPSで接続できず、英語サイトへ転送される製品がある
終了した製品の資料が残っている
Nucleus RTOSの製品ページは消滅していますが、SiemensのCDN上にはファクトシートのPDFが複数のリビジョンで残っています。いずれも提供終了前の販促資料です。
検索でこれらのPDFに行き着くことがありますが、現行製品の根拠として引用できません。終了の告知は、汎用の組込みソフトウェアのページに置かれています。
公式の開示の中でも記述が揃わない
BlackBerryの年次報告書は、同じ項目の中で2つのコア部門と3つの部門という記述が併存しています。財務諸表の注記では3つの報告セグメントとされています。
会計上の区分としては3つが正しい扱いです。2部門とだけ書くと、ライセンス事業が抜け落ちます。
日本向けのページが機能していない
qnx.co.jpはHTTPSで接続できず、HTTPでアクセスすると英語のグローバルサイトへ転送されます。日本語の製品情報が公式に提供されていない状態です。
windriver.co.jpに至っては、DNSにAレコードがなくドメインが稼働していません。社内資料のリンクは確認しておいてください。
提供元の会社情報は別の場所で確認する
Wind Riverの資本関係は、同社の公式サイトではなくAptivの証券取引委員会への提出書類で確認できます。製品サイトだけを見ても、親会社の説明にたどり着けません。
イーソルも、採用サイトに置かれた会社概要のPDFが複数世代で残っています。売上高や従業員数を引用する際は、会社概要ページの数値を使ってください。
まとめ|組込みRTOSメーカーの全体像
組込みRTOSのメーカー別シェアは、無償で確認できる公的な数値がありません。製品単位の売上が分かるのはQNXだけで、これはBlackBerryが独立した報告セグメントにしているためです。
製品名と提供元はこの数年で動きました。QNX Neutrinoは現行の名前ではなくQNX OSに変わっています。Wind Riverは2022年12月にAptivの傘下へ入り、Nucleus RTOSは2023年11月に提供を終えました。
最も注意したいのが機能安全認証の帰属先です。INTEGRITYのDAL AとEAL 6+は、INTEGRITY-178という別製品に限定されています。μC3のASIL DとSIL-3も、μC3/Standard-Safetyという専用SKUだけです。
日本での窓口は国内勢が明確です。海外の商用3社は日本法人名も代理店名も公式サイトで確認できず、総代理店と書ける製品は1つもありませんでした。
組み込みソフトウェア(組込みOS・RTOS)のおすすめ製品
QNX Neutrino RTOS
BlackBerry QNX
高信頼マイクロカーネルの商用RTOS
FreeRTOS
Amazon Web Services (AWS)
40超アーキテクチャ対応のオープンソースRTOS
VxWorks
ウインドリバー(Wind River)
産業・航空で実績豊富な商用RTOS
TOPPERS/ASPカーネル
NPO法人TOPPERSプロジェクト
無償利用できるオープンソースRTOS
μC3(マイクロC3)
イー・フォース株式会社
省メモリに強い国産組込みRTOS
eMCOS POSIX
イーソル株式会社
日本発のメニーコア対応RTOS
組み込みソフトウェア(組込みOS・RTOS)比較表
| ロゴ | 製品名 | ベンダー | 価格モデル | 特徴 | |
|---|---|---|---|---|---|
| QNX Neutrino RTOS | BlackBerry QNX | 要見積もり | 高信頼マイクロカーネルの商用RTOS | 詳細を見る | |
| FreeRTOS | Amazon Web Services (AWS) | オンプレミス | 40超アーキテクチャ対応のオープンソースRTOS | 詳細を見る | |
| VxWorks | ウインドリバー(Wind River) | 要見積もり | 産業・航空で実績豊富な商用RTOS | 詳細を見る | |
| TOPPERS/ASPカーネル | NPO法人TOPPERSプロジェクト | オンプレミス | 無償利用できるオープンソースRTOS | 詳細を見る | |
| μC3(マイクロC3) | イー・フォース株式会社 | オンプレミス | 省メモリに強い国産組込みRTOS | 詳細を見る | |
| eMCOS POSIX | イーソル株式会社 | 要見積もり | 日本発のメニーコア対応RTOS | 詳細を見る | |
| INTEGRITY RTOS | Green Hills Software | 要見積もり | 高安全性領域で選ばれるハードリアルタイムRTOS | 詳細を見る | |
| Nucleus RTOS(2023年11月に新規販売終了) | シーメンスデジタルインダストリーズソフトウェア | 要見積もり | 長い市場実績を持つ定番組み込みRTOS | 詳細を見る |
よくある質問
Q組込みRTOSの主要メーカーはどこですか?
商用では海外3社が中心で、Wind River Systems, Inc.(VxWorks)、BlackBerry LimitedのQNX部門(QNX OS)、Green Hills Software LLC(INTEGRITY RTOS)です。国内はイー・フォース株式会社(μC3)とイーソル株式会社(eMCOS POSIX)の2社になります。無償で使えるのはAmazon Web Servicesが保守するFreeRTOSと、NPO法人TOPPERSプロジェクトのTOPPERS/ASPカーネルです。なおSiemensのNucleus RTOSは2023年11月に提供が終了しています。
QQNX Neutrino RTOSという名前は今も使われていますか?
現行の製品名ではありません。公式ドキュメントは7.1が「QNX Neutrino 7.1」、8.0が「QNX OS 8.0」と表記されており、8.0で名称が切り替わっています。7.1の時点でもRTOSという語は付いていません。BlackBerryの最新の年次報告書にはQNX Neutrinoという語が1度も出てきません。記事や社内資料では「QNX OS(旧称 QNX Neutrino)」または「QNX SDP 8.0」と書くのが正確です。なお改称の実施日と告知リリースは確認できませんでした。
QNucleus RTOSはまだ使えますか?
2023年11月に提供が終了しています。Siemens公式に、SoC向けの単体組込みソフトウェアの提供を終了したと明記されており、対象にはNucleus、Nucleus Hypervisor、Nucleus ReadyStart、Sokol Flex Linux、Sokol Omni Linux、Sourcery CodeBenchが含まれます。既存の保守契約は引き続き履行されるとされていますが、サポートの終了期限は公式に示されていません。専用の製品ページも消滅し、汎用の組込みソフトウェアのページへ転送されます。
QμC3はISO 26262 ASIL Dの認証を取得していますか?
取得しているのはμC3/Standard-Safetyという専用の製品です。μC3ファミリ全体ではありません。μC3/Standardにリアルタイム検知機能を追加したもので、産業機器向けのIEC 61508 SIL-3と自動車向けのISO 26262 ASIL Dを取得しています。対象コアはARM Cortex-Mです。医療機器向けのIEC 62304 Class Cは公式表記が「取得予定」であり取得済みではありません。なお開発にはセイフティガイドに沿うことが必要と公式に示されています。
Q組込みRTOSの日本語サポートはどこで受けられますか?
海外の商用3社は、日本法人名も代理店名も公式サイトで確認できませんでした。Wind Riverは問い合わせ用メールアドレスと地域サイトのみ、Green Hillsは日本の技術サポートが米国の窓口に割り当てられ「日本語対応」と注記されるのみです。QNXについては、日本語ドメインがHTTPSで接続できずHTTPでは英語サイトへ転送されます。日本語で直接やり取りするなら、イー・フォース、イーソル、TOPPERSプロジェクトが確実です。
