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用語解説#予知保全#予防保全#設備保全

予知保全とは?基礎知識やできること、選び方までをわかりやすく解説!

予知保全とは、設備の状態をセンサーで捉え、AIで故障の予兆を予測して計画的に保全する方式です。主な機能やメリット・デメリット、予防保全との違い、費用の考え方、導入に向いている企業までをわかりやすく解説します。

製造業のシステム選定担当者ITトレンド編集部
予知保全とは?基礎知識やできること、選び方までをわかりやすく解説!

予知保全とは、設備の状態をセンサーで常時捉え、故障の予兆を見つけて壊れる前に手を打つ保全方式です。決まった周期で部品を交換する予防保全とは違い、実際の状態に応じて必要なときだけ保全します。

突発停止でラインが止まり、納期に響いたことはありませんか。まだ使える部品を、周期が来たからと交換しているケースもあるでしょう。熟練者の勘に予兆の判断を頼っている工場も少なくありません。この記事では、基礎知識からメリット・デメリット、主な機能、費用相場、向いている企業までを整理しました。

  • できること:振動・温度・電流・音などのデータから故障の予兆を捉え、計画的に保全できます。
  • 予防保全との違い:周期ではなく状態で判断するため、過剰な部品交換と突発停止の両方を抑えられます。
  • 仕組み:IoTでデータを集めて蓄積し、AIが正常時とのずれや故障の兆候を捉えます。
  • 費用の考え方:センサー・ネットワーク・分析システムが要り、対象設備が多いほど費用が膨らみます。

効果が出やすいのは、停止損失が大きく、振動などの予兆が出やすい回転機を多く持つ工場です。対象設備を絞り、データをためながら小さく始めましょう。


この記事でわかること

01

予知保全とは

予知保全は、英語でPredictive Maintenance(PdM)と呼ばれる保全方式です。「予兆保全」と表記されることもあり、ほぼ同じ意味で使われます。ここでは、定義、監視する対象、保全方式の中での位置づけを押さえます。

故障の予兆を捉えて先回りする保全方式

予知保全は、稼働中の設備の状態をセンサーで継続して捉える方式です。故障の予兆を見つけ、計画的にメンテナンスします。壊れてから直すのではなく、壊れる前の小さな変化を捉える点が従来の保全との違いです。

製造業で注目されるのは、設備の停止が損失に直結するためです。ラインが突然止まれば、生産計画の遅れや仕掛品の廃棄、納期遅延につながります。24時間連続で稼働する装置産業では、1回の突発停止の損失がとくに大きくなります。

監視する主な対象(振動・温度・電流・音)

監視するのは、主に設備から出る物理的な兆候です。回転機なら振動や軸受の温度、モーターなら電流値が代表的な対象になります。ポンプやファンでは、稼働音も手がかりです。これらの値は、部品の摩耗や異常が進むと、故障の前から少しずつ変化します。

変化を捉えれば、まだ動いている設備でも「あと数週間で危ない」と予測できます。前提になるのは、正常な状態がどんな数値かを先に押さえておくことです。基準があるからこそ、わずかなずれを異常として捉えられます。

保全方式の中での位置づけ

保全は、事後保全、時間基準保全(TBM)、状態基準保全(CBM)の順に高度化してきました。予知保全は、このCBMをさらに進めた方式と位置づけられます。

CBMが捉えるのは、今の状態に異常があるかどうかです。予知保全はAIやIoTを使い、このまま使うといつ頃壊れそうかという将来の予測まで踏み込みます。状態監視と診断については、ISO 13374などの国際規格も整備されています。詳しい違いは、後半の比較表で確かめてください。

編集部メモ:予知保全は、高度なAIを入れれば自動で当たる仕組みではありません。何を測れば予兆が見えるかを、設備ごとに見定める作業から始まります。


02

予知保全のメリット

予知保全の利点は、故障の前に手を打てることから生まれます。停止、コスト、人材、記録の4つの面で効果が表れます。

  • 突発停止を減らせる
  • 過剰な点検や部品交換を減らせる
  • 熟練者の判断をデータで引き継げる
  • 保全履歴を残して横展開できる

突発停止を減らせる

故障の予兆を早く捉えられれば、生産計画に支障の出ないタイミングを選んで保全できます。ラインが突然止まる事態を避けられるのが最大の利点です。

止まると損失の大きい設備ほど、効果が金額に表れるでしょう。連続稼働のプラントや、後工程まで影響する基幹設備が典型です。こうした設備では、1回の突発停止を防ぐだけで投資を回収しやすくなります。仕掛品の廃棄や納期遅延の心配が減り、生産計画も立てやすくなります。

過剰な点検や部品交換を減らせる

時間基準の保全では、まだ使える部品も期間が来れば交換します。それでも、交換前に壊れるリスクは残るのが実情です。予知保全なら本当に必要になったときだけ手を打てるため、部品や作業の無駄が減ります。

突発停止に伴う緊急対応のコストも抑えられるでしょう。緊急対応は、休日や夜間の呼び出しを伴うことも少なくありません。計画的な保全に切り替えられれば、現場の負担そのものが軽くなります。

熟練者の判断をデータで引き継げる

「音が変わったら危ない」という判断は、これまで経験豊富な担当者の感覚に頼っていました。その判断基準を、データと結びつけて記録できるのが利点です。

経験の浅い担当者でも、異常の兆候に気づけるようになるでしょう。判断の根拠が数値で残るため、担当者の間で基準をそろえやすくなります。特定の人しか予兆を見抜けない属人化を防ぐうえでも有効です。保全人材の高齢化や採用難に直面する工場ほど、この平準化の価値は高まります。

保全履歴を残して横展開できる

いつ・どの設備に・どんな兆候が出たかを、データとして残せる点も見逃せません。後から原因を振り返るときの手がかりになり、保全履歴のトレーサビリティも高まります。

1つの工場で見つけた予兆のパターンを、同じ設備を使う他の拠点へ適用できるのも強みです。突発停止が減れば、緊急対応に割いていた人手を分析やしきい値の調整に回せます。データが積み上がるほど予測の精度が上がり、無駄な点検がさらに減る好循環も生まれるでしょう。


03

予知保全のデメリット

予知保全には相応のコストと前提条件があり、すべての設備で効果が出るわけではありません。いずれも事前の見極めで避けられるものが多いので、対処法とあわせて押さえておきましょう。

  • 初期投資がかかる
  • 効果が出るまでにデータの蓄積期間が要る
  • 誤検知と見逃しが起こりうる
  • 運用人材と既存設備との相性が課題になる

初期投資がかかる

センサーの設置、データを集めるネットワーク、分析するシステムが必要です。費用は設備の数に比例して膨らむ点に注意が必要です。停止損失の小さい設備にまで一律に導入すると、投資に見合う効果が出ないこともあります。

対処法:停止したときの損失額と、予兆の出やすさの2軸で設備を並べます。損失が大きく予兆も出やすい設備から、優先して導入しましょう。ほかの設備は予防保全や事後保全と組み合わせれば、投資を必要な範囲に絞れます。

効果が出るまでにデータの蓄積期間が要る

AIが予兆を学ぶには、正常時のデータや、できれば故障に至るまでのデータが要ります。導入してすぐに高い精度が出るわけではありません。数か月から年単位でデータをためながら、精度を上げていく前提です。

対処法:蓄積期間を計画に織り込み、短期の費用対効果だけで評価しないでください。PoC(試験導入)では、過去の故障と同じ兆候を何日前に捉えられるかを指標にします。基準を関係者で先に決めておくと、効果を具体的に確かめられます。

誤検知と見逃しが起こりうる

実際には問題ないのに警告が出れば、無駄な点検が増えて現場の信頼を失います。逆に予兆を捉えきれず故障が起きれば、システムへの不信につながるでしょう。どこで警告を出すかのしきい値は、最初から完璧には決まりません。

対処法:検知のしきい値は、運用しながら調整する前提で臨みます。予兆を捉えたあとに誰がどう動くかというルールも、本番に移る前に固めておきましょう。そうすれば、検知が現場の行動に結びつきます。

運用人材と既存設備との相性が課題になる

データを見て判断し、しきい値を調整し、現場と連携する役割が欠かせません。専任者を置けないまま導入すると、使われないまま終わるおそれがあります。導入そのものより、その後の運用が成否を分けるといってよいでしょう。古い設備では、センサーを付けられない、データを外部に取り出せないといった問題も起こります。

対処法:ベンダーの運用支援をどこまで受けられるかを、製品選びの段階で確かめましょう。対象設備からデータを取れる状態にできるかも、導入を決める前に確認してください。


04

予知保全の主な機能

予知保全は、データの収集、蓄積と分析、予測という流れで成り立ちます。この流れを支えるのが、次の4つの機能です。

  • センサーによるデータ収集:振動・温度・電流などを、IoTで継続して自動収集する
  • データの前処理:波形などの生データを、判断に使える指標へ加工する
  • AIによる異常検知と故障予測:正常時とのずれや、過去の故障に似た兆候を捉える
  • エッジ処理とクラウド処理:設備の近くで即座に判断するか、クラウドに集めて分析するかを選ぶ

それぞれの中身を見ていきましょう。

センサーによるデータ収集

設備に振動・温度・電流などのセンサーを取り付け、稼働中の状態を継続して測る機能です。IoT(モノのインターネット)は、センサーをネットワークでつなぐ仕組みを指します。データは人手を介さず自動で集まります。

人が見回って記録する代わりに、設備の状態を細かく取り続けられるのが特徴です。精度は、センサーの取り付け位置や測る間隔に左右されます。正常時のデータが十分にそろえば、わずかな変化も捉えやすくなります。

データの前処理

センサーから得たデータは、そのままでは扱いにくいことが多く、前処理が必要です。振動のデータは、波形のまま見ても判断が難しいためです。

そこで周波数ごとの成分に分解し、特定の周波数の変化から軸受の傷を読み取ります。予兆を捉えられるかは、データを意味のある指標へ加工できるかで決まるといってよいでしょう。変圧器や配電盤なら温度の上昇が指標になります。製造設備では、稼働音や電流の波形から異常を捉えます。

AIによる異常検知と故障予測

AIの手法は大きく2種類に分かれます。教師あり学習による故障予測は、過去の故障データを学習させ、同じ兆候が出たときに警告する方式です。教師なし学習による異常検知は、正常時のパターンを学び、そこから外れた状態を捉えます。

教師ありは、同じ型の設備を多数持つ場合などに「何日後に壊れる」といった予測まで踏み込めます。ただし正解にあたる故障データが要るため、準備のハードルは高めです。教師なしは正常データだけで始められ、どんな壊れ方をするかを知らなくても兆候に気づけます。

エッジ処理とクラウド処理

データを処理する場所は、エッジとクラウドの2通りです。エッジ処理は設備の近くで即座に判断し、クラウド処理はデータを集めて分析します。リアルタイム性が必要な制御にはエッジ、複数拠点の分析にはクラウドが使われます。

エッジは、通信が途切れても現場で判断できる点が特徴です。PLCやセンサーと組み合わせ、生産設備の制御と保全を近づける形もあります。クラウドは、拠点をまたいだ比較や大規模なデータの分析に向いています。


05

予知保全の主な活用場面

予知保全が使われるのは、止まると損失の大きい設備を抱える現場です。業種によって、対象になる設備と担当者の関心が変わります。業種別の効果は、予知保全の導入事例の記事で紹介しています。

化学・石油・電力プラントの連続稼働設備

装置産業の設備保全担当者が、連続稼働する大型設備を見守る場面です。停止損失が大きいため、予知保全の効果が出やすい代表例にあたります。

ポンプやモーター、ファンといった回転機を多く抱えています。回転機は、軸受の摩耗が振動や温度の変化として表れやすい設備です。重設備の状態監視に特化した、プロセス産業向けの製品も選択肢になります。24時間止められない設備ほど、予兆を捉える価値は高まるでしょう。

食品・医薬品工場の冷凍機や充填機

食品や医薬品の工場で、生産設備の保全を担う担当者の場面です。冷凍機や充填機のように、止まると製品の廃棄につながる設備で効果が見込めます。

設備が止まれば、仕掛品の廃棄だけでなく納期遅延も起こりえます。こうした設備は緊急対応が休日や夜間に及ぶこともあり、計画的な保全に切り替える意味は大きいでしょう。まずは停止時の損失が大きい設備に絞って、試験導入から始めるのが現実的です。

加工ラインの中で止めたくない工程

自動車や電子機器のように、加工ラインを多く持つ業種の生産技術担当者の場面です。すべての設備ではなく、ライン全体の中で特に止めたくない工程の設備から検討します。

投資の優先順位を付けやすく、効果の見えやすい設備で実績を作ってから広げられます。同じ工場の中でも、設備ごとに向き・不向きが分かれる点に注意が必要です。前触れなく壊れる故障モードの設備は、データを集めても予測が難しくなります。


06

予知保全の費用相場

予知保全の費用は、センサー、データを集めるネットワーク、分析システムの組み合わせで決まります。対象設備の数が多いほど、費用は膨らみます。停止損失の小さい設備まで一律に導入すると、投資に見合わないこともあるので注意しましょう。

製品ごとの料金は、ITトレンドの予知保全・故障予測システムカテゴリで比較できます。公表価格を含む費用の考え方は、予知保全システムの費用の解説記事で整理しています。


07

予知保全と予防保全の違い

予知保全の理解に最も役立つのが、予防保全との比較です。どちらも故障を未然に防ぐ保全ですが、メンテナンスの時期を決める基準が違います。表では、壊れてから直す事後保全も並べました。

観点

予知保全

予防保全(時間基準保全)

事後保全

保全の時期

故障の予兆を捉えたとき

稼働時間や経過期間が来たとき

壊れたあと

判断の基準

設備の状態と、いつ頃壊れそうかの予測

時間や稼働回数(状態は問わない)

故障の発生

費用のかかり方

センサーやシステムへの初期投資が要る

まだ使える部品の交換で費用がかかり続ける

普段は抑えられるが、故障時の損失が読めない

突発停止のリスク

抑えられる

交換前に壊れるリスクが残る

大きい

向く設備

停止損失が大きく、予兆が出やすい設備

消耗が予測しやすい部品

止まっても影響が小さい設備

予防保全は、状態を見て必要なときに保全する状態基準保全(CBM)を含めて語られることもあります。CBMが今の異常を捉えるのに対し、予知保全はいつ頃壊れそうかという予測まで踏み込みます。予知保全は、CBMにデータ分析による予測を加えた発展形といえるでしょう。

どの方式が優れているという話ではなく、設備ごとに使い分けるのが実務の基本です。多くの工場では重要な設備だけを予知保全にし、ほかは予防保全や事後保全と組み合わせています。


08

予知保全の導入が向いている企業・向いていない企業

予知保全が効くかは、企業規模ではなく、設備の停止損失と予兆の出やすさで決まります。同じ工場の中でも、設備ごとに向き・不向きが分かれます。自社がどちらに当てはまるかを確かめてください。

予知保全の導入が向いている企業

停止損失が大きい設備を抱える企業です。連続稼働するプラントや、止まると後工程まで影響する基幹設備が当てはまります。突発停止を1回防ぐだけで、投資を回収しやすくなるためです。

ポンプやモーター、ファンなど、故障の前に兆候が出る回転機を多く持つ企業も適しています。センサーを取り付けやすく、データを継続して取れる設備なら、予兆を捉える前提が整うでしょう。長く使う基幹設備ほど、過剰な交換と突発停止の両方を抑える効果が積み上がります。

予知保全の導入が向いていない企業

突発的に壊れて、予兆がほとんど出ない故障モードの設備が中心の企業です。前触れなく壊れるタイプは、いくらデータを集めても予測が難しくなります。劣化が進まず一定の確率で突然故障する電子部品も、同じ理由で効果が限られます。

止まっても影響が小さい設備が中心の企業も、投資に見合う効果は出にくいでしょう。台数が極端に少ない設備も同じです。事後保全のほうが合理的な場合もあります。センサーが付けにくい古い設備が多いなら、まず計測の手段から検討が必要です。


09

まとめ

予知保全とは、設備の状態をセンサーで捉え、AIで故障の予兆を予測して計画的に保全する方式です。周期で部品を交換する予防保全と違い、過剰な交換と突発停止の両方を抑えられます。

最初に決めるのは、どの設備を対象にするかです。停止損失が大きく、振動などの予兆が出やすい回転機が最優先の候補になります。突発故障型の設備やデータが取れない設備は、予防保全や事後保全と組み合わせましょう。

効果が出るまでには、データの蓄積期間と運用体制が欠かせません。選び方は予知保全システムの選び方の記事で解説しています。製品は予知保全・故障予測システムカテゴリで比較できます。

予知保全・故障予測システム比較表

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よくある質問

Q予知保全と予防保全の違いは何ですか?
A

予防保全は時間や稼働回数を基準に定期的に部品交換や点検を行う方式で、まだ使える部品も交換するため過剰整備になりがちです。予知保全はセンサーで設備の状態を常時監視し、劣化の兆候を検知してから保全を行うため、故障も過剰整備も抑えられます。

Q予知保全はどのような仕組みで故障を予測しますか?
A

振動・温度・電流・音などのセンサーデータをIoTで収集し、正常時のパターンと比較することで異常の兆候を検知します。状態基準保全(CBM)の考え方をベースに、AIや機械学習で劣化の進行を予測する製品も増えています。

Qどのような設備が予知保全に向いていますか?
A

故障すると生産ライン全体が止まる重要設備、交換部品や修理費が高額な設備、安全・環境リスクが大きい設備ほど予知保全の効果が出やすくなります。逆に故障しても影響が小さく安価に交換できる設備は、事後保全のほうが合理的な場合もあります。

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