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用語解説#音響解析#NVH#騒音

音響解析とは?基礎知識やできること、選び方までをわかりやすく解説!

音響解析とは、製品が発する音や騒音の伝わり方を計算し、試作前に予測・低減する技術です。NVHでの役割、有限要素法(FEM)と境界要素法(BEM)の使い分け、振動音響連成、メリット・デメリット、構造解析との違い、向いている企業までを解説します。

製造業のシステム選定担当者ITトレンド編集部
音響解析とは?基礎知識やできること、選び方までをわかりやすく解説!

音響解析とは、製品が発する音や騒音、音の伝わり方をコンピュータ上で計算し、試作前に予測・低減する技術です。空気や物体の中を伝わる音波の挙動を数値で求め、どこからどんな音が出てどう広がるかを設計段階で把握します。

設計を変えるたびに、試作と測定をやり直していませんか。実測だけでは、騒音の原因を切り分けにくいこともあるでしょう。この記事では、基礎知識からメリット・デメリット、主な機能、費用相場、向いている企業までを整理しました。

  • できること:音圧の分布や周波数ごとの音の強さを求め、騒音の発生源と対策の効果を試作前に見積もれます。
  • 計算手法:閉じた空間の音に強い有限要素法(FEM)と、外部への放射音を効率よく解ける境界要素法(BEM)を使い分けます。
  • 振動音響連成:構造の振動が音を生み、音が構造を揺らす相互作用まで扱えます。
  • 費用の目安:ソフトの多くは、ライセンス形態やモジュール構成で変わる見積もり制です。

騒音や音質が製品の評価に直結する開発ほど、効果が出やすくなります。まず問題の音が内部の音か外部放射音かを見極め、実測と突き合わせながら対象を絞って始めましょう。


この記事でわかること

01

音響解析とは

音響解析は、機械の運転音やファンの風切り音、スピーカーの音質まで扱う解析です。この解析が答えるのは、「どんな音を出し、どうすれば抑えられるか」という設計者の問いです。ここでは、何を計算するのか、NVHでの役割、振動とあわせて扱う理由を押さえます。

音の伝わり方を計算で予測する技術

音響解析は、音波が空気や物体の中をどう伝わるかを計算する解析です。製品が発する音の大きさや質、伝わり方を数値で求めます。得られるのは、音圧の分布、周波数ごとの音の強さ、放射の方向と量といった情報です。

色分けされた音圧の分布図を見れば、どこから音が出てどう広がるかが一目で分かります。音は耳で聞くまで分かりにくい現象ですが、可視化によって設計段階から扱えるようになります。対策すべき箇所の見当もつけやすくなるでしょう。

NVHにおける音響解析の役割

自動車や機械の開発では、音響解析はNVHの枠組みの中で使われます。NVHは、Noise(騒音)、Vibration(振動)、Harshnessの頭文字です。Harshnessは、段差を越えたときのような瞬間的で不快な衝撃感を指します。音響解析が担うのは、このうち音にまつわる部分です。

電動化が進んだ自動車では、エンジン音がないぶん、モーター音や風切り音がかえって目立ちます。家電や空調でも、静かさが選ばれる理由になる場面が増えました。音響解析の役割は、以前より大きくなっているといえるでしょう。

騒音の多くは構造の振動から生まれる

多くの騒音は、構造の振動が空気を揺らして音になる形で発生します。エンジンや機械の振動が車体や筐体を揺らし、その表面から音が放射されるためです。音だけ、振動だけを別々に見ても、原因にはたどり着けません。

そのため音響解析は、振動を扱う構造解析と組み合わせて使われることが多くあります。問題の音がどの周波数帯にあるかを切り分けることも欠かせません。低い周波数は構造側の対策、高い周波数は吸音・遮音の対策が効きやすいためです。

編集部メモ:成否を分けるのは、ソフトの機能より「振動と音をつなげて考えられるか」です。実測と突き合わせて結果を確かめる体制があるかも、同じくらい重要になります。


02

音響解析のメリット

音響解析のメリットは、試作前に製品の音を予測し、対策の効果を見積もれる点から生まれます。開発の期間やコストだけでなく、製品の静かさそのものの向上にもつながります。

  • 試作と実測の回数を減らせる
  • 騒音対策を効く箇所に絞り込める
  • 設計初期から音を作り込める

試作と実測の回数を減らせる

形状や材料、防音材の配置を変えながら、何度でも計算し直せます。実測中心の開発では、設計を変えるたびに試作と測定をやり直す必要がありました。騒音の原因を切り分けにくいのも、実測だけに頼る難点です。解析なら、実測では試しにくい多くの案を画面上で比べられます。

試作の回数が減れば、開発期間とコストを圧縮できるでしょう。試作や実測に費用と時間がかかる製品ほど、この差は大きく表れます。どの対策が効くかを試作前に見極められる安心感も、担当者には大きいはずです。

騒音対策を効く箇所に絞り込める

騒音の発生源を解析で特定できれば、やみくもに防音材を増やす必要がありません。効く箇所に絞って対策できるため、重量やコストの増加も抑えられます。騒音を抑えつつ、必要な性能や軽さを保つバランスを検討できるのも利点です。

問題の音がどの周波数帯にあるかも、解析で切り分けられます。構造側で対処すべきか、吸音・遮音で対処すべきかの方針が立つでしょう。原因に合った対策を選べるので、対策を打っても効かないという空振りが減ります。

設計初期から音を作り込める

電動化や静音化の要求は、年々強まっています。設計初期から音を作り込めることは、競争力にも直結します。同じ性能でも、静かでなめらかな運転音の製品は高く評価されるためです。

形状を決める段階で音を確認できれば、試作後の大きな設計変更も避けやすくなります。スピーカーや排気系なら、どんな音質になるかも事前に検討できます。騒音を減らすだけでなく、音の質まで狙って設計できる点が魅力でしょう。


03

音響解析のデメリット

音響解析は、導入すれば自動的に正しい答えが出るものではありません。つまずきやすい点は3つあり、いずれも進め方で手を打てます。対処法とあわせて押さえておきましょう。

  • 設定しだいで結果が実態とずれる
  • 解析を扱える人材と体制が要る
  • 高い周波数ほど計算負荷が増す

設定しだいで結果が実態とずれる

結果は、メッシュの細かさ、材料の音響特性のデータ、境界条件の設定で変わります。扱う周波数帯に対してメッシュが粗ければ、正しく解けません。連成を無視すべきでない場面で片方向だけ解くと、実際の騒音とずれます。

対処法:解析と実測を補完的に使ってください。解析で騒音の原因の仮説を立て、実測で検証します。ずれがあれば材料データやモデルを見直し、この往復で精度を高めていきます。

解析を扱える人材と体制が要る

解析の前提や手法を理解した担当者がいないと、結果の妥当性を判断できません。材料の音響特性のデータを整備する手間もかかります。ソフトを買っただけでは、効果は出にくいと考えてください。

対処法:最初から広い周波数帯や複雑な連成に挑まず、対象を絞って始めます。社内で精度を確かめながら、適用範囲を広げましょう。体制が整うまでは、外部の解析サービスで効果を確かめる方法もあります。

高い周波数ほど計算負荷が増す

要素の細かさは、扱う周波数で決まります。高い周波数ほど音の波長が短くなり、より細かいメッシュが必要です。高周波の騒音まで扱おうとすると、計算負荷が急に増えます。

対処法:対象とする周波数帯を見極めてから、手法を選んでください。高い周波数には、統計的エネルギー解析(SEA)という統計的な手法を使う選択肢があります。周波数帯ごとに手法を使い分けると、計算を現実的な規模に収められます。


04

音響解析の主な機能

音響解析ソフトの中心になるのは、次の4つの機能です。どの手法と連成に対応しているかが、製品を比べるときの軸にもなります。

  • 有限要素法(FEM)による音場解析:閉じた空間の中の音を、空間を要素に分割して解く
  • 境界要素法(BEM)による放射音解析:物体の表面だけをモデル化し、外へ広がる音を解く
  • 振動音響連成解析:構造の振動と音の相互作用をまとめて解く
  • 結果の可視化:音圧の分布や周波数ごとの音の強さを、分布図などで示す

それぞれの中身を見ていきましょう。

有限要素法(FEM)による音場解析

音が伝わる空間そのものを、細かな要素に分割して解く手法です。車室内や配管内のように、閉じた空間の中の音場を扱うのに向いています。空間を要素で埋めるため、内部の音の分布を細かく求められます。

一方で、解析する空間が広いほど要素の数が増え、モデルが大きくなりがちです。構造解析と同じFEMの枠組みで扱えるため、振動と音の連成を組み込みやすい特徴もあります。要素の細かさは、扱う周波数に応じて決めます。

境界要素法(BEM)による放射音解析

空間ではなく、物体の表面(境界)だけを要素に分割して解く手法です。機械の表面から外へ放射される音のように、開いた空間へ広がる音を効率よく扱えます。空間全体をモデル化しないため、外部放射音の解析を簡素にできます。

ただし、計算で扱う行列がFEMより密になり、規模が大きいと負荷が高くなりやすい点に注意が必要です。実際の開発では、内部の音をFEM、外部への放射をBEMで解く連携も行われます。解く問題の性質に応じて、両者を使い分けるのが基本です。

振動音響連成解析

構造の振動が周囲の空気を揺らして音を生み、逆に音の圧力が構造を揺らします。この両方向の作用を、まとめて解く機能です。例えば密閉された空間では、内部の音圧がパネルを押し返し、振動に影響します。

多くの音響解析ソフトは、構造解析の結果を取り込んで連成を解く機能を備えています。連成の扱いやすさや対応範囲には、製品ごとに差があるのが実情です。多孔質の吸音材や、空気の流れが生む空力騒音まで扱える製品もあります。

結果の可視化

計算で得た音圧の分布や周波数ごとの音の強さを、目で見て分かる形に表示する機能です。音がどの方向にどれだけ放射されるかも確認できます。色分けされた音圧の分布図で、音の出どころと広がり方を一目でつかめる点が特徴です。

形状や材料を変えた複数の案の結果を並べれば、どの対策が効くかを比べられます。騒音の大きい箇所を特定し、防音材をどこに入れれば効果が高いかを検討する材料になります。


05

音響解析の主な活用場面

音響解析が使われるのは、音を出す・音を扱うものづくり全般です。担当する製品と立場によって、解きたい音の問題が変わります。代表的な3つの場面を見ていきましょう。

自動車・輸送機器のNVH開発

自動車や輸送機器のNVH担当者が、車室内の静かさと乗り心地を作り込む場面です。車室内のように密閉された空間の音は、車体の振動と強く影響し合います。そのため、振動音響連成を考えないと予測を誤りやすくなります。

電動化した車両では、モーター音や風切り音への対策も求められるようになりました。航空宇宙のNVH開発でも、音響解析は使われています。低い周波数から高い周波数まで、周波数帯に応じて手法を使い分けるのが一般的です。

産業機械・家電・空調の静音化

産業機械やファン・ポンプ、家電、空調の設計担当者が、運転音を下げる場面です。静かさが製品を選ぶ理由になる分野では、騒音の低減が開発テーマの中心になります。筐体の表面から外へ放射される音の検討には、境界要素法が向いています。

求められるのは、騒音を抑えつつ性能や軽さを保つバランスです。防音材を足すだけでは、重量やコストが増えてしまいます。発生源と周波数帯を解析で切り分け、効く箇所に絞って対策を打つことになるでしょう。

音響機器・医療機器の音の設計

スピーカーや音響機器の設計者が、狙った音質を実現する場面です。騒音を消すのではなく、どんな音を出すかを作り込む点が、他の用途との違いです。医療機器の開発でも、音響解析は使われます。

音響に加えて、熱や電磁などの物理現象も組み合わせて解きたい製品もあるでしょう。その場合は、多物理連成に強い汎用のシミュレーションソフトが候補になります。研究開発や試作評価で、幅広い条件を試す使い方が中心です。


06

音響解析の費用相場

音響解析ソフトの価格は、ライセンス形態やモジュール構成で大きく変わります。代表的な製品の多くは見積もり制で、公開された定価から相場を示すのは難しいのが実情です。導入時には、ソフトの費用に加えて材料データの整備や担当者の教育も含めて計画してください。

製品ごとの条件は、ITトレンドの音響解析ソフトカテゴリで比較できます。主要製品の特徴は、音響解析ソフトの比較記事で整理しています。


07

音響解析と構造解析の違い

音響解析と最も混同しやすいのが、振動を扱う構造解析です。どちらも騒音対策に使われますが、計算する対象と効く対策が違います。

観点

音響解析

構造解析

計算するもの

音圧の分布、周波数ごとの音の強さ、放射の方向

構造の振動(揺れ方)

モデル化する対象

音が伝わる空間や、物体の表面

車体・筐体・パネルなどの構造

主な計算手法

FEM(閉じた空間)とBEM(外部放射)

FEM

効きやすい騒音対策

吸音材・遮音材の配置(高い周波数の音)

剛性の向上や振動源の抑制(低い周波数の音)

騒音との関係

空気を伝わる音そのものを求める

音の発生源となる振動を求める

両者は競合するものではなく、組み合わせて使うのが基本です。多くの騒音は構造の振動から生まれるため、音響だけを単独で解いても原因にたどり着けません。車室内や薄いパネルのように、構造と音が強く影響し合う製品では両者を連成させて解きます。

一方、構造が十分に重く硬い場合は、振動から音への一方向だけを考える近似で足りる場面もあります。連成解析を行うなら、両方の手法に対応した環境かを確かめてください。構造解析ソフトは、ITトレンドの構造解析ソフトカテゴリで比較できます。


08

音響解析の導入が向いている企業・向いていない企業

音響解析が効くかは、業種より騒音の重要度や実測の難しさ、検討の繰り返しの多さで決まります。解きたい騒音の課題が先にあるかが分かれ目です。自社がどちらに当てはまるかを確かめてください。

音響解析の導入が向いている企業

騒音や音質が、顧客の評価や規制に関わる製品を開発する企業です。自動車や輸送機器のNVH、産業機械の騒音低減、家電や空調の静音化などが当てはまります。試作前に発生源と対策を検討できる価値が大きいためです。

試作や実測に費用と時間がかかる企業も向いています。構造が複雑で、実測だけでは原因を切り分けにくい製品も同様です。静音化や音質の作り込みを繰り返し検討したい企業ほど、何度も案を比べられる恩恵を受けやすいでしょう。

音響解析の導入が向いていない企業

製品が出す音がほとんど問題にならない、あるいは騒音の要求が緩い企業です。音響解析に投資しても、効果が出にくい場合があります。試作が安価で短期間にでき、実測で十分に確かめられるなら、実測中心のほうが速いでしょう。

材料データの整備や、解析を扱う人材の育成に手が回らない企業も慎重に考えるべきです。その場合は、まず一部の検討を外部の解析サービスで試してください。効果を確かめてから内製化を考えるほうが、過剰投資を避けられます。


09

まとめ

音響解析とは、製品が出す音や騒音の伝わり方を計算し、試作前に予測・低減する技術です。NVHの一部として使われ、構造解析と組み合わせて騒音の発生源から対策までを検討します。

最初に見極めるのは、問題の音が閉じた空間の音か、外部への放射音かです。前者は有限要素法(FEM)、後者は境界要素法(BEM)が基本で、振動音響連成の要否も確かめます。

一方で、メッシュや材料データの設定しだいで結果は実態とずれます。実測と突き合わせ、対象を絞って始めてください。製品ごとの対応手法は音響解析ソフトカテゴリで比較できます。

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よくある質問

Q音響解析とは何ですか?
A

音響解析とは、製品や空間が発する音・騒音の伝わり方を数値計算で予測する技術です。自動車・家電・産業機器などのNVH(騒音・振動・ハーシュネス)対策に使われ、試作前に静粛性を評価できます。

Q有限要素法(FEM)と境界要素法(BEM)はどう使い分けますか?
A

FEMは閉じた空間内(車室内など)の音場に向き、BEMは外部に放射する音(機器の外部放射音など)の解析に向きます。対象が内部音場か外部放射かで適した手法が変わり、両者を組み合わせることもあります。

Q振動音響連成とは何ですか?
A

構造の振動が空気を伝わって音になる現象を、振動解析と音響解析を連成させて評価する手法です。多くの製品の騒音は構造振動が発生源のため、振動と音響を結び付けて解くことで実態に近い予測ができます。

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