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選び方・ノウハウ#プロセスシミュレーション#プロセス解析#化学プラント

プロセスシミュレーションとは|化学プラントでの役割と定常・動的解析の違いを整理

化学プラントの工程をモデル化し物質・熱収支を解く技術の定義と、定常/動的の使い分け・物性推算の要点、導入効果や向く企業までを解説した用語解説記事。

製造業のシステム選定担当者ITトレンド編集部

プロセスシミュレーションとは、化学プラントや石油精製・ガス処理などのプロセス産業で、反応・蒸留・熱交換といった一連の工程をコンピュータ上のモデルで再現し、温度・圧力・流量・組成などの状態量を計算する技術です。実際に設備を動かす前に、物質収支・熱収支を解いて装置の仕様や運転条件を検討できるため、設計の精度を上げながら試作や試運転のコストを抑える目的で使われます。

ただし「プロセスシミュレーション」という言葉は、定常状態を扱う設計用途と、時間変化を扱う運転・制御用途で意味する範囲が変わります。物性推算やモデルの収束といった、表からは見えにくい前提も結果の信頼性を左右します。この記事では、プロセスシミュレーションの定義から、化学プラント・プロセス産業での役割、定常シミュレーションと動的シミュレーションの違い、物性推算の重要性、導入で得られる効果、そして向いている企業・向いていない企業までを整理します。

結論:プロセスシミュレーションとは、化学プラントの工程をモデル化し物質・熱収支を解く技術で、定常解析は設計や能力検討、動的解析は起動停止や制御の検証に使い分けます。計算結果の信頼性は物性推算(熱力学モデルの選定)に大きく依存するため、自社が扱う流体に合った物性データと手法を選べるかが導入の要点です。蒸留・反応を含むプラント設計や能力増強を継続的に行う企業ほど効果が出やすく、単発の概算検討だけなら表計算で足りる場合もあります。


この記事でわかること

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プロセスシミュレーションとは

プロセスシミュレーションは、原料が製品になるまでの化学プロセス全体を、装置単位のモデルをつないだフローシート(プロセスフロー図に対応する計算モデル)として表現し、各装置の出入りの物質量とエネルギー量を矛盾なく解く仕組みです。蒸留塔・反応器・熱交換器・ポンプ・圧縮機といった単位操作(ユニットオペレーション)それぞれに計算モデルが用意されており、それらを配管でつなぐように接続して、プラント全体の挙動を求めます。英語ではProcess Simulationと呼ばれ、その計算を行うソフトウェアはプロセスシミュレーターと呼ばれます。

ここで中心になるのが、物質収支と熱収支の計算です。たとえば反応器に入った原料がどれだけ反応し、どんな組成のガスや液体になって出ていくか、蒸留塔で何段かけて何%まで分離できるか、その分離に必要な熱量はいくらか、といった問いに数値で答えます。これらの計算には、各成分の沸点・蒸気圧・密度・比熱などの物性値と、混合物の気液平衡を記述する熱力学モデルが必要になります。つまりプロセスシミュレーションは、装置モデルと物性データの両方がそろって初めて成立する技術です。

混同しやすいのが、CFD(数値流体力学)との違いです。CFDは一つの装置内部の流れや温度分布を、空間を細かく区切って詳細に解く技術で、たとえば反応器内の混合状態や配管の偏流を見るのに使います。これに対しプロセスシミュレーションは、装置の中身を細かく解くのではなく、装置を出入りする物質と熱の収支をプラント全体でつなげて解きます。設備内部の局所現象を見たいならCFD、プラント全体の能力や運転条件を見たいならプロセスシミュレーション、と役割が分かれます。両者を併用し、CFDで得た知見を装置モデルに反映する使い方もあります。


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化学プラント・プロセス産業での役割

プロセスシミュレーションが最も使われるのは、化学・石油精製・天然ガス処理・石油化学といったプロセス産業です。これらの産業では、設備が大型で投資額が大きく、いったん建設すると簡単には作り直せないため、設計段階で挙動を見通しておく価値が特に高くなります。

役割は、プラントのライフサイクルに沿って広がります。新設プラントの基本設計では、原料と目標製品から逆算して、蒸留塔の段数や還流比、反応器の容量、熱交換器の伝熱面積といった装置仕様を決める根拠になります。既存プラントでは、能力増強(デボトルネッキング)の検討に使われ、生産量を上げたときにどの装置が先に限界に達するか、配管や塔がボトルネックにならないかを事前に確認できます。さらに、原料の切り替えや製品規格の変更といった運転条件の見直しでも、変更後の収支や分離性能を試算する手段になります。

もう一つの役割が、省エネルギー・脱炭素の検討です。プラント全体の熱の流れをモデル化することで、排熱を別の工程で再利用する熱回収(ピンチ解析と組み合わせる)や、ユーティリティ消費の削減効果を数値で評価できます。二酸化炭素回収やアンモニア・水素関連プロセスの設計でも使われ、新しいプロセスの成立性を実機を作る前に検討する場面が増えています。こうした検討を表計算や手計算で行うと、物性の非線形性や気液平衡の扱いが煩雑になり、精度の確保が難しくなります。プロセスシミュレーターは、この物性計算と収束計算を内部で処理してくれる点に役割があります。


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定常シミュレーションと動的シミュレーションの違い

プロセスシミュレーションは、時間の扱い方によって定常シミュレーションと動的シミュレーションに分かれます。両者は目的が異なり、設計の段階や知りたい内容によって使い分けます。

定常シミュレーション(Steady State)は、プラントが安定して運転を続けている状態、つまり各装置の入出力が時間的に変化しない状態を計算します。新設の基本設計や能力検討の大半はこちらで行います。「この原料を入れ続けたとき、最終的にどんな組成・流量・温度の製品が、どれだけのエネルギーで得られるか」という、落ち着いた状態の答えを出すのが定常解析です。代表的なものでは、AspenTechのAspen Plusが定常の精緻なプロセスモデリングを得意とし、石油・ガス分野ではAspen HYSYSが広く使われます。AVEVA PRO/IIも定常状態の信頼性の高いシミュレーターとして、精製から化学まで幅広いプロセスに用いられます。

動的シミュレーション(Dynamic)は、時間とともに状態が変わる過渡的な挙動を計算します。プラントの起動・停止、原料組成の急変、機器のトリップといった、定常では捉えられない「変化の過程」を見るのが目的です。たとえば、ある操作量を変えたときに塔内の温度や圧力がどう応答し、何分で新しい状態に落ち着くか、安全弁が作動するかといった検討に使います。Aspen HYSYS Dynamicsのように制御系のモデル化と動的解析を備えた機能があり、運転条件の変化に対する系の応答を調べる用途に向きます。Aspen PlusもAspen Plus Dynamicsという追加モジュールで動的解析に対応します。

使い分けの目安は明確です。装置仕様や能力、定常の物質・熱収支を知りたいなら定常シミュレーションで足ります。一方、制御ループの設計、起動停止手順の検証、安全性評価(リリーフ系の検討)、オペレータ訓練用シミュレーターの構築など、時間応答が問われる場面では動的シミュレーションが必要になります。動的解析は定常モデルを土台に構築することが多く、まず定常で設計を固め、必要に応じて動的に拡張する流れが一般的です。ただし動的モデルは構築や収束の難易度が上がり、機器の容量や制御パラメータといった追加の入力も増えるため、目的が運転・制御の検証に明確に向いている場合に取り組むのが現実的です。


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物性推算の重要性

プロセスシミュレーションの結果は、物性推算の精度に大きく左右されます。装置モデルがどれだけ精緻でも、混合物の気液平衡や物性値が実態とずれていれば、分離性能や収支の計算は外れます。物性推算は、シミュレーション結果の信頼性を決める土台です。

物性推算とは、各成分の沸点・蒸気圧・密度・比熱・粘度などの純成分物性と、混合したときの気液平衡や活量を、熱力学モデル(状態方程式や活量係数モデル)を使って計算することです。どのモデルを選ぶかで、同じプラントでも計算結果が変わります。たとえば、炭化水素のように比較的理想に近い系には状態方程式系のモデルが、極性の強い溶液や電解質を含む系には活量係数系や電解質対応のモデルが適し、選択を誤ると蒸留の分離点や反応の平衡が実態とずれます。プロセスシミュレーターが大規模な物性データベースを内蔵しているのはこのためで、Aspen Plusは扱える成分や物性データの範囲が広く、非定型の物質を扱う際に選ばれることがあります。

注意したいのは、データベースにすべての物質や条件が網羅されているわけではない点です。新規化合物や特殊な混合系では、文献値や実測の物性データを補い、モデルのパラメータを自社の系に合わせて調整する作業(パラメータ回帰)が必要になることがあります。この物性整備は手間がかかり、導入後に想定外の負荷になりやすい部分です。逆に言えば、自社が扱う流体に合った物性手法とデータがそろっているかどうかが、製品選定の重要な判断材料になります。動的解析やコスト評価といった上位の機能に目が行きがちですが、物性推算の適合性を最初に確認しておかないと、計算結果そのものが使えないという事態になりかねません。


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プロセスシミュレーション導入で得られる効果

プロセスシミュレーションを導入する主な効果は、設計の精度向上とコスト・リスクの低減です。ただし効果の大きさは、検討の頻度や扱うプロセスの複雑さによって変わります。

最も直接的な効果は、実機を作る前に挙動を見通せることです。装置仕様を計算で詰められるため、過大設計や能力不足を避けやすくなり、試作や試運転のやり直しを減らせます。複数の運転条件や装置構成を画面上で比較できるので、案を物理的に試すよりはるかに速く・安く検討を回せます。能力増強の検討では、どの装置がボトルネックかを事前に特定でき、限られた投資を効果の大きい改造に集中させやすくなります。省エネ検討では、熱回収やユーティリティ削減の効果を数値で示せるため、投資判断の根拠になります。

知見の継承という効果もあります。ベテランの経験則に頼っていた設計判断を、モデルとして残せるため、担当者が変わっても検討の前提を引き継ぎやすくなります。一方で、注意点も明確です。シミュレーションはあくまでモデルであり、入力した物性や反応条件、仮定が実態とずれていれば結果も外れます。モデルを実機データで検証(バリデーション)しないまま結果を鵜呑みにすると、かえって誤った判断を招きます。また、ソフトのライセンス費用に加え、扱える人材の育成や物性整備に相応の時間がかかるため、導入してすぐに全社で使いこなせるわけではない点も踏まえる必要があります。効果を出すには、検討対象を絞って小さく始め、実機との突き合わせでモデルの精度を上げていく進め方が現実的です。


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プロセスシミュレーションが向いている企業・向いていない企業

プロセスシミュレーションが効果を出しやすいのは、プラント設計や能力検討を継続的に行い、扱うプロセスに蒸留・反応・熱交換などの複雑さがある企業です。逆に、検討の頻度が低く対象が単純なら、表計算や手計算で足りる場合もあります。

向いているのは、まず化学・石油精製・ガス処理・石油化学などで、新設や能力増強、プロセス改善を自社で検討するエンジニアリング機能を持つ企業です。蒸留や反応を含む多段のプロセスを扱い、物質・熱収支を精度よく求める必要がある場合、シミュレーターの効果が大きくなります。次に、省エネ・脱炭素や新規プロセスの成立性検討に取り組む企業も向いています。これらは表計算では扱いにくい非線形な物性計算を伴うためです。また、設計知見を組織に蓄積し、属人化を避けたい企業にも適します。

反対に、導入を急がなくてよいのは、扱うプロセスが単純な物質収支で済み、蒸留や反応の精緻な計算を必要としない企業です。この場合、高機能なシミュレーターはオーバースペックになりやすく、まずは表計算や用途を絞った計算ツールで足りることが多くなります。また、検討の頻度が年に数回程度と低く、外部のエンジニアリング会社に設計を委託している企業も、自社にシミュレーターを常設するより、必要時に委託先の検討結果を活用するほうが現実的な場合があります。ソフトのライセンス費用と、使いこなすための人材育成・物性整備の負荷を踏まえ、自社の検討頻度とプロセスの複雑さに見合うかを見極めることが先決です。

編集部コメント:プロセスシミュレーションは「導入すれば誰でも設計できる」道具ではなく、扱う流体に合った物性手法を選び、実機データでモデルを検証できる人材があって初めて効果が出ます。編集部としては、定常の設計検討を年に複数回行い、蒸留・反応を含むプロセスを自社で詰める製造業に向く一方、検討が単発・単純な物質収支で済む企業には過剰になりやすいと見ています。導入を検討する際は、まず自社が扱う系の物性が対象製品でカバーされるかを最初に確認することをおすすめする位置づけです。


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プロセスシミュレーターの選び方(比較記事へのブリッジ)

プロセスシミュレーターを選ぶときは、機能の多さより、自社のプロセスとの適合を優先して見ると判断を誤りにくくなります。具体的には、扱う流体に合った物性手法・データベースがそろっているか、得意領域(化学合成寄りか石油・ガス寄りか)が自社の用途と合うか、定常だけでよいか動的解析まで必要か、国内のサポートや教育プログラムが受けられるか、といった軸で見ていきます。

製品ごとに得意領域は分かれます。Aspen Plusは定常の精緻なモデリングと幅広い物性データに強く、Aspen HYSYSは石油・ガス分野で広く使われます。CHEMCADは中堅プラントや特殊化学でコストを抑えたい用途、AVEVA PRO/IIは精製から化学まで幅広い定常解析で選ばれる傾向があります。どの製品が自社に合うかは、得意領域・物性・価格・国内サポートを並べて比べると見えてきます。

各製品の得意領域や価格レンジ、物性データベースの厚みを条件で絞り込んで比較したい場合は、ITトレンドのプロセス解析ソフトのカテゴリで候補を一覧で確認できます。


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まとめ|プロセスシミュレーションの全体像と次のステップ

プロセスシミュレーションとは、化学プラントの工程をモデル化し、物質収支と熱収支を解いて装置仕様や運転条件を検討する技術です。時間の扱いによって、設計や能力検討に使う定常シミュレーションと、起動停止や制御の検証に使う動的シミュレーションに分かれ、計算結果の信頼性は物性推算の適合性に大きく依存します。

実機を作る前に挙動を見通せるため、設計精度の向上と試作・試運転コストの低減という効果がありますが、モデルの検証や物性整備、人材育成には相応の手間がかかります。蒸留・反応を含むプロセスの設計や能力増強を継続的に行う企業ほど効果が出やすく、検討が単発・単純な場合は表計算で足りることもあります。

全体像を把握したうえで、自社の流体や用途に合う具体的な製品を比べたい場合は、ITトレンドのプロセス解析ソフトのカテゴリで、得意領域・物性・価格・国内サポートの条件を絞り込んで候補を確認できます。

プロセス解析ソフト(プロセスシミュレーター)比較表

製品名ベンダー価格モデル特徴
CHEMCADChemstations(Datacor)要見積もり中堅プラント・受託エンジに向くモジュラー構成詳細を見る
Aspen PlusAspenTech要見積もり精密化学・ポリマー・電解質に強い定常プロセスシミュレーター詳細を見る
Aspen HYSYSAspenTech要見積もり油ガス・石油精製・天然ガス処理に最適化詳細を見る
AVEVA PRO/II SimulationAVEVA Group要見積もり設計〜運転デジタルツインを志向するプロセスシミュレーター詳細を見る