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選び方・ノウハウ#SBOM#SCA#組込みセキュリティ

SBOM管理ツール 比較|SCA・製品セキュリティ主要10製品を選定軸で比較

SBOM管理ツール・SCA・製品セキュリティ製品の主要10件(Black Duck・Snyk・JFrog Xray・Sonatype Lifecycle・Mend.io・Revenera・Cybellum・yamory・テクマトリックス・日立ソリューションズ)を、SBOM形式・SCA/バイナリ解析・対応規制(CRA/WP.29/IEC62443/医療)・CI/CD連携・日本語サポート・価格の観点で比較。ソース依存解析型とバイナリ・ファームウェア解析型の違いから、車載・医療機器メーカー向けの目的別の選び方、製品グループごとの向き不向きまで解説します。

製造業のシステム選定担当者ITトレンド編集部
SBOM管理ツール 比較|SCA・製品セキュリティ主要10製品を選定軸で比較

欧州サイバーレジリエンス法(CRA)、車載のUNECE WP.29/ISO/SAE 21434、医療機器のサイバーセキュリティ要求など、製品に組み込まれるソフトウェアの来歴と脆弱性を説明する責任が、組込み・車載・医療機器メーカーに次々と課されています。その中心にあるのがSBOM(Software Bill of Materials=ソフトウェア部品表)であり、それを生成・運用し、含まれるOSSの脆弱性やライセンスを管理するのがSCA(Software Composition Analysis)やバイナリ解析のツール群です。しかし「SBOM管理ツールとSCAは何が違うのか」「開発者向けのSCAと、出荷したファームウェアを解析するツールは別物なのか」という入り口で迷うケースは少なくありません。同じ『組込みセキュリティ』という言葉でくくられても、ソースコードの依存関係を読むツールと、ソースを持たないバイナリを解析するツールでは、できることも前提もまったく異なるからです。

本記事は、グローバルのSCA大手から国産SIerの導入支援まで、実在する主要10製品(Black Duck・Snyk・JFrog Xray・Sonatype Lifecycle・Mend.io・Revenera FlexNet Code Insight・Cybellum・yamory・テクマトリックス・日立ソリューションズ)を、編集部の比較軸で横並びに整理しました。製品単体の優劣ではなく「自社の規制対応と開発体制にどのタイプが合うか」を絞り込めることをゴールに、各製品の向き不向き・弱み・費用感まで踏み込みます。なお機能やライセンス体系の詳細な数値比較は本記事では扱わず、ページ下部の比較表で確認できるようにしています。

結論:開発フローにSCAを組み込んで内製のソースコードを守るなら開発者ファーストのSnyk、OSSのライセンスとポリシーを厳密に統制するならBlack Duck・Sonatype・Revenera、出荷したファームウェアやサプライヤー提供のバイナリを解析し車載・医療の規制対応まで一気通貫で進めるならCybellumが軸候補です。日本語サポートと国内の導入支援を最優先するなら、国産のyamory、SIerのテクマトリックス・日立ソリューションズが現実的です。まず『ソースを保有しているか、バイナリ解析が要るか』『どの規制(CRA/WP.29/医療)に対応するか』の2点で大きく絞り込むのが近道です。

この記事でわかること

01

比較の前提:SBOM/SCAとは何か、解析タイプはどう違うのか

SBOMは、ソフトウェア製品にどんな部品(ライブラリ・コンポーネント)が、どのバージョンで、どのライセンスで含まれているかを列挙した『部品表』です。形式はSPDXとCycloneDXが事実上の標準で、規制対応や取引先への提出では「どの形式で出力できるか」が実務上の論点になります。SBOMはあくまで成果物であり、それを生成し、含まれるコンポーネントの既知脆弱性(CVE)やライセンスリスクを継続的に管理する仕組みが必要になります。その役割を担うのがSCAやバイナリ解析のツールです。

ここで決定的に重要なのが、解析の入口がソースコードか、ビルド済みのバイナリかという違いです。ソース・依存解析型のSCAは、リポジトリのマニフェスト(package.jsonやpom.xmlなど)やソースツリーを読み、依存しているOSSコンポーネントを特定して脆弱性とライセンスを突き合わせます。開発の早い段階でCI/CDに組み込めるのが強みですが、原則として自社がソースをビルドできることが前提です。これに対してバイナリ・ファームウェア解析型は、ソースコードを持たなくても、出荷形態のバイナリやファームウェアイメージそのものを解析してコンポーネントを抽出します。サプライヤーから納入された部品やサードパーティ製モジュールのように、ソースが手元にないソフトウェアの中身を可視化できるのが本質的な価値です。

この違いがなぜ重要かというと、組込み・車載・医療機器の製品は、自社開発のコードだけで成り立っていないからです。RTOSやミドルウェア、通信スタック、サプライヤー供給のECU向けソフトウェアなど、ソースを保有しないコンポーネントが多数組み込まれます。開発者向けSCAだけでは、自社がビルドする範囲は守れても、納入されたバイナリの中身までは見通せません。逆に、内製アプリケーションの開発スピードを落とさずに脆弱性を潰したいだけなら、重厚なバイナリ解析はオーバースペックになります。『何を解析対象にするのか』が、そのまま製品タイプの選択を左右するのです。組込みソフトウェアそのものの設計や採用は別テーマであり、土台となるRTOSの選定については組み込みソフトウェア(RTOS)のカテゴリも参照してください。

02

編集部が見た比較軸

編集部は、SBOM/SCA・製品セキュリティツールを【SBOM形式(SPDX/CycloneDX)・SCA/バイナリ解析の対応範囲・対応規制(CRA/WP.29/IEC62443/医療)・CI/CD連携・日本語サポート・価格】の観点で比較しました。カタログ上の機能数ではなく、規制対応と日々の運用に効いてくる軸です。

SBOM形式は、SPDXとCycloneDXのどちらを、どこまで生成・取り込みできるかです。取引先や規制当局が求める形式に出力できなければ、提出の場面でつまずきます。SCA/バイナリ解析の対応範囲は、前章で述べたソース依存解析だけなのか、ソースを持たないバイナリ・ファームウェアまで解析できるのかで、組込み製品のカバー範囲が根本的に変わります。対応規制は、CRA(EUのサイバーレジリエンス法)、車載のWP.29/ISO 21434、制御・産業機器のIEC 62443、医療機器のサイバーセキュリティ要求など、自社が説明責任を負う規制に製品が踏み込んでいるかどうかです。

CI/CD連携は、IDEやパイプラインに組み込んで、開発の流れの中で自動的に検査・ゲートできるかどうかで、内製開発のスピードを落とさず脆弱性を管理するうえで重要です。日本語サポートは、製品本体のローカライズだけでなく、国内の販売・導入支援・問い合わせ対応がどこまで整っているかという観点です。グローバル製品は機能が先行する一方、規制解釈や運用設計を日本語で相談できるかは現場の負荷を大きく左右します。最後の価格は、公開価格があるか個別見積かという点です。本記事ではJFrog(Pro月150ドル〜、Enterprise X月950ドル〜)のように公開・参考価格があるものは数値を示し、Black Duck・Mend・Revenera・Cybellum・テクマトリックス・日立ソリューションズのように要見積のものはその旨を明記します。Snykは無償プランから始められるサブスクリプション、yamoryもサブスクリプションです。

これらの軸は独立しているようで連動します。たとえばバイナリ解析と幅広い規制対応を本格的に求めるほど、製品は専門特化型になり価格は個別見積で高くなりがちで、開発者向けの手軽なCI/CD連携とは性格が分かれます。逆に内製コードのSCAを軽快に回したいなら、バイナリ解析や重厚な規制機能は不要で、無償から始められる製品が合います。つまり『どの軸を優先し、どの軸は当面妥協するか』を決めることが、製品選定の実質になります。

03

目的別の選び方

比較軸を踏まえ、現場の目的別にどの製品が向くかを整理します。自社が最も重視する条件はどれかを起点に読んでください。

開発フローにSCAを組み込んで内製コードを守りたい

自社でソースコードをビルドしており、開発のスピードを落とさずにOSSの脆弱性を早期に潰したいなら、開発者ファーストでIDE/CI/CDに密に統合できる製品が第一候補です。SnykやJFrog Xray、Mend.ioがここに該当します。プルリクエストの段階で脆弱性を検出し、修正提案やバージョン更新まで開発の流れの中で処理できるため、セキュリティを後工程の関門ではなく日常の作業に溶け込ませられます。半面、これらはソース・依存解析が主軸であり、ソースを持たないバイナリやファームウェアの中身を見通すのは不得手です。組込み製品で納入バイナリの可視化も必要なら、後述のバイナリ解析型と組み合わせる前提で考える必要があります。

車載・医療機器の規制対応を一気通貫で進めたい

UNECE WP.29やISO/SAE 21434に基づくサイバーセキュリティ管理、医療機器のサイバーセキュリティ文書対応など、製品出荷に直結する規制を満たしたいなら、製品セキュリティ全体を統合し規制対応をうたうCybellumが軸になります。出荷形態のファームウェアやサプライヤー供給のバイナリを解析してSBOMを起こし、脆弱性管理から規制対応のワークフローまでを束ねられる点が、汎用SCAとは性格が異なります。ただし、これは内製コードを開発中に手早く検査したいという用途とは前提が違い、汎用SCAの置き換えとして考えると過剰にも噛み合わなくもなります。自社が負う規制が車載・医療・IoTの製品セキュリティ領域に明確に寄っているかをまず見極めてください。

ソースを保有しないバイナリ・ファームウェアを解析したい

サプライヤーから納入されたソフトウェアやサードパーティ製モジュールのように、ソースコードが手元にないコンポーネントの中身を可視化したいなら、バイナリ・ファームウェア解析に対応した製品が必要です。Cybellumはこの領域に特化しており、Black Duckもソースに加えてバイナリ解析に対応します。ソース依存解析しかできない開発者向けSCAでは、この『ソースなしの可視化』はそもそも担えません。組込み製品ではサプライチェーン由来のバイナリが脆弱性の盲点になりやすく、ここを解析できるかどうかが製品セキュリティの実効性を左右します。

OSSライセンスの開示・コンプライアンスを重視したい

製品出荷時に含まれるOSSのライセンス条件を正確に開示し、ライセンス違反のリスクを統制したいなら、ライセンス・コンプライアンスに強い製品が向きます。Revenera FlexNet Code Insightは製品出荷時のOSS開示・コンプライアンスに焦点を当てており、Black DuckもSCA大手としてライセンス管理を強みとします。Sonatype LifecycleはOSSのポリシー管理と段階的なゲートで、組織として『使ってよいOSS』を統制する用途に適します。脆弱性検出だけを見て選ぶとライセンス面の開示要件で後から苦労することがあるため、出荷時の法務・コンプライアンス要件が重い製品ほど、この軸を最初に確認すべきです。

日本語サポート・国内の導入支援を重視したい

規制解釈やSBOM運用体制の構築を日本語で相談しながら進めたい、あるいは社内にセキュリティ専任が薄く伴走型の支援が欲しいなら、国産製品や国内SIerが現実的な選択です。クラウド脆弱性管理とSBOMを日本語サポートで提供するyamory、組込み知見を持ちSBOM作成から運用体制まで支援するテクマトリックス、ツール提供にコンサルティングを組み合わせる日立ソリューションズがここに該当します。グローバル製品でも国内代理店が支援する場合はありますが、規制対応の解釈や運用設計まで日本語で踏み込めるかは現場の負荷を大きく変えます。逆に、社内にセキュリティ人材が厚く英語ドキュメントで自走できるなら、必ずしも国産にこだわる必要はありません。

04

主要製品・グループ別の紹介

ここからは、性格の近い製品をグループにまとめて、それぞれの向き不向きを具体的に解説します。同じ『組込みセキュリティ』でも、内製コードのSCAを開発フローで回すグループ、DevSecOps基盤と一体で運用するグループ、ライセンス開示に特化したグループ、組込み実機・車載に特化したグループ、国産・日本語で導入支援まで含むグループでは、想定する開発体制も規制要件も投資も大きく異なります。自社がどのグループの課題に近いかを意識しながら読み進めてください。

グローバルSCAグループ:Black Duck/Snyk/Mend.io

Black Duckは、2024年にSynopsysから独立したSCA分野の最大手で、ソースコードとバイナリの両方を解析できる点と、SPDX/CycloneDXなど多様な形式のSBOMを生成できるライセンス管理の強さが際立ちます。エンタープライズ向けの実績が豊富で、国内ではマクニカや富士ソフトが導入支援を行います。OSSのライセンス開示と脆弱性管理を大規模に統制したい組織に向く一方、価格は要見積でエンタープライズ前提のため、小規模に手早く始めたいチームには重く、導入には相応の体制と費用を見込む必要があります。

編集部コメント:ソースもバイナリも、ライセンスも脆弱性も、組織横断で本格的に統制したいならBlack Duckは中核候補です。ただし『まず1チームで小さく試す』段階には、コストと導入負荷が見合わないことが多い点に留意してください。

Snykは、開発者ファーストを掲げ、SCAに加えてコンテナ・IaC・ソースコードの検査を横断的にカバーし、IDEやCI/CDへの統合がスムーズな点が魅力です。無償プランから始められるサブスクリプションで、開発チーム主導でスモールスタートしやすいのが実務上の利点です。半面、解析の主軸はソース・依存であり、ソースを持たない出荷バイナリやファームウェアの解析は守備範囲外です。車載・医療のように納入バイナリの可視化や製品セキュリティ規制への対応が中心の現場では、これ単体では要件を満たせません。

編集部コメント:内製コードのセキュリティを開発の流れに溶け込ませたい現場には、導入のしやすさで第一候補です。逆にバイナリ解析や車載・医療の規制統合が主課題なら、後述のCybellumなどと役割を分けて考える必要があります。

Mend.io(旧WhiteSource)は、SCAを軸に、脆弱性の自動修復提案やSBOM生成を備え、検出から修正までの自動化に強みを持ちます。サブスクリプションまたは個別見積で提供され、OSSの脆弱性対応の運用負荷を下げたいチームに向きます。一方で、こちらもソース・依存解析が中心で、ソースを持たないバイナリ・ファームウェアの解析や、車載・医療の製品セキュリティ規制への深い統合という点では専門特化型に譲ります。自動修復の利便性を主目的に据えるか、規制対応の網羅性を取るかで評価が分かれます。

編集部コメント:OSS脆弱性の検出と修正の自動化で運用を軽くしたいなら有力です。ただし守備範囲はソース中心であり、組込み実機のバイナリ解析まで求めるなら別ツールの併用を前提にしてください。

DevSecOps基盤グループ:JFrog Xray/Sonatype Lifecycle

JFrog Xrayは、アーティファクトリポジトリのArtifactoryと一体でSCAと脆弱性解析を行い、ビルド成果物の管理とセキュリティ検査をDevSecOpsのパイプラインに統合できる点が特徴です。Pro月150ドル〜、Enterprise X月950ドル〜という公開価格があり、コスト感を事前に把握しやすいのも実務上の利点です。すでにArtifactoryでアーティファクトを集中管理している組織と相性が良い一方、Artifactoryを使っていない現場では基盤ごとの導入を伴い、車載・医療の製品セキュリティ規制への特化機能を期待する用途とは方向性が異なります。

Sonatype Lifecycleは、OSSのポリシー管理と開発ライフサイクル各段階での品質ゲートに強く、組織として『使ってよいOSS』を定義し、違反を段階的に止める統制に向きます。公開定価は非公表で、ユーザー単位の年額制のサブスクリプションです。ガバナンスを重視する組織に適する一方、ポリシー設計と運用ルールづくりに相応の手間がかかり、ソースを持たないバイナリ解析や、車載・医療に特化した規制ワークフローという観点では専門特化型に譲ります。

編集部コメント:この2製品は『開発基盤・ガバナンスと一体でOSSを統制する』選択です。JFrogは公開価格でコスト試算がしやすく、Sonatypeはポリシーゲートの厳密さが持ち味。いずれもソース・依存解析が主軸で、出荷バイナリの解析や車載・医療規制の網羅は別軸として扱うのが現実的です。

ライセンス開示グループ:Revenera FlexNet Code Insight

Revenera FlexNet Code Insightは、OSSのライセンス開示とコンプライアンスに焦点を当て、製品出荷時に含まれるOSSのライセンス条件を正確に開示・管理する用途に特化しています。価格は要見積です。ソフトウェアを製品として出荷するメーカーにとって、ライセンス違反は法務リスクに直結するため、出荷時のOSS開示を厳密に整えたい現場で選択肢になります。半面、脆弱性管理の網羅性や開発フローへの軽快な統合を主目的にする場合、ライセンス特化の性格は必ずしも噛み合いません。脆弱性とライセンスのどちらを主課題に置くかで評価が変わります。

編集部コメント:『出荷製品のOSSライセンス開示を確実にしたい』という明確な目的では有力です。逆に、開発中の脆弱性をCI/CDで素早く潰すことが主眼なら、ここは目的がずれるため別グループを軸にしたほうが適します。

組込み実機・車載特化グループ:Cybellum

Cybellumは、イスラエル発でLGグループ傘下の製品セキュリティプラットフォームで、バイナリ・ファームウェアの解析を起点に、車載・医療・IoTの製品セキュリティを統合する点が他社と一線を画します。UNECE WP.29やISO/SAE 21434、医療機器のサイバーセキュリティ要求といった製品出荷に直結する規制への対応をうたい、ソースを持たない納入バイナリの可視化からSBOM生成、脆弱性管理、規制対応のワークフローまでを束ねられます。国内では日立ソリューションズなどが取り扱います。価格は要見積です。一方で、これは内製コードを開発中に手早く検査する汎用SCAとは用途が異なり、ソース依存解析を開発フローで軽快に回したいだけのチームには方向性が合いません。バイナリ解析と製品セキュリティ規制対応という明確な要件があって初めて真価を発揮します。

編集部コメント:『出荷したファームウェアやサプライヤー供給のバイナリを解析し、車載・医療の規制対応まで一気通貫で進めたい』という用途では、汎用SCAでは代替しにくい第一候補です。逆に、運ぶ課題が内製コードのSCAだけなら、これはオーバースペックになり得ます。

国産・日本語/導入支援グループ:yamory/テクマトリックス/日立ソリューションズ

yamoryは、アシュアード(ビジョナルグループ)が提供する国産のクラウド脆弱性管理サービスで、SBOMにも対応し、検出した脆弱性に優先度づけをして対応を効率化する点と、日本語サポートが強みです。サブスクリプションで提供され、社内にセキュリティ専任が薄い組織でも日本語で運用を相談しながら進めやすいのが実務上の利点です。半面、グローバルの専門特化型と比べると、ソースを持たない深いバイナリ・ファームウェア解析や、車載・医療に特化した規制ワークフローという面では守備範囲が異なります。クラウドや一般的なソフトウェアの脆弱性管理を日本語で回したい用途に向きます。

テクマトリックスのSBOMソリューションは、組込み開発の知見を持つ国産SIerとして、SBOMの作成から運用体制の構築までを支援する点が特徴です。価格は要見積です。ツールを入れて終わりではなく、社内のSBOM運用プロセスやレビュー体制づくりまで伴走してほしい組込み開発の現場に向きます。半面、特定の単一ツールを安価に素早く導入したいというニーズとは前提が異なり、支援を含むプロジェクトとして相応の費用と期間を見込む必要があります。自社にノウハウが乏しく体制から整えたい場合に効きます。

日立ソリューションズのSBOM管理は、国産SIerとしてツール提供に加え、前述のCybellumの取り扱いや導入コンサルティングを組み合わせられる点が強みです。価格は要見積です。製品セキュリティの専門ツールと国内の導入支援を一括で相談したい組織に向き、規制対応の解釈から運用設計までを日本語で進められます。半面、こちらも支援を含む導入プロジェクトとなるため、最小構成を安価に試したいだけのニーズとは土俵が異なります。ツール選定から体制構築までまとめて任せたい現場に適します。

編集部コメント:この3者は『日本語で相談しながら導入・運用したい』段階に最適です。クラウド・一般ソフトの脆弱性管理を手早く始めるならyamory、組込みのSBOM運用体制から整えたいならテクマトリックス、Cybellum等の製品セキュリティツールも含めて一括で支援を受けたいなら日立ソリューションズという住み分けになります。逆に、英語ドキュメントで自走でき機能を最優先するなら、グローバル製品を直接選ぶ余地があります。

各製品のSBOM対応形式・解析タイプ・対応規制・連携や価格などの比較は、組込みセキュリティ(SBOM/SCA)の製品一覧とページ下部の比較表で確認できます。グルーピングで方向性を絞ったうえで、具体的な対応範囲を突き合わせると判断が速くなります。

05

導入時の注意点・落とし穴

製品選定と同じくらい、導入プロセスでつまずかないことが重要です。現場でよく起きる落とし穴を挙げます。

第一に、誤検知(フォールスポジティブ)とノイズの扱いです。SCAやバイナリ解析は、検出された脆弱性のすべてが自社製品で実際に悪用可能とは限りません。該当コードが実行経路に乗っていない、すでに緩和策がある、といったケースを切り分けずに鵜呑みにすると、対応すべき真のリスクが大量のノイズに埋もれます。優先度づけや到達可能性の判定をどこまで支援してくれるかは、運用負荷を大きく左右する評価ポイントです。

第二に、運用負荷と体制づくりです。SBOMは一度作れば終わりではなく、新たなCVEが公表されるたびに、出荷済み・開発中の製品への影響を継続的に評価し続ける必要があります。ツールを入れただけで運用が回るわけではなく、誰が脆弱性をトリアージし、誰が修正可否を判断し、誰がSBOMを更新するのかという役割と体制を決めなければ、アラートが放置されます。社内にセキュリティ専任が薄い場合は、テクマトリックスや日立ソリューションズのような導入支援を含めて検討する理由がここにあります。

第三に、バイナリ解析の要否の見極めです。自社がすべてのソースをビルドできるなら、ソース・依存解析型のSCAで多くをカバーできます。しかし組込み・車載・医療の製品は、サプライヤー供給のバイナリやサードパーティ製モジュールを含むのが通常で、その中身はソース解析では見通せません。納入バイナリの可視化が要件に含まれるかを最初に確認し、必要なら最初からBlack DuckやCybellumのようにバイナリ解析に対応した製品を軸に据えるべきです。後から『ソースのないコンポーネントが見えていなかった』と気づくと、選定をやり直すことになります。

第四に、対応規制と提出形式の確認です。自社が説明責任を負うのがCRAなのか、車載のWP.29/ISO 21434なのか、IEC 62443なのか、医療機器の要求なのかで、求められるSBOMの粒度や運用、提出形式が変わります。取引先や当局がSPDXとCycloneDXのどちらを求めるかも事前に確認し、ツールがその形式に出力できるかを突き合わせてください。規制対応をうたう製品でも、対応範囲は製品ごとに差があるため、自社の規制に具体的に踏み込んでいるかをベンダーに確認することが欠かせません。

第五に、日本語サポートと既存開発環境との適合です。グローバル製品は機能が先行する一方、規制解釈や運用設計を日本語で相談できるかは現場の負荷を左右します。yamoryのような国産や、国内SIerの支援が有効な場面は少なくありません。同時に、IDEやCI/CDパイプライン、アーティファクト管理など既存の開発環境にどれだけ自然に組み込めるかも、現場の定着を分けます。JFrog XrayのようにArtifactory前提の製品は、その基盤を使っているかどうかで適合度が変わるため、ツール単体ではなく開発環境全体との相性で評価してください。

06

まとめ:2つの問いで候補を絞る

組込みセキュリティのツールは『SBOM/SCA』という一語でくくるには幅が広く、内製コードを開発フローで守る開発者向けSCAから、出荷バイナリを解析し車載・医療の規制対応まで束ねる製品セキュリティプラットフォーム、ライセンス開示特化、国産の導入支援まで性格が大きく異なります。製品比較で迷ったら、まず『ソースを保有しているか、ソースのないバイナリ解析が要るか』『どの規制(CRA/WP.29/IEC62443/医療)に対応するか』の2つの問いで大きく方向性を絞るのが近道です。

内製コードのSCAを開発フローで回すならSnyk、開発基盤・ガバナンスと一体で統制するならJFrog Xray・Sonatype Lifecycle、ライセンス開示を確実にするならRevenera、ソースもバイナリもライセンスも組織横断で統制するならBlack Duck、出荷ファームウェアの解析と車載・医療の規制対応を一気通貫で進めるならCybellum、脆弱性検出と自動修復で運用を軽くするならMend.io、日本語で相談しながら導入・運用したいなら国産のyamory・テクマトリックス・日立ソリューションズが軸候補になります。この大枠で2〜3製品に絞り込めれば、そこから先の検討は一気に具体的になります。そのうえでSBOM対応形式・解析タイプ・対応規制・CI/CD連携・価格といった具体軸を、ページ下部の比較表で突き合わせ、自社の開発体制・規制要件・既存環境と照らして最終候補を選んでください。どの製品にもメリットと適さないケースの両面があり、万能の正解はありません。だからこそ、自社が負う規制と、ソース/バイナリのどちらを解析する必要があるのかを最初に明確にしたうえで、効果が確実な範囲から運用体制ごと小さく立ち上げる進め方が、組込みセキュリティのプロジェクトを成功させる最も堅実な道筋だと編集部は考えます。

組込みセキュリティ(SBOM/SCA)比較表

製品名ベンダー価格モデル特徴
Cybellum 製品セキュリティプラットフォームCybellum(サイベラム)要見積もり
  • ソース不要のバイナリ/ファームウェア解析
  • 車載・医療の規制対応に強い
  • 製品セキュリティの統合ワークフロー
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SnykSnyk Limitedサブスクリプション
  • 開発フローへの統合が容易
  • 無償から段階導入
  • コンテナ・IaCまで横断
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Black Duck SCABlack Duck Software, Inc.要見積もり
  • 高いOSS検出力とライセンス管理
  • ソース+バイナリのスキャン
  • 国内導入支援が充実
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JFrog Xray(JFrog Platform)JFrog Ltd.サブスクリプション
  • 成果物管理と一体のDevSecOps
  • CI/CD配布まで一気通貫
  • 価格体系が公開されている
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Sonatype LifecycleSonatype, Inc.サブスクリプション
  • OSSポリシー管理の精度
  • 供給網知見に基づく脆弱性データ
  • 品質ゲートの自動化
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テクマトリックス SBOMソリューションテクマトリックス株式会社要見積もり
  • 組込み開発の知見に基づく支援
  • ツール選定〜運用体制まで一気通貫
  • 国内SIerのサポート
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日立ソリューションズ SBOM管理ソリューション株式会社日立ソリューションズ要見積もり
  • ツール提供〜コンサルの一体支援
  • 国内大手SIerの安心感
  • 組込み向け製品も取り扱い
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yamory(ヤモリー)株式会社アシュアードサブスクリプション
  • 国産・日本語サポート
  • 優先度づけで運用負荷を低減
  • クラウドで始めやすい
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Mend.io SCA(旧WhiteSource)Mend.ioサブスクリプション
  • 自動修復提案で手戻り削減
  • 継続的なOSSリスク管理
  • CI/CD連携
詳細を見る
Revenera FlexNet Code InsightRevenera要見積もり
  • OSSライセンス開示・義務管理の厚み
  • 製品出荷時のコンプライアンスに強い
  • 監査証跡
詳細を見る

よくある質問

QSBOM管理ツールとSCAは何が違うのですか?
A

SBOM(ソフトウェア部品表)は、製品にどんなコンポーネントがどのバージョン・ライセンスで含まれるかを列挙した成果物で、SPDXとCycloneDXが標準形式です。SCA(Software Composition Analysis)は、そのSBOMを生成し、含まれるOSSの既知脆弱性やライセンスリスクを継続的に管理する仕組みを指します。つまりSBOMが『部品表という成果物』、SCAやバイナリ解析が『それを作り運用するツール』という関係です。多くの製品はSCA機能の一部としてSBOMを出力できます。

Q開発者向けSCAだけで、組込み・車載製品のセキュリティ対応は足りますか?
A

自社がすべてのソースコードをビルドできる範囲なら、SnykやMend.ioのようなソース・依存解析型のSCAで多くをカバーできます。ただし組込み・車載・医療の製品は、サプライヤー供給のバイナリやサードパーティ製モジュールなど、ソースを保有しないコンポーネントを含むのが通常で、その中身はソース解析では見通せません。納入バイナリやファームウェアの可視化が必要なら、バイナリ解析に対応するBlack DuckやCybellumを軸に据えるか、開発者向けSCAと併用する前提で検討してください。

Q車載や医療機器の規制対応にはどの製品が向きますか?
A

UNECE WP.29やISO/SAE 21434、医療機器のサイバーセキュリティ要求といった製品出荷に直結する規制対応を一気通貫で進めたい場合は、バイナリ・ファームウェア解析を起点に製品セキュリティを統合し、これらの規制への対応をうたうCybellumが軸候補です。国内では日立ソリューションズなどが取り扱い、導入支援も受けられます。一方で内製コードのSCAが主課題なら汎用SCAとは用途が異なるため、まず自社が負う規制と解析対象(ソースかバイナリか)を明確にして選定してください。なお対応規制の範囲は製品ごとに差があるため、自社の要件に具体的に踏み込んでいるかをベンダーに確認することが重要です。

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