建築CADを比較|BIM対応4製品の選び方ガイド
建築CADの代表的な4製品を、価格体系・得意な用途・BIM対応の観点で並列比較します。2D設計とBIMの違いを踏まえ、向いている事務所や案件の条件から選定軸を整理しました。

建築CADの選定が難しいのは、製品ごとに価格体系も得意な領域も大きく異なるためです。木造住宅に強い製品もあれば、RC造や鉄骨造を含む大規模建築の統合設計に向いた製品もあり、同じ「建築CAD」という言葉でカバーされる範囲がかなり広く分かれています。この記事では、ARCHITREND ZERO(福井コンピュータアーキテクト)、Archicad(グラフィソフト)、Vectorworks Architect(エーアンドエー)、Autodesk Revitの4製品を、価格・ライセンス形態・対応する建物構造・BIMやIFCへの対応状況という観点で比較し、事務所の規模や案件の性質に応じた選び方を整理します。導入後に「想定していた使い方に合わなかった」というミスマッチを避けるための判断材料として活用してください。
結論:建築CADは「扱う建物構造」「2D中心かBIM中心か」「買い切りかサブスクか」の3点で候補が絞れます。木造戸建住宅が中心で確認申請図面を量産する工務店・住宅設計事務所はARCHITREND ZERO(買い切り)が早道です。意匠デザインやインテリア・展示を含む幅広い案件を手がける設計事務所はArchicadまたはVectorworks Architectが向きます。RC造・鉄骨造を含む中大規模建築を構造・設備設計者と同じモデルで統合運用する組織はRevitが有力です。まずは自社の主力案件タイプを起点に、対応構造と価格形態で2〜3製品へ絞り込むのが失敗の少ない進め方です。
この記事でわかること
建築CADを比較するときに見るべき軸
編集部は「2D設計とBIMの違い」「建物構造・規模と価格体系」という観点で整理しました。どちらを起点に据えるかで候補の絞り方が変わるため、自社の設計手法と扱う案件を照らしながら読み進めてほしい。
2D設計とBIMの違いを最初に切り分ける
建築CADを比較する前に整理しておきたいのが、「2D作図中心の使い方なのか、BIMとして3Dモデルで設計するのか」という前提です。2D設計は図面そのものを線で描く方式で、平面図・立面図・断面図をそれぞれ個別に作成します。図面間の整合性は作図者が手作業で保つ必要があり、たとえば窓の位置を変えた場合は平面図と立面図の両方を手で修正することになります。
一方のBIM(Building Information Modeling)は、建物を3Dモデルとして構築し、そのモデルから平面図や断面図、建具表、数量といった情報を連動して取り出す方式です。モデルを修正すれば関連する図面が一括で更新されるため、設計変更が多い案件ほど手戻りを抑えられます。意匠・構造・設備の情報を同じモデル上で扱えるため、関係者間の食い違いを早い段階で発見しやすいのも特徴です。ただしBIMは3Dモデルを正確に組み立てる作業が前提になるため、図面を描くだけだった頃と比べて初期の入力負荷は増えます。
建物構造・規模と価格体系で候補を絞る
次に確認したいのが、扱う建物の構造と規模です。木造戸建住宅が中心なのか、RC造・鉄骨造の中大規模建築まで扱うのかで、適した製品は変わります。木造住宅向けには、伏図や構造材の配置、確認申請に必要な図面の自動生成といった日本の住宅実務に踏み込んだ機能を備えた製品が向いています。中大規模建築では、複数の設計者が同じモデルを共有しながら作業を分担できるワークシェアリングの仕組みが重要になります。
設計データを他社や施工側とやり取りする場合は、IFC形式での入出力対応も比較軸になります。IFCはBIMデータを異なるソフト間で受け渡すための中立フォーマットで、4製品はいずれも対応していますが、変換時に再現される情報の細かさには差が出ます。加えて、永続ライセンスとサブスクリプションのどちらを選べるかによって、初期費用とランニングコストの構造が大きく変わる点も見落とせません。
編集部コメント:この記事で扱う4製品はいずれもBIMに対応していますが、比較の出発点は「自社が本当にBIMで設計するのか、当面は2D作図が中心なのか」を正直に見極めることです。ここを曖昧にしたまま高機能なBIM製品を選ぶと、3Dモデリングの入力負荷だけが増えて図面作成が遅くなる、という逆転が起きがちです。建物構造と設計手法の2軸を先に固めてから価格を見ると判断がぶれません。
価格とライセンス形態の違いをどう読むか
サブスクリプション移行が進む中での費用比較
4製品の費用を比較するうえで重要なのが、ここ数年でライセンス形態が大きく動いている点です。Archicadは永続ライセンスの販売を2025年末で段階的に終了し、2026年以降はサブスクリプションのみの提供へ移行する方針が公表されています。Revitは以前からサブスクリプション専用です。Vectorworksも一度はサブスクリプション移行が告知されましたが、その後に永続ライセンスの継続販売も発表されており、購入形態の選択肢が残されています。ARCHITREND ZEROは買い切り型を基本としています。
価格の目安としては、ARCHITREND ZEROが基本構成でおよそ90万円前後(税別、構成により変動)の買い切り、Revitはサブスクリプションで年額48万円程度、Vectorworksは製品グレードによって年額13万円台から、Archicadも上位構成では年額40万円前後と案内されています。いずれも構成・販売店・時期によって変わるため、最新の正確な金額は各社の公式情報や販売店で確認する前提で見てください。買い切りは長期利用ほど総コストを抑えやすい反面、初期の支払いが大きく、最新機能の追従には別途保守契約が必要になることが一般的です。サブスクリプションは初期費用を抑えやすく常に最新版を使える反面、利用を続ける限り費用が発生し続けます。
初期費用だけでなく数年単位の総額で見る
費用比較でつまずきやすいのが、初期費用だけを見て判断してしまうケースです。サブスクリプションは1年あたりの金額が小さく見えても、5年・10年と使い続けると買い切り型の総額を上回ることがあります。逆に買い切り型でも、法改正対応やバージョンアップを継続的に受けるための保守費用を加味すると、想定より総額が膨らむことがあります。導入を検討する際は、自社が何年そのソフトを使い続ける見込みかを置いたうえで、初期費用と毎年の費用を合算した数年単位の総額で比較すると、実態に近い判断ができます。
編集部コメント:価格の額面よりも「自社が何年そのソフトを使い続けるか」を先に決めることをおすすめします。短期のプロジェクト単位や繁忙期だけの利用ならサブスクの初期費用の軽さが効きますが、10年単位で同じ業務を回す前提なら買い切り+保守の総額が下回る場面もあります。ライセンス形態が移行期にある製品もあるため、額面の比較表だけでなく各社の販売方針の最新告知まで確認しておくと、契約段階の想定外を避けられます。
事務所の規模・案件タイプ別に見た向き不向き
木造住宅中心の工務店・設計事務所
木造戸建住宅を主力とし、間取りプランから素早く3Dモデルやプレゼン資料を作りたい工務店・住宅設計事務所には、ARCHITREND ZEROが選択肢になりやすい製品です。日本の木造住宅の設計実務や確認申請を意識した機能がそろっており、2025年4月施行の建築基準法改正(いわゆる4号特例の縮小)への対応もアップデートで進められています。買い切り型のため、長期利用を前提とすれば総コストを抑えやすい一方、繁忙期だけライセンスを増やすといった月単位の増減には向きません。住宅以外の用途や海外案件が多い場合は、住宅特化の機能が活かしにくくなります。
意匠デザイン・幅広い案件を手がける設計事務所
意匠デザインやプレゼンテーションを重視し、戸建から商業施設まで幅広く手がける設計事務所には、ArchicadやVectorworks Architectが候補になります。Archicadは操作体系が意匠設計者の思考に沿いやすく、初期段階のスタディから実施設計まで同じモデルで進めやすいのが特徴です。Vectorworks Architectは建築に加えてインテリアや展示・舞台美術といった案件まで一本でカバーしやすく、デザイン表現の自由度を重視する事務所と相性が良い製品です。どちらも木造住宅専用の自動化機能はARCHITREND ZEROほど作り込まれていないため、住宅の確認申請図面を量産する用途では作図の手間が残ることがあります。
中大規模建築の統合設計を担う組織
RC造や鉄骨造を含む中大規模プロジェクトで、構造設計者や設備設計者と同じモデルを共有して進める体制であれば、意匠・構造・MEP(設備)を統合できるRevitが有力候補になります。複数人が同時に一つのモデルを編集できる仕組みを備え、ゼネコンや組織設計事務所での採用例が多いため、施工側とのデータ連携を前提とする案件では利点が出やすい製品です。ただし機能が広範なぶん習得の負荷が高く、小規模な事務所が住宅案件中心で導入すると、使いこなせない機能にコストを払う形になりやすい点には注意が必要です。
実際の製品を一覧で比較したい場合は、ITトレンドの建築CADカテゴリで対応構造や価格帯などの条件を絞り込み、各製品を並べて確認できます。
編集部コメント:案件タイプ別の対応はあくまで出発点で、実際の事務所は複数のタイプにまたがることが少なくありません。たとえば木造住宅が主力でも将来的にRC造の小規模ビルへ広げたい場合、住宅特化製品だけで固めると後から対応に苦労します。現在の主力案件で7〜8割を判断しつつ、数年先に広げたい業務範囲を1割程度織り込んで候補を選ぶと、買い替えによるデータ移行の手戻りを抑えられます。
建築CADを選ぶ際の注意点と失敗しやすいポイント
ライセンス形態の変化を見落とすケース
選定で見落としやすいのが、ライセンス形態が将来変わる可能性です。買い切り型を希望して検討を進めても、その製品が販売形態をサブスクリプションへ移行する時期と重なれば、想定した購入ができないことがあります。前述のとおりArchicadは2026年以降サブスクリプションのみへ移行する方針が示されているため、買い切りを前提とするなら、現時点で永続ライセンスを選べる製品かどうかを導入前に確認しておく必要があります。価格表だけでなく、各社の販売方針に関する告知まで目を通すことで、契約段階での想定外を防げます。
BIM移行の運用負荷を過小評価するケース
もう一つのつまずきやすいポイントが、BIMへの移行に伴う運用負荷です。BIMは図面の連動や数量算出といった利点がある反面、3Dモデルを正確に構築する作業、社内のモデリングルールの整備、操作習得に一定の時間がかかります。これまで2D作図中心だった事務所がいきなり全案件をBIM化すると、当面は生産性がかえって下がることがあります。
移行を成功させやすいのは、まず1〜2件のパイロット案件に絞ってBIMで設計し、社内の入力ルールや図面の出し方を固めてから対象案件を広げる進め方です。担当者の習熟やテンプレートの整備には数か月単位の時間を見込み、最初から全社展開を急がないほうが定着しやすくなります。製品選定の段階でも、対応構造や案件規模が将来的に広がる見込みがあるかを含めて、現状の業務に合うかを基準に判断すると、導入後のミスマッチを避けられます。
体験版で確認すべきこと
カタログ上の機能が自社の作図手順に合うかは、実際に操作してみないと分かりにくい部分です。多くの製品で体験版や試用の仕組みが用意されているため、主力案件に近い図面を実際に作ってみて、よく使う操作の手数や図面の仕上がりを確かめておくと、導入後の評価とのずれを小さくできます。あわせて、データを受け渡す協力会社や施工側がどの製品を使っているかも確認しておくと、IFCでの連携時に情報が欠ける範囲を事前に把握できます。
目的別に見る建築CADの選び方
ここまでの比較軸を、読者の立場ごとに当てはめて整理します。自社がどのタイプに近いかを起点に、候補を絞り込む際の手がかりとして読んでください。
確認申請図面を効率よく量産したい工務店・住宅設計事務所
木造戸建住宅が主力で、間取りプランから3Dモデルや確認申請図面までを素早く仕上げたい立場であれば、日本の住宅実務に踏み込んだ自動化機能と買い切り型の費用構造が両立するARCHITREND ZEROが起点になります。長期利用を前提に総コストを抑えやすく、住宅特化の図面作成で手数を減らせるため、案件数の多い事務所ほど作図の効率化が効きます。一方で住宅以外や海外案件の比重が高い場合は、特化機能が活かしにくくなる点を踏まえて検討するとよいでしょう。
意匠表現と幅広い案件を一本でこなしたい設計事務所
戸建から商業施設、さらにインテリアや展示・舞台美術まで手がけ、デザイン表現の自由度を重視する立場には、ArchicadやVectorworks Architectが合います。Archicadは初期スタディから実施設計まで同じモデルで進めやすく意匠設計者の思考に沿いやすいこと、Vectorworks Architectは建築以外の領域まで一本でカバーしやすいことが、幅広い案件を扱う事務所での扱いやすさにつながります。住宅の確認申請図面を量産する用途では作図の手間が残る点を割り切れるかが判断の分かれ目です。
中大規模建築を多職種で統合運用したい組織
RC造・鉄骨造を含む中大規模プロジェクトを、構造設計者や設備設計者、施工側と同じモデルを共有して進めたい立場には、意匠・構造・MEPを統合でき複数人で同時編集できるRevitが向きます。施工側とのデータ連携を前提とする案件で利点が出やすい一方、機能が広範で習得負荷が高いため、組織として教育や運用ルールの整備に時間を割ける体制があることが、使いこなすうえでの前提になります。
自社の案件に合う建築CADの選び方
建築CADの比較は、扱う建物の構造と規模、2D中心かBIM中心かという設計手法、永続かサブスクかという価格体系の3点を起点にすると、候補を絞り込みやすくなります。大まかな対応関係としては、木造住宅中心ならARCHITREND ZERO、意匠デザインや幅広い案件ならArchicadやVectorworks Architect、中大規模建築の統合運用ならRevit、という整理になります。
ただしこの対応はあくまで出発点で、最終的には自社の主力案件と数年先に広げたい業務範囲、社内のBIM習熟度、数年単位で見た総コストを照らし合わせて判断することになります。候補を2〜3製品に絞ったら、体験版で実際の作図手順を試し、価格と販売形態の最新情報を販売店に確認するのが次のステップです。各製品の機能・価格を条件で絞り込んで比較したい場合は、ITトレンドの建築CADカテゴリから各製品の情報を確認できます。
建築CAD(建築・BIM)のおすすめ製品
Archicad
グラフィソフトジャパン株式会社
意匠BIMのパイオニア的建築CAD
- 設計変更が図面・数量に自動反映されるBIM
- 意匠設計に適した操作性
- 複数人での協働設計に対応

ARCHITREND ZERO
福井コンピュータアーキテクト株式会社
木造住宅設計に強い国産建築CAD
- 木造住宅設計に最適化された一貫機能
- 日本の建築法規・実務に即した仕様
- 充実した国内サポート
Vectorworks Architect
エーアンドエー株式会社
2D・3D・BIMを柔軟に扱える汎用建築CAD
- 2D・3D・BIMを柔軟に併用できる
- 建築以外の分野にも使える汎用性
- 年額/永続を選べる価格モデル
Autodesk Revit
オートデスク株式会社(Autodesk)
意匠・構造・設備を統合するBIM標準
- 意匠・構造・設備を統合するBIM
- 大規模案件での採用実績と連携環境
- 分野間の干渉チェックがしやすい
建築CAD(建築・BIM)比較表
| 製品名 | ベンダー | 価格モデル | 特徴 | |
|---|---|---|---|---|
| Archicad | グラフィソフトジャパン株式会社 | サブスクリプション |
| 詳細を見る |
| ARCHITREND ZERO | 福井コンピュータアーキテクト株式会社 | 要見積もり |
| 詳細を見る |
| Vectorworks Architect | エーアンドエー株式会社 | ハイブリッド |
| 詳細を見る |
| Autodesk Revit | オートデスク株式会社(Autodesk) | サブスクリプション |
| 詳細を見る |
よくある質問
Q2D設計の建築CADとBIMソフトはどう違いますか。
2D設計は平面図や立面図を線で個別に作図する方式で、BIMは建物を3Dモデルとして構築し、そのモデルから各図面や数量を連動して取り出す方式です。BIMはモデルを修正すると関連図面が一括更新されるため、変更が多い案件で手戻りを抑えやすい一方、モデル構築や操作習得に時間がかかります。
Q木造住宅を中心に設計する場合、どの建築CADが向いていますか。
木造戸建住宅が主力なら、住宅設計に最適化されたARCHITREND ZEROが選択肢になりやすい製品です。間取り入力から壁・屋根・基礎を含む3Dモデルを自動生成でき、買い切り型のため長期利用では総コストを抑えやすくなります。住宅以外の用途が多い場合は、ArchicadやRevitなど対応範囲の広い製品も検討対象になります。
Q永続ライセンスとサブスクリプションのどちらを選ぶべきですか。
長期間同じ環境で使い続ける前提なら、初期費用は高くても永続ライセンスのほうが総コストを抑えやすい傾向があります。ただしArchicadは永続ライセンスの販売を段階的に終了し、Revitはサブスクリプション専用です。買い切りを希望する場合は、その形態を選べる製品かどうかを導入前に確認する必要があります。
