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選び方・ノウハウ#トレーサビリティ#品質保証#製造業

トレーサビリティとは?意味・種類から製造業での仕組みまで解説

トレーサビリティの意味、トレースフォワードとトレースバックの違い、リコールや法規制で必要とされる理由、製造業での識別技術と記録・システム化までを整理した用語解説記事。

製造業のシステム選定担当者ITトレンド編集部
トレーサビリティとは?意味・種類から製造業での仕組みまで解説

トレーサビリティとは、製品や原材料が「いつ・どこで・どの工程を通って・どこへ流れたか」を記録し、後からたどれる状態にしておくことを指します。英語の trace(たどる)と ability(できること)を組み合わせた言葉で、日本語では「追跡可能性」と訳されます。

言葉の意味だけなら一文で説明できますが、実務では「どこまで・どの方向にたどれるか」「どんな技術で記録するか」「Excelで足りるのかシステムが要るのか」で中身が大きく変わります。この記事では、定義と2方向の追跡、なぜ必要になるのかという背景、そして製造業の現場でQRコードやRFIDをどう使い分け、最終的にシステム化へどうつなげるかまでを実装目線で整理します。用語の確認から自社で何をすべきかの判断まで、順番にたどれる構成にしています。

結論:トレーサビリティとは、製品や原材料を一意に識別し、各工程の履歴を記録し、後から追跡できる状態を指す言葉で、川下へたどるトレースフォワードと川上へさかのぼるトレースバックの双方向がそろって初めて機能します。判断の要点は、追う単位をロット(まとめて製造した一群)にするか個体ごとのシリアルにするかをまず決めることと、リコール時の範囲特定・品質保証と原因究明・法規制や取引先要請という三つの動機のうち自社で最も切実なものを見極めることです。実装では識別技術(バーコード・QR・RFID・刻印+画像コードリーダ)を工程ごとに使い分け、読み取ったデータを一つの仕組みに集約して双方向にたどれるようにするのが核になります。手作業の突き合わせで範囲を許容時間内に特定できないなら、専用システム・生産管理/MES一体型・基幹統合型・ハードウェア軸の四タイプから自社の課題に合うものを選ぶ段階です。


この記事でわかること

01

トレーサビリティとは「追跡できること」を指す言葉

トレーサビリティの中心にある考え方は、対象を一意に識別し、その識別単位ごとに履歴を記録し、後から追跡できるようにすることです。品質マネジメントの国際規格ISO9000やそれに対応するJIS Q 9000の用語定義でも、トレーサビリティは「考慮の対象の履歴、適用又は所在を追跡できること」とされています。

製造業に当てはめると、ある製品について「使った原材料はどのロットか」「どの設備で・誰が・いつ加工したか」「検査結果はどうだったか」「どの取引先へ何個出荷したか」を、記録からたどれる状態がトレーサビリティの確保された状態です。逆に、これらが紙の伝票に断片的にしか残っておらず突き合わせに何日もかかるなら、トレーサビリティは十分に確保されていないといえます。

「トレーサビリティ 意味」を調べる読者がつまずきやすいのは、この言葉が二つの場面で使われる点です。一つは製造・流通の現場で使う「製品の履歴追跡」、もう一つは計測の世界で使う「測定値が国家標準まで切れ目なくつながっていること」です。本記事で扱うのは前者の製品トレーサビリティで、製造業や食品業界で一般的に問題になるのもこちらです。計測器の校正でいうトレーサビリティとは観点が異なる点だけ押さえておくと、検索結果で両方が出てきても混乱しません。

もう一段踏み込むと、トレーサビリティは「記録があること」だけでは成り立ちません。識別(ロット番号やシリアル番号を振る)、記録(各工程でその番号に紐づく情報を残す)、追跡(後から番号を起点に履歴を引き出す)の三つがそろって初めて機能します。どれか一つでも欠けると、いざ問題が起きたときに追えないという結果になります。たとえば識別番号を振っていても、工程ごとの記録が紙の日報に分散していて番号と結びついていなければ、追跡の段階で番号から履歴をたどれません。逆に詳細な記録があっても、製品とロットを結ぶ識別が曖昧なら、どの記録がどの製品のものか特定できません。

ここで「ロット」と「シリアル」という二つの識別単位を区別しておくと、後の話が整理しやすくなります。ロットは同じ条件でまとめて製造した一群を一つの単位として扱う考え方で、原材料や食品、化学品のように個体を一つずつ区別しにくいものに向きます。シリアルは製品一つひとつに固有の番号を振る考え方で、自動車部品や電子機器のように個体単位で履歴を追いたいものに向きます。どちらを採用するかで、付与する番号の桁数も、現場で読み取る回数も、記録するデータ量も変わります。トレーサビリティを「どこまで細かく追うか」は、この単位の選び方とほぼ同じ意味になります。


02

トレースフォワードとトレースバック|2方向の追跡

トレーサビリティには追跡の方向が二つあり、これを分けて理解すると実務での使い方がはっきりします。川下方向にたどるのがトレースフォワード(追跡)、川上方向にさかのぼるのがトレースバック(遡及)です。

トレースフォワードは「この原材料ロットを使った製品はどれで、どこへ出荷したか」を前向きにたどる方向です。原材料に問題が判明したとき、その材料を使った製品と出荷先を特定し、回収範囲を絞り込むために使います。トレースバックは逆に「この製品に何の原材料が使われ、どの工程を通ったか」を後ろ向きにさかのぼる方向です。市場で不良が見つかったとき、原因がどの工程・どのロットにあるのかを突き止めるために使います。

実務では両方向がそろっていないと片手落ちになります。トレースバックで原因ロットを特定できても、トレースフォワードで「同じロットを使った他の製品」を洗い出せなければ、回収範囲を絞れないからです。問題発生時の対応速度は、この双方向のたどりやすさでほぼ決まります。

具体的な場面で考えると違いがはっきりします。ある原材料に異物混入の疑いが出たとします。トレースフォワードを使えば、その原材料ロットがどの製品ロットに使われ、どの卸・小売へ何個出荷されたかを前向きにたどり、回収対象を出荷先単位まで絞り込めます。一方、市場から「特定の製品で不具合が出た」と連絡が入った場合は、トレースバックで製品ロットから原材料・製造設備・作業者・検査結果へさかのぼり、原因がどこにあるかを切り分けます。前者がなければ回収が広がり、後者がなければ原因究明が止まる、という関係です。どちらを先に整えるかは業種によりますが、最終的には両方向を一つの記録でつなげることが目標になります。

内部トレーサビリティとチェーントレーサビリティの違い

追跡の方向とは別に、追跡の範囲による区別もあります。自社の工場内(入荷から出荷まで)に閉じた追跡を内部トレーサビリティ、原材料の生産者から最終消費者までサプライチェーン全体にまたがる追跡をチェーントレーサビリティと呼びます。

多くの製造業がまず取り組むのは内部トレーサビリティです。自社工程の中で原材料ロットと製品を紐づけ、不良の原因究明と回収範囲の特定を社内で完結できるようにする段階です。一方、食品や自動車のように業界全体で履歴を引き継ぐ必要がある分野では、取引先と識別情報を受け渡すチェーントレーサビリティが求められます。チェーン全体をつなぐには、各社が内部トレーサビリティを確立していることが前提になるため、自社の足元を固めることが出発点になります。

チェーントレーサビリティで難しいのは、企業間で識別情報の渡し方をそろえる点です。自社のロット番号の付け方が独自の方式だと、取引先がその情報を自社のシステムに取り込めません。業界によっては識別コードの標準化が進んでおり、標準に沿った付け方をしておくと、サプライチェーンの上流・下流とのデータ連携がしやすくなります。まずは内部トレーサビリティを固め、次に取引先との受け渡しを見据えてコードの付け方を整える、という順序が現実的です。


03

トレーサビリティがなぜ必要か|リコール・品質保証・法規制

トレーサビリティを整える動機は、大きく三つに分けられます。問題が起きたときの被害を最小化すること、品質を保証して原因究明を速めること、そして法規制や取引先の要請に応えることです。

最もわかりやすいのがリコール対応です。製品に不具合が見つかったとき、トレーサビリティがあれば「問題のロットを使った製品はこれとこれ、出荷先はここ」と範囲を絞れます。範囲を特定できなければ、安全側に倒して広範囲を回収せざるを得ず、回収コストもブランドへの影響も跳ね上がります。回収を「全数」ではなく「該当ロットのみ」に抑えられるかどうかが、トレーサビリティの有無で分かれます。

この差は、回収の費用だけでなく対応のスピードにも表れます。範囲を絞れない場合、どこまで回収すべきか判断するための調査に時間がかかり、その間に問題の製品が市場で使われ続けるリスクが残ります。逆に、出荷先まで紐づいたトレーサビリティがあれば、該当する取引先へ的を絞って速やかに連絡でき、回収のアナウンスも限定的に済みます。消費者や取引先に与える不安を最小限にとどめられる点も、見えにくいながら大きな効果です。

二つ目は品質保証と原因究明です。不良が発生したとき、どの設備・どの作業者・どの原材料ロット・どの製造条件で起きたのかを記録からたどれれば、原因の切り分けが速くなります。記録がなければ「再現実験から」になり、対策が後手に回ります。日常的な品質管理でも、工程ごとの検査結果を製品単位で残しておくことが、後の改善活動の土台になります。

原因究明のスピードは、そのまま不良の流出量に跳ね返ります。原因ロットの特定に三日かかる工場と、半日で特定できる工場では、その間に作り続けてしまう不良品の量が違います。トレーサビリティが整っていれば「いつから・どの条件で異常が始まったか」を記録上の変化点から追えるため、止めるべきラインと出荷を止めるべきロットを早期に判断できます。これは品質コストの削減という形で投資回収につながる部分でもあります。

取引先からの要請という観点も無視できません。完成品メーカーは、自社のトレーサビリティを成立させるために、部品・原材料の供給元にも履歴の提出を求めます。納入先がトレーサビリティ体制を取引条件にしている場合、対応できなければ受注機会そのものを失うことがあります。法規制が直接かかっていない部品メーカーでも、サプライチェーンの一員として体制を整える必要に迫られるのはこのためです。

三つ目が法規制と取引先要請です。食品分野では、米の流通履歴の記録・伝達を義務づける米トレーサビリティ法(米穀等の取引等に係る情報の記録及び伝達に関する法律、2009年制定)や、牛の個体識別情報の管理・伝達を定める牛トレーサビリティ法(牛の個体識別のための情報の管理及び伝達に関する特別措置法、2003年制定)が代表例で、いずれも農林水産省が所管しています。これらに加え、食品衛生法の改正により2021年6月からは原則としてすべての食品等事業者にHACCPに沿った衛生管理が義務化されており、工程記録とロット管理が前提になります。任意規格のISO22000を取得して取引先への訴求に使う企業もあります。自動車・医薬品・電機など、不具合が安全に直結する業界では、法規制だけでなく取引先からトレーサビリティ体制を求められるケースが多くなっています。

編集部コメント:必要性の三つの動機は並列に見えても、自社にとっての優先順位は業種でほぼ決まります。食品なら法規制(HACCP・各トレーサビリティ法)が出発点になり、自動車部品なら取引先要請と安全直結のリコール対応が前面に出ます。三つすべてを同時に満たそうとするより、自社で最も切実な一つを起点に体制を組み立てると、設計の優先順位が定まりやすいというのが編集部の見方です。

業界ごとに事情が違う

同じトレーサビリティでも、業界によって追う対象も粒度も異なります。食品では原材料ロットと製造日・賞味期限が中心で、衛生管理(HACCP)と結びつきます。自動車部品では1個ずつのシリアル番号で個体を追う厳密さが求められ、不具合時に対象車両を特定できる粒度が要ります。電機・精密機器では部品の実装履歴や検査データの紐づけが重視されます。化学・素材のようなプロセス製造業では、配合・反応条件をロット単位で残すことが品質と規制対応の両面で必要になります。

自社の業界がどの粒度を求めるのかを最初に決めておかないと、後から「ロット単位では足りずシリアル単位が必要だった」という手戻りが起きます。トレーサビリティの設計は、追う単位(ロットか個体か)を決めるところから始まります。

もう一つ業界差として表れるのが、記録を残す期間です。食品では賞味期限や消費期限の範囲に加え、問題発生時の遡及に耐える期間の保管が求められます。自動車部品や医療機器のように製品寿命が長く、市場での不具合が長期間にわたって発生しうる分野では、出荷から数年・十数年にわたって履歴を引き出せる状態を保つ必要があります。保管期間が長いほど、紙やローカルの表計算では管理しきれなくなり、データとして蓄積・検索できる仕組みの必要性が増します。自社の製品がいつまで市場にあり、その間にどこまでさかのぼれる必要があるのかは、トレーサビリティの設計段階で確認しておきたい点です。


04

製造業でのトレーサビリティの実装|識別技術と現場の記録

製造業でトレーサビリティを実装する第一歩は、対象に識別情報を付与し、各工程でそれを読み取って記録することです。識別情報はロット番号やシリアル番号で、これを製品や仕掛品、原材料に紐づけます。現場での読み取りには主にバーコード、QRコード、RFID、そして製品に直接刻印した2Dコードを画像で読むコードリーダが使われます。

実装を考えるとき、最初に決めるのは「どの工程で識別情報を付け、どの工程で読み取るか」です。入荷した原材料にロット情報を取り込む、加工後の仕掛品に製造ロットを刻印する、検査後に結果を製品ロットへ紐づける、出荷時に出荷先と製品ロットを記録する、といった具合に、追跡したい範囲に合わせて読み取りポイントを設計します。読み取りポイントが多いほど履歴は細かくなりますが、その分だけ現場の作業と機器の投資が増えます。どこまで細かく追うかは、前述したロットかシリアルかという識別単位の選択と合わせて決めることになります。

識別技術ごとに得意な場面が違うため、用途で使い分けることになります。ラベルに印字して低コストで運用できるのがバーコードやQRコードで、QRコードはデンソーウェーブが開発した2次元コードです。小さな面積に多くの情報を入れられ、誤り訂正機能によりコードの一部が汚れ・破損しても読み取れる(最大で約30%の欠損を復元できる)特性があり、汚れやすい製造現場と相性が良い技術です。金属部品など高温・油・摩耗にさらされる現場では、レーザーで2Dコードを直接刻印し、画像式のコードリーダで読み取る方式が向きます。ラベルが貼れない、はがれる環境でも履歴を残せるためです。

非接触で複数のタグを一括して読み取れるのがRFIDで、箱を開けずに中身の在庫を一気に読む、通過するだけで記録するといった運用に向いています。一方でタグ単価がバーコードより高く、金属や液体の近くでは読み取りが不安定になりやすいという制約があります。コスト・環境・読み取り頻度を見て、すべてをRFIDにするのではなく工程ごとに技術を組み合わせるのが現実的です。

これらの識別技術は、それ単体では「読み取る道具」にすぎません。読み取った番号に対して、いつ・どこで・どんな条件だったかという情報を結びつけ、その記録を後から引き出せる形で残してはじめてトレーサビリティになります。つまり識別技術の選定と、記録を蓄積する仕組みの設計は、本来セットで考える対象です。現場で「どのコードを使うか」だけが先行して、データの行き先が決まっていないと、読み取ったデータが各設備のログに散らばって活用できないという状態になりがちです。

バーコード・QR・RFIDコードリーダの使い分け

使い分けの目安を整理すると、まず大量・安価に運用したい一般工程ではバーコードやQRコードのラベルが基本になります。ラベルが貼れない・はがれる過酷な環境では刻印+画像コードリーダ、開梱せずまとめて読みたい入出荷や棚卸しではRFIDが候補です。読み取り工程の速度と精度が品質に直結するインライン検査では、高速で難読コードも読める産業用コードリーダが使われます。

実装で見落とされやすいのが、読み取りそのものの安定性と運用負荷です。コードが汚れて読めない、作業者が読み取りを飛ばす、現場の手間が増えて形骸化する、といった問題は導入後に頻発します。識別技術を選ぶときは「最も過酷な工程でも確実に読めるか」「現場の作業手順に無理なく組み込めるか」を、機器のスペック以上に重視すると失敗を減らせます。読み取ったデータをその場で人が転記する運用にすると、結局そこがボトルネックになるため、次に説明するシステム化が必要になります。

導入の進め方としては、全工程に一度に展開するのではなく、追跡が最も必要な工程から段階的に始める方法が現実的です。たとえば、出荷直前の検査工程でロット番号と検査結果を確実に紐づける、原材料の入荷時にロット情報を取り込む、という具合に、トレースバック・トレースフォワードの両端から押さえていくと、限られた投資でも回収範囲の特定という効果を早く得られます。中間工程の記録は、現場の負荷と得られる情報の価値を見ながら順次足していく形が無理がありません。最初から完璧な全工程記録を目指すと、現場の入力負荷が一気に増えて運用が続かなくなりやすい点には注意が必要です。


05

記録した先をどうするか|トレーサビリティのシステム化

識別して読み取っても、そのデータが工程ごとにバラバラに保管されていては追跡になりません。トレーサビリティが機能するのは、読み取ったデータを一つの仕組みに集約し、原材料ロット・製造工程・検査結果・出荷先を相互に紐づけて、番号を起点に双方向でたどれるようにしたときです。これがトレーサビリティのシステム化です。

Excelや紙でも記録は残せますが、ロット数が増え、紐づけが多段になると、突き合わせに時間がかかり、入力ミスや転記漏れのリスクが上がります。「不良が出てから出荷先を特定するのに丸一日かかる」「監査のたびに過去記録を手作業で集める」といった状態になったら、システム化を検討する目安です。

トレーサビリティを実現するシステムには、大きく四つのタイプがあります。性格が異なるため、自社の課題に合わせて選ぶことになります。

一つ目は、トレーサビリティを主目的にした専用システムです。入荷から製造、出荷までのロット追跡に特化し、食品やプロセス製造業の規制対応に強い製品があります。サトーのTrace eye FOOD-Pro(食品工場向け、ISO22000/HACCP対応)やTrace eye Material-Pro(化学・素材・鉄鋼などプロセス製造業向け)はこのタイプで、ロット別の品質管理機能が高く評価される領域です。

二つ目は、生産管理やMES(製造実行システム)にトレーサビリティ機能を組み込んだタイプです。工程の進捗管理と履歴記録を一体で扱えるため、生産管理ごと整えたい中小製造業に向きます。中小製造業向けSaaSのSmartF(ネクスタ)や、国産のSaaS型MESであるSmart Craftがこの方向で、生産管理とロットトレースをまとめて導入できる点が特徴です。トレーサビリティだけを単独で入れるより、現場の進捗・在庫・記録をまとめて一つの仕組みに載せられるため、別々のシステムを連携させる手間を避けたい企業に向きます。クラウド型であれば初期の設備投資を抑えやすい反面、自社特有の工程に細かく合わせ込む柔軟性は専用構築より限られることがあります。

三つ目は、基幹業務パッケージにトレーサビリティを統合したタイプです。生産・販売・在庫を一体で管理する基幹システムに双方向ロットトレースを載せる形で、日立システムズのFutureStageなどが該当します。基幹システムごと刷新したい中堅製造業に向く反面、導入規模は大きくなります。

四つ目は、刻印・読み取りといったハードウェアを軸にしたタイプです。キーエンスのトレーサビリティソリューション(レーザマーカ+コードリーダ+PLC連携)や、産業用画像コードリーダで世界的に使われるコグネックスのDataManシリーズ、QRコードを発明したデンソーウェーブのQRコードソリューションがこの領域です。現場での確実な刻印・高速読み取りに強く、上位のシステムと組み合わせて使われます。金属部品への直接刻印やインラインでの高速読み取りといった、ソフトウェアだけでは解決できない物理的な精度が課題になる現場では、この領域の機器選定が成否を分けます。デンソーウェーブはSQRCやrMQRといった独自の2次元コード技術を持つなど、各社が読み取り・コード生成の技術で特色を出しています。

この四タイプは排他的なものではなく、組み合わせて使うのが一般的です。たとえば、現場の刻印・読み取りはハードウェア軸の機器で固め、読み取ったデータの蓄積と双方向の紐づけは生産管理・MESや専用システムが担う、という役割分担になります。どこを起点に考えるかは、自社の最も切実な課題で決まります。食品や化学のように規制対応と品質記録が最優先なら専用システム、生産管理そのものを整えたい中小製造業なら生産管理・MES一体型、基幹システムを刷新する計画があるなら基幹統合型、すでに上位システムはあって現場の読み取り精度が課題ならハードウェア軸、という入り方になります。

製品を比べるときは、機能の有無だけでなく自社が重視する評価軸で見ると判断しやすくなります。ITトレンドでは製造業向けの製品を品質管理・在庫管理・生産管理・工程管理といった軸でスコア化しており、たとえば食品・プロセス系の専用製品は品質管理の評価が高く、生産管理一体型や基幹統合型は在庫管理や生産管理の評価が高い、といった傾向の違いが見えます。自社が最優先する軸を一つ決めると、四つのタイプのどれを起点に探すかが定まります。逆に、すべての軸で満点を求めると候補が絞れず、導入規模も費用も膨らみます。トレーサビリティのために何を一番解決したいのかを先に言語化しておくことが、製品選びの遠回りを減らす近道です。


06

トレーサビリティのシステム化が向いている企業・まだ不要な企業

システム化に踏み切るかどうかは、ロット数・規制要請・リスクの大きさで判断できます。すべての企業が今すぐ専用システムを入れる必要はなく、手作業や表計算で回る段階の企業もあります。

システム化が向いているのは、扱うロットや製品の種類が多く手作業の突き合わせが限界に近い企業、食品や自動車部品のように法規制や取引先からトレーサビリティ体制を求められる企業、不具合がリコールや安全問題に直結しうる企業です。こうした条件では、問題発生時に範囲を素早く絞れるかどうかが事業リスクに直結するため、システム化の投資が回収しやすくなります。

逆に、製品の種類が少なくロットの紐づけが単純で、規制要請も取引先要請もない段階なら、表計算や既存の生産管理の記録機能で当面は足ります。無理に専用システムを入れても、現場の入力負荷だけが増えて形骸化することがあります。判断の分かれ目は「問題が起きたとき、現状の記録で許容できる時間内に範囲を特定できるか」です。ここに不安があるなら、システム化を具体的に検討する段階に入っています。

判断を後押しする兆候はいくつかあります。出荷先からの問い合わせに即答できず、過去の伝票を探すのに半日以上かかる。監査や取引先の現地確認のたびに、担当者が記録の取りまとめに追われる。新しい取引先からトレーサビリティ体制の提出を求められたが、現状の記録では証跡として示しにくい。こうした状態が繰り返し起きているなら、手作業の限界に達しているサインです。一方で、こうした困りごとがまだ顕在化していない企業が先回りで大規模なシステムを導入すると、運用が定着しないまま費用だけが残ることもあります。自社が今どの段階にいるかを、これらの兆候に照らして見極めることが、過不足のない投資につながります。

自社がどのタイプの製品を起点に探すべきか当たりがついたら、ITトレンドのトレーサビリティシステムのカテゴリで、識別技術や対象業種、生産管理との連携といった条件から製品を絞り込んで比較できます。トレーサビリティシステムの製品一覧と絞り込みはこちらから、自社の要件に近い候補を確認できます。

編集部コメント:向いているか・まだ不要かの線引きは、規模や業種そのものではなく「問題が起きたとき、現状の記録で許容できる時間内に範囲を特定できるか」という一点に集約されると編集部は考えています。ロット数が少なく規制も取引先要請もない段階なら表計算で足りる一方、出荷先の問い合わせに即答できない・監査のたびに記録の取りまとめに追われるといった兆候が繰り返し出ているなら、それが手作業の限界に達したサインです。先回りで大規模に入れて形骸化させるのではなく、これらの兆候に自社を照らして段階を見極めることが、過不足のない投資につながります。


07

まとめ|トレーサビリティの理解から次の一歩へ

トレーサビリティとは、製品や原材料の履歴を識別・記録・追跡できる状態を指し、川下へたどるトレースフォワードと川上へさかのぼるトレースバックの双方向がそろって機能します。必要性はリコール時の範囲特定、品質保証と原因究明、そして食品や自動車などの法規制・取引先要請から生まれます。

製造業で実装するには、ロットやシリアルで識別し、バーコード・QR・RFID・刻印+画像コードリーダを工程ごとに使い分けて読み取り、そのデータを一つの仕組みに集約して双方向にたどれるようにします。読み取りデータの集約こそがシステム化の中心で、専用システム・生産管理/MES一体型・基幹統合型・ハードウェア軸の四タイプから自社の課題に合うものを選ぶことになります。

次の一歩は、自社が追うべき単位(ロットか個体か)と最優先の評価軸を棚卸しし、それに近いタイプの製品を比べることです。トレーサビリティシステムのカテゴリで、業種や識別技術、生産管理連携の条件から候補を絞り込み、自社要件と照らし合わせるところから始められます。

トレーサビリティシステム比較表

製品名ベンダー価格モデル特徴
FutureStage株式会社日立システムズハイブリッド日立の統合基幹パッケージ。双方向ロットトレース詳細を見る
SmartF株式会社ネクスタサブスクリプションITトレンド生産管理レビューNo.1。初期30万円〜詳細を見る
Smart Craft株式会社Smart Craftサブスクリプション国産初SaaS型MES。ロットトレース標準搭載詳細を見る
コグネックス DataManシリーズコグネックス株式会社オンプレミス産業用画像ベースバーコードリーダのグローバルリーダー詳細を見る
デンソーウェーブ QRコードソリューション株式会社デンソーウェーブハイブリッドQRコード発明企業。SQRC/rMQR等の独自技術詳細を見る
Trace eye Material-Pro株式会社サトー要見積もり化学・素材・鉄鋼向けプロセス型トレーサビリティ詳細を見る
キーエンス トレーサビリティソリューション株式会社キーエンスオンプレミスレーザマーカ+コードリーダのハード統合トレース詳細を見る
Trace eye FOOD-Pro株式会社サトー要見積もり食品製造業向けトレーサビリティ。HACCP対応詳細を見る