無人搬送車 比較|主要10製品を誘導方式・可搬重量・連携で選ぶ
無人搬送車の主要10製品(オムロン・ダイフク・村田機械・ロジスネクスト・ZMP・Doog・LexxPluss・ギークプラス・MiR・愛知機械)を、誘導方式・可搬重量・フリート運行管理・上位システム連携・導入のしやすさ/価格の5軸で比較。AGVとAMRの違いから目的別の選び方、製品グループ別の向き不向き、導入時の落とし穴までを解説します。

工場や倉庫の人手不足が深刻化するなか、人による運搬作業を置き換える無人搬送車の導入を具体的に検討する製造業が増えています。しかし「AGVとAMRはどう違うのか」「どのメーカーを選べばいいのか」という入り口で止まってしまうケースは少なくありません。磁気テープをたどる定型搬送の機械から、レーザーで地図を作り障害物を避けて自走するロボット、最大3t級のパレットを運ぶ無人フォークリフトまで、同じ「無人搬送車」という言葉でくくられる製品の中身は大きく異なるからです。
本記事は、国内製造業で導入実績のあるオムロン・ダイフク・村田機械・ロジスネクスト・ZMP・Doog・LexxPluss・ギークプラス・MiR・愛知機械テクノシステムの主要10製品を、編集部の比較軸で横並びに整理しました。製品単体の良し悪しではなく「自社の搬送条件にどのタイプが合うか」を絞り込めることをゴールに、各製品の向き不向き・弱み・費用感まで踏み込みます。なお個別の数値比較は本記事では扱わず、ページ下部の比較表で確認できるようにしています。
結論:誘導体工事を避けてレイアウト変更に強く運用したいならオムロン・MiR・LexxPlussの自律走行型、まず低コストで小さく省人化を試すならZMP・Doog・愛知機械の追従/簡易導入型が向きます。自動倉庫と一体の大規模物流ならダイフク・村田機械、パレット荷役の自動化ならロジスネクスト、出荷ピッキングの省人化ならギークプラスが軸候補です。「重量物か軽量物か」「経路が固定か変動か」の2点でまず大きく絞り込むのが近道です。
この記事でわかること
比較の前提:AGVとAMRはどう違うのか
無人搬送車は大きくAGVとAMRに分かれます。AGV(無人搬送車)は、床に貼った磁気テープや磁気棒などの誘導体をたどって決められた経路を走る方式です。経路が物理的に決まっているため動きが安定し、導入コストも比較的抑えやすい一方、レイアウトを変えるたびにテープを貼り替える必要があり、人や障害物が経路上にあると基本的には停止します。
これに対してAMR(自律走行搬送ロボット)は、レーザーセンサーで周囲をスキャンして地図を作り、自己位置を推定しながら障害物を避けて目的地まで自走します。誘導体の敷設工事が要らず、人と動線が混在する環境でも走れるのが強みですが、地図作成や安全設計など導入時の設計負荷はAGVより高くなりがちです。実際の製品は、磁気誘導とSLAM自律を1台で切り替えられるLexxPlussのようなハイブリッド型や、人を追従するモードから自律走行まで段階移行できるZMP・Doogのような中間的な製品もあり、AGVかAMRかの二択ではなく連続したスペクトラムとして捉えるのが実態に近いといえます。
加えて、無人フォークリフト(AGF)という分類も重要です。ロジスネクストが得意とする領域で、パレットをフォークで持ち上げて運ぶため、台車型のAGV/AMRでは扱えない重量物・パレット荷役を自動化できます。「何を運ぶか」がそのまま製品タイプの選択を左右します。
この違いがなぜ重要かというと、AGVとAMRでは導入後にかかる手間とコストの構造がまったく異なるからです。AGVは経路が物理的に固定されている分、動作が読みやすく稼働も安定しますが、生産品目が変わって動線を引き直すたびにテープの貼り替え工事が発生します。多品種少量で頻繁にラインを組み替える現場では、この貼り替えコストが地味に効いてきます。一方AMRは初期の地図作成と安全エリア設計に手間がかかるものの、いったん運用に乗れば経路変更はソフト側の設定で済むため、変化の多い現場では長期的な運用負荷が下がります。「導入時の安さ」で選ぶか「運用の柔軟さ」で選ぶかという、トレードオフの構造を最初に理解しておくと、後の比較がぶれません。
編集部が見た5つの比較軸
編集部は、無人搬送車を【誘導方式・可搬重量・フリート運行管理・上位システム連携・導入のしやすさ/価格】の5つの軸で比較しました。カタログスペックの優劣ではなく、導入後の運用に効いてくる観点です。
誘導方式は、磁気テープなどの誘導体をたどるか、SLAMで誘導体レス自律走行するか、あるいは人を追従するかです。ここが床工事の有無・レイアウト変更への強さ・人混在への対応可否を決めます。可搬重量は、数十kg級の小物搬送なのか、数百kg級か、パレット込みでt級なのかで、選べる製品群がまったく変わります。フリート運行管理は、複数台を同時に動かすときの交通整理・充電・タスク割り当てを統合制御できるかで、台数を増やす将来構想がある現場では外せません。
上位システム連携は、WMS(倉庫管理)・WCS(倉庫制御)・MES・生産管理システムと連携して、搬送指示を自動で受け取れるかどうかです。自動倉庫と一体運用する大規模物流では特に重く、ここを設計すると投資規模も大きくなります。最後の導入のしやすさ/価格は、専用工事や要件定義にどれだけ時間と費用がかかるか、1台から小さく始められるかという観点です。本記事の10製品はいずれも公開価格がなく要見積ですが、後述するように「追従型は比較的低コスト」「自動倉庫一体型は数千万規模」といった水準感の違いははっきりしています。
この5軸は独立しているようで、実際には連動します。たとえばフリート運行管理と上位システム連携を本格的に作り込むほど、導入のしやすさは下がり価格は上がります。逆に追従型を手動運用で小さく入れれば、連携も運行管理も最小限で済むかわりに、台数を増やしたときの全体最適は望めません。つまり「どの軸を優先し、どの軸は当面妥協するか」を決めることが、製品選定の実質です。自社の搬送課題のうち、人手不足が最も深刻なのは工程内搬送か、出荷ピッキングか、パレット荷役かを特定し、そこに効く軸から逆算して候補を絞ると、検討が迷子になりません。
目的別の選び方
5つの比較軸を踏まえ、現場の目的別にどの製品が向くかを整理します。自社が最も重視する条件はどれかを起点に読んでください。
誘導体工事を避け、レイアウト変更に強く運用したい
多品種少量生産でラインの組み替えが頻繁にある、あるいは床に工事を入れたくない現場では、誘導体レスで自律走行する製品が第一候補です。オムロンのモバイルロボットLD/HDシリーズ、MiRのAMR、LexxPlussの搬送ロボットがここに該当します。地図を作り直せば経路を柔軟に変えられるため、テープの貼り替え作業から解放され、季節や受注で生産品目が入れ替わる現場でも搬送設備を作り直さずに済みます。半面、初期の地図作成と安全エリアの設計に手間がかかり、本格運用では上位制御の作り込みも必要になる点は理解しておく必要があります。この3製品の中では、複数台の統合制御を重視するならオムロン、現場での設定しやすさを重視するならMiR、磁気AGVからの移行を前提にするならLexxPluss、というのが大まかな住み分けです。
重量物・パレットを運びたい
原材料パレットや完成品パレットなど、フォークでの荷役を伴う重量搬送を自動化したいなら、ロジスネクストの無人フォークリフト(AGF)が軸になります。最大3t級の低床型や牽引型を擁し、有人フォークリフトの運用ノウハウをそのまま生かせるため、すでにフォークで回している現場との相性が良好です。台車型の軽量AGV/AMRでは物理的に扱えない領域なので、まず「何kgを運ぶか」「パレットを持ち上げる必要があるか」を確認してください。重量物の比率が高いなら、軽量機を無理に使うより最初からフォークリフト系で設計したほうが結果的に手戻りが少なくなります。なお、大量のパレットを保管と一体で動かすなら、後述のダイフク・村田機械のシステム型も選択肢に入ります。
人と動線が混在する環境で使いたい
作業者と搬送ロボットが同じ通路を行き交う現場では、人を認識して止まる・避けるという協調性が必須です。専用通路を確保できる新設ラインと違い、既存工場では人とロボットの動線を完全には分けられないことが多く、ここが製品選定の分かれ目になります。LexxPlussは人混在環境での協調搬送を明確な強みとしており、オムロンやMiRも安全規格に対応した自律走行で人の中を走れます。逆に、人が経路上にいると停止するだけの磁気誘導AGVは、人通りの多い通路では止まってばかりで稼働率が落ちやすく、結果として期待した省人効果が出ないことがあるため注意が必要です。人の往来が多い区間ほど、自律走行型の回避性能が効いてきます。
低コストで小さく省人化を始めたい
いきなり大規模投資はできないが、まず台車運搬の負担を減らしたいという中小〜中堅の現場には、ZMPのCarriRo、Doogのサウザー、愛知機械テクノシステムのCarry Beeが向きます。CarriRoとサウザーは人を追従するモードから始められ、誘導体工事も最小限で済むため、現場の合意形成をしながら少しずつ自動化範囲を広げられます。Carry Beeは磁気テープを貼るだけで導入でき、決まったルートの定型搬送を低コストで自動化できます。いずれも1台あたり数百万円規模から検討でき、立ち上げも比較的短期で済むため、投資判断のハードルが低いのが共通の利点です。動線がほぼ固定なら磁気テープのCarry Bee、人や状況に合わせて柔軟に運びたいなら追従型のCarriRo・サウザー、と運用イメージで選ぶとよいでしょう。
出荷ピッキングを省人化したい
EC物流や製造業の出荷工程で、作業者が棚まで歩くピッキングの負担を減らしたいなら、ギークプラスのGTP(棚ごと作業者の所へ運ぶ)方式が効果的です。作業者は定位置にとどまり、ロボットが商品棚を運んでくるため、歩行距離を大幅に削減できます。出荷件数が多くピッキングの歩行が省人化のボトルネックになっている倉庫ほど、効果が大きく出ます。ただし一定の物量とWMS連携の設計が前提になるため、まず自社の出荷点数と物量が投資に見合うかを見極めることが先決です。工程内の搬送が主課題であれば、ここではなく前述の自律走行型や追従型が適します。
主要製品・グループ別の紹介
ここからは、性格の近い製品をグループにまとめて、それぞれの向き不向きを具体的に解説します。同じカテゴリでも、誘導体レスの自律走行を志向するグループ、低コストで小さく始める追従・簡易導入グループ、自動倉庫と一体で組む大規模物流グループ、パレット荷役に特化したグループ、出荷ピッキングを省人化するGTPグループでは、想定する規模も投資も運用もまったく異なります。自社がどのグループの課題に近いかを意識しながら読み進めてください。
誘導体レス自律走行グループ:オムロン/MiR/LexxPluss
オムロン モバイルロボットLD/HDシリーズは、レーザーSLAMによる誘導体レス自律走行に加え、フリート管理ソフトで最大100台のフリートを統合制御できる点が際立ちます。可搬重量は数十kg級のLDから数百kg級のHDまで揃い、電子・自動車・機械など動線が変わりやすい現場に適合します。FA機器大手としての制御技術とサポート網も安心材料です。一方で、本格運用では上位制御や安全設計の検討が必要で、数百kgを超える重量物専用の用途や、1経路のみの単純搬送には過剰になりがちです。
編集部コメント:将来的に複数台へ拡張する構想があるなら、最初からフリート制御を前提に設計できるオムロンは有力です。ただし「とりあえず1台」の入門用途には、設計負荷とコストが見合わないことが多い点に留意してください。
MiR(Mobile Industrial Robots)のAMRは、Webベースの直感的なインターフェースで地図作成やミッション設定ができ、現場主導で導入しやすいことに定評があります。棚・コンベヤ・牽引などのトップモジュールを付け替えて多用途に使える柔軟性も魅力で、1台から段階的に広げられます。デンマーク発のグローバルメーカーで導入実績も豊富です。弱みは、重量物搬送では機種ごとの可搬重量上限に注意が必要なこと、本格運用ではフリート設計が要ること、自動倉庫と一体の保管運用には向かないことです。
編集部コメント:内部搬送をスモールスタートしたい製造現場には、設定のしやすさで第一候補になります。逆に大規模な保管・出荷システムを一体構築したいなら、後述の物流システム系メーカーのほうが適します。
LexxPlussの搬送ロボットは、磁気誘導の正確な経路走行とSLAM自律を1台で切り替えられる国産ハイブリッドが最大の特徴です。既存のAGV運用を残したまま自律化を段階的に進められるため、いきなり全面自律に踏み切れない現場の移行パスとして現実的です。人と動線が混在する自動車・物流での協調搬送に強く、クラウドの運行管理と連携し、国産ならではのサポート・カスタマイズにも対応します。新興メーカーゆえ超大規模での実績は発展途上で、本格運用には運行設計が必要な点は割り引いて見る必要があります。
編集部コメント:「今は磁気AGVだが将来は自律化したい」という移行ニーズに最もはまる製品です。国産でサポート要件が厳しい現場や、人混在環境を重視する場合に検討する価値があります。
低コスト追従・簡易導入グループ:ZMP/Doog/愛知機械
ZMP CarriRo(キャリロ)は、人や台車を認識して追従するモード、床のシールをたどる経路走行、地図による自律走行という3つの走行モードを備え、追従から始めて段階的に自動化を広げられる設計です。最初は作業者の後ろをついて回る使い方で現場に慣れてもらい、効果が見えてから経路走行や自律走行へ移行する、というステップを踏めるため、現場の抵抗感が小さいのが実務上の利点です。比較的低コストで中小〜中堅の現場でも扱いやすく、台車運搬が多い工程の省人化に向きます。半面、数百kgを超える重量搬送や、多数台を交通整理しながら回す高度な統合フリート運用には向かず、そうした要件が見えているなら最初から自律走行系やシステム系を検討すべきです。
Doog サウザー(Thouzer)は、人や対象を認識して追従する追従搬送に加え、一度走ったルートを記憶して自律走行する簡易ティーチングに対応します。専用インフラの工事を抑えられるため、導入が速く低コストで、誘導体工事を避けたい現場や、まず限られた区間だけ自動化したい現場に向きます。ルートを人が一度走って覚えさせる方式なので、導入のハードルが低く現場主導で立ち上げやすい一方、大規模フリートの統合制御は限定的で、重量物や高速搬送には不向きです。多数台を集中管理して庫内全体を回すような用途には力不足になります。
愛知機械テクノシステム Carry Beeは、磁気テープを床に貼るだけで経路を設定でき、低床型・台車けん引型など複数のバリエーションを比較的安価に導入できる、日産系メーカーのAGVです。経路が固定された定常搬送を低予算で自動化したい中小工場に最適で、決まったルートを淡々と往復させる用途では費用対効果が高くなります。ただし経路を変えるたびにテープの貼り替えが必要で、障害物があると基本的に停止するため、障害物回避や自律性では自律型に明確に劣ります。動線が頻繁に変わる現場や、人通りが多く回避性能が問われる通路には適しません。
編集部コメント:この3製品は「まず効果を体感したい」段階に最適で、費用感も数百万円規模から検討しやすい水準です。動線が固定なら愛知機械、追従で柔軟に使いたいならZMP・Doogという住み分けになります。逆に、数百kg超の重量物や、数十台規模の統合運用が見えている現場には力不足です。
大規模物流システムグループ:ダイフク/村田機械
ダイフクは、マテリアルハンドリング世界最大手として、自動倉庫(AS/RS)・コンベヤ・WMS/WCSと一体の物流システムを設計・構築できる点が他社と一線を画します。搬送車を単体で売るのではなく、保管・搬送・仕分けまでを含めた物流全体を1つのシステムとして最適化する発想で、全方向移動型やリチウムイオンバッテリ搭載機など多彩なラインナップを組み合わせられます。自動車・電子・食品・医薬などの大規模現場で、連続運用の信頼性と世界規模の保守体制を発揮します。半面、小規模・単機の導入にはコストが過大になり、要件定義から構築まで相応の時間と専門性が必要です。短納期・低予算で限定的に試したいというニーズとは、そもそも土俵が異なります。
村田機械は、自動倉庫やクリーン搬送システムと連携した構内物流を得意とし、医薬品・食品・精密機械など品質・清浄度の要求が高い現場での実績を持ちます。繊維機械由来の搬送ノウハウを背景に、移載機構を備えた搬送やパレット搬送など、用途に応じた構成を組めるのが強みです。クリーンルームでの搬送や、温度・清浄度の管理が必要な医薬・食品ラインのように、一般的な台車型では要件を満たせない現場で選択肢になります。こちらも小規模の単機運用には割高で、システム設計を前提とした導入になるため、まず1台試したいというニーズとは前提が合いません。
編集部コメント:この2社は搬送車単体ではなく「物流システム全体の最適化」を買う選択であり、投資はシステム連携込みで数千万規模に達することも珍しくありません。自動倉庫と連動した抜本的な物流改革を狙う大手・中堅向けで、クリーン環境や品質要求が厳しいなら村田機械が有力です。
パレット荷役グループ:ロジスネクスト
ロジスネクスト(三菱重工グループ)は、フォークリフトメーカーとしての知見を生かした無人フォークリフト(AGF)に強く、最大3t級の低床型や牽引型、レーザー誘導・磁気誘導・ガイドレスなど用途に応じた複数の誘導方式を選べます。パレット荷役を伴う搬送の自動化に向き、すでに有人フォークリフトで回している現場からの移行がしやすいのも実務上の利点です。荷の積み下ろし高さやパレット形状など、フォーク荷役特有の要件に対応できる点は台車型にはない強みです。一方、小型・軽量の部品搬送が中心の現場には能力が過剰で、導入には床面の状態確認や運用設計が必要になります。段差の多い狭小レイアウトや、軽い箱を細かく多数運ぶような用途には向きません。
編集部コメント:「パレットをフォークで動かす作業を無人化したい」という明確な用途では、台車型では代替できないため第一候補になります。逆に運ぶものが小型部品中心なら、ここはオーバースペックです。
出荷ピッキングGTPグループ:ギークプラス
ギークプラス(Geek+)は、棚ごと作業者の所へ運ぶGTP(Goods to Person)方式の「EVE」やシャトル型などを擁し、世界的にシェアが高い搬送ロボットメーカーです。従来は作業者が広い倉庫内を歩き回って商品を集めていたピッキング作業を、ロボットが該当する棚を作業ステーションまで運んでくる方式に置き換えることで、歩行距離をほぼゼロに近づけ、出荷処理能力を底上げします。Robot Management SystemやWMSと連携し、EC・倉庫・製造の出荷物流の省人化に効きます。物量に応じて台数を拡張できる一方、棚や作業ステーションの配置を含む庫内設計とWMS連携が成否を分け、一定の物量・投資規模が前提になります。出荷点数が少ない、あるいは拠点が小さく分散しているような物流や、工程内の重量物搬送には合いません。
編集部コメント:出荷ピッキングの歩行を減らすという一点では効果が大きい製品です。ただし搬送そのものというより「庫内オペレーション全体の再設計」に近く、相応の物量がないと投資回収が難しい点を見極めてください。
各製品の可搬重量や誘導方式、対応する連携システムなどの数値比較は、無人搬送車(AGV・AMR)の製品一覧とページ下部の比較表で確認できます。グルーピングで方向性を絞ったうえで、具体的なスペックを突き合わせると判断が速くなります。
導入時の注意点・落とし穴
製品選定と同じくらい、導入プロセスでつまずかないことが重要です。現場でよく起きる落とし穴を挙げます。
第一に、可搬重量と経路条件の確認漏れです。運ぶ対象の最大重量、通路幅、段差やスロープ、床の状態(凹凸・グレーチング)を実測せずに進めると、導入後に「重くて運べない」「段差で止まる」といった問題が顕在化します。カタログの最大可搬重量は理想条件での値であり、勾配や加減速を考慮すると実運用の余裕は小さくなります。
第二に、充電・稼働率の見積もり甘さです。バッテリー充電の時間とタイミングを運用に織り込まないと、ピーク時間帯に台数が足りなくなります。自動充電やフリート制御で充電を分散できる製品かどうかは、台数設計に直結します。
第三に、上位システム連携の範囲です。WMSや生産管理システムと連携して搬送指示を自動化するのか、まずは手動でタスクを与えるのかで、初期費用も期間も大きく変わります。連携を欲張ると要件定義が膨らみ、数千万規模・半年以上のプロジェクトになることもあります。逆に追従型や磁気AGVを手動運用で小さく始めれば、数百万円規模・数週間〜数カ月で立ち上がるケースもあります。スモールスタートで効果を確かめてから連携を広げる段階導入は、失敗リスクを下げる現実的な進め方です。
第四に、安全対応と現場の受け入れです。人と協調走行させる場合は安全規格への適合とリスクアセスメントが必要で、現場の作業者がロボットと共存する運用ルールづくりも欠かせません。技術的に動いても、現場が使いこなせなければ稼働率は上がりません。導入支援・トレーニング・保守体制を含めてベンダーを評価すべき理由がここにあります。とくに国産メーカーは仕様変更やトラブル時の対応速度で利点があり、LexxPlussのようにカスタマイズ対応を打ち出す事業者もあります。海外メーカー製でも国内の販売・保守パートナーが整っているかは必ず確認してください。
第五に、投資対効果の見立てです。無人搬送車は導入そのものが目的ではなく、削減できる人件費や生まれる稼働時間で投資を回収できて初めて意味を持ちます。1台あたり数百万円規模の追従型でも、置き換えられる運搬工数が少なければ回収は遠のきます。逆に数千万円規模の自動倉庫一体システムでも、24時間連続で大量の搬送をこなす現場なら数年で見合うことがあります。何人分の運搬作業を、何時間、どれだけの精度で置き換えられるのかを定量化し、台数と構成を過不足なく設計することが、稟議を通すうえでも運用を成功させるうえでも欠かせません。背伸びした全面自動化より、効果の確実な工程から小さく入れて実績を積む進め方のほうが、結果的に投資全体の成功率を高めます。
まとめ:2つの問いで候補を絞る
無人搬送車は「無人搬送車」という一語でくくるには幅が広く、磁気テープの簡易AGVから自動倉庫一体の大規模システム、3t級の無人フォークリフトまで性格が大きく異なります。製品比較で迷ったら、まず「重量物か軽量物か」「経路が固定か変動か」の2つの問いで大きく方向性を絞るのが近道です。
軽量物・経路変動なら誘導体レス自律のオムロン・MiR・LexxPluss、軽量物・経路固定で低コスト重視ならZMP・Doog・愛知機械、重量物・パレットならロジスネクスト、自動倉庫と一体の大規模物流ならダイフク・村田機械、出荷ピッキング省人化ならギークプラスが軸候補になります。この大枠で2〜3社に絞り込めれば、そこから先の検討は一気に具体的になります。そのうえで可搬重量・誘導方式・フリート制御・上位連携といった具体スペックを、ページ下部の比較表で突き合わせ、自社の通路幅・床条件・物量・既存システムと照らして最終候補を選んでください。どの製品にもメリットと適さないケースの両面があり、万能の正解はありません。だからこそ、いきなり全面導入を狙わず、効果が確実な工程から小さく始めて実績を積み、そこから拡張していく段階導入が、無人搬送車プロジェクトを成功させる最も堅実な進め方だと編集部は考えます。
無人搬送車(AGV・AMR)のおすすめ製品
オムロン モバイルロボット LD/HDシリーズ
オムロン株式会社
レーザーSLAMで誘導体レス自律走行、最大100台を統合制御するAMR
- 誘導体レスでレイアウト変更に強い
- 最大100台のフリート統合制御
- FA機器大手としての制御技術とサポート網
LexxPluss 搬送ロボット
株式会社LexxPluss
磁気誘導とSLAM自律を1台で切り替える国産ハイブリッドAMR
- 磁気とSLAMを1台で併用できる柔軟性
- 人混在環境での協調搬送
- 国産でサポート・カスタマイズに対応

ZMP CarriRo(キャリロ)
株式会社ZMP
追従搬送から自律走行まで段階導入できる物流支援ロボット
- 追従から始められる導入のしやすさ
- 比較的低コストで中小に向く
- 用途に応じた複数の走行モード
MiR(Mobile Industrial Robots)AMR
Mobile Industrial Robots(MiR)
直感的な設定と豊富なモジュールで内部搬送を段階導入できる自律搬送ロボット
- 設定が直感的で現場が扱いやすい
- モジュール式で多用途
- グローバルで豊富な導入実績
愛知機械テクノシステム Carry Bee
愛知機械テクノシステム株式会社
磁気テープを貼るだけで導入できる低コストAGV
- 磁気テープで導入が簡単
- 低コストで定型搬送に向く
- 低床・けん引など用途別の型

Doog サウザー(Thouzer)
株式会社Doog
誘導体レスの追従・簡易自律で低コストに省人化する搬送ロボット
- 誘導体工事不要で導入が速い
- 追従・ルート記憶の手軽さ
- 低コストで中小に向く
無人搬送車(AGV・AMR)比較表
| 製品名 | ベンダー | 価格モデル | 特徴 | |
|---|---|---|---|---|
| オムロン モバイルロボット LD/HDシリーズ | オムロン株式会社 | 要見積もり |
| 詳細を見る |
| LexxPluss 搬送ロボット | 株式会社LexxPluss | 要見積もり |
| 詳細を見る |
| ZMP CarriRo(キャリロ) | 株式会社ZMP | 要見積もり |
| 詳細を見る |
| MiR(Mobile Industrial Robots)AMR | Mobile Industrial Robots(MiR) | 要見積もり |
| 詳細を見る |
| 愛知機械テクノシステム Carry Bee | 愛知機械テクノシステム株式会社 | 要見積もり |
| 詳細を見る |
| Doog サウザー(Thouzer) | 株式会社Doog | 要見積もり |
| 詳細を見る |
| ダイフク 無人搬送車(AGV・AMR) | 株式会社ダイフク | 要見積もり |
| 詳細を見る |
| 村田機械 無人搬送車(AGV) | 村田機械株式会社 | 要見積もり |
| 詳細を見る |
| ギークプラス(Geek+)搬送ロボット | ギークプラス株式会社 | 要見積もり |
| 詳細を見る |
| ロジスネクスト 無人フォークリフト・AGV | 株式会社ロジスネクスト | 要見積もり |
| 詳細を見る |
よくある質問
QAGVとAMRはどちらを選ぶべきですか?
経路が固定で動線がほとんど変わらない定常搬送なら、安定して低コストなAGV(磁気誘導型)が向きます。レイアウト変更が頻繁、または床に工事を入れたくない、人と動線が混在するといった条件があるなら、誘導体レスで自走するAMRが適します。LexxPlussのように磁気とSLAMを1台で切り替えられるハイブリッド型を選べば、磁気AGVから段階的に自律化する移行パスも取れます。
Q無人搬送車の導入費用はどのくらいかかりますか?
本記事の製品はいずれも台数・周辺機器・システム連携により要見積で、公開価格はありません。水準感としては、追従型や磁気AGVを手動運用で小さく始める場合は1台あたり数百万円規模から検討でき、立ち上げも数週間〜数カ月です。一方、自動倉庫やWMSと一体の大規模物流システムを構築する場合は、連携設計込みで数千万円規模・半年以上のプロジェクトになることも珍しくありません。スモールスタートで効果を確認してから連携範囲を広げるのが費用面でも安全です。
Qパレットや重量物を運びたい場合はどの製品が向きますか?
パレットをフォークで持ち上げて運ぶ用途には、ロジスネクストの無人フォークリフト(AGF)が向きます。最大3t級の低床型や牽引型を擁し、有人フォークリフトの運用ノウハウを生かせます。台車型の軽量AGV/AMR(ZMP・Doog・愛知機械など)では物理的に扱えない領域なので、運ぶ対象の最大重量を最初に確認し、重量物であればフォークリフト系を軸に検討してください。
